ジャッジメント・ギルティ
《とにかく、今は那由他が闘うしかないから紳士から目を離さないで。大丈夫、那由他はコツを掴んでるから今なら空を飛びながら、反撃もできるはずだよ。》
「コツって言ったって、今初めて魔法使ったし、どうやって使ったかも分からないのに、反撃なんて出来るわけないわ。」
珍しく弱気の那由他。
そのしおらしい那由他もグッと、こうグッとくるねー。
《那由他、魔法は想像であり、創造だよ。如何に鮮明に、如何に強くイメージ出来るかが魔法のコツ。一回お手本は見せたから、イメージはしやすいはずだよ。呪文詠唱は一緒にやったげるから、思いっきりやっちゃえ!》
勢いとノリでやれとばかりに、励ますリリー。
関係ないですけど、励ますの予想変換に、禿げますがでたことに私、憤りと同時に悲愴感を覚えました。
「えーい!こうなったら自棄よ!やってやろうじゃない!確かこうね。」
那由他は先程体感した空を急上昇した自分をイメージする。
すると、那由他のイメージと寸分たがわぬ速さで空を急上昇。あっという間に神父と並ぶ。
「その雰囲気。今は小娘が出ているな。キュアリリーは何故引っ込んだ?」
「あんたじゃ役不足だそうよ?それに私はあんたに一回殺されかけたのよ。やり返さないと気がすまないわ。」
「ふむ…。役不足を誤用している感が否めないが、まあいい。言葉は不変なものではないしな、今の時代ではむしろ正しいのかもしれん。それより、小娘。後悔するなよ?私は弱者相手だろうが闘いで情けはかけんぞ?」
お前は引っ込んで、リリーを出せってこと?
はっ!
「臨むところよ!あんたこそ、負けた後の言い訳と、遺言を考えておくのね!遠くない将来必要になるのだから。」
「では、しょうがない。本意ではないがこれも仕事。いくぞ!」
十分に距離はとっていたのだが、それを一瞬でゼロにし眼前に神父が迫る!
「判決、有罪!(ジャッジメントギルティ!)」
神父の手に光剣が現れ、その手を横に薙ぐ。那由他を上半身と下半身に分けようというように。
あっ、俺下半身下さい!
「ナレーション死ね!」
那由他が妙な掛け声と共に神父の攻撃を避ける。
そしてさっきまで自分がいた空間に狙いを定め、フィンガースナップ。
リリーが作ったものと比べると規模は小さいものの、しっかりと空間が爆発する。
「笑止‼︎」
やはりこの神父、闘いなれしている。
先程初めてみたはずの魔法を早くも見切り、光剣を下から斬り上げることで爆発ごと、衝撃波ごと斬る。
「なかなかやるわね!」
口では余裕を見せる那由他だが、内心では ー
(今のは危なかったわ。危うく常世への旅路につくところよ。ジャッジメントギルティってなによ?
ただ英語にしただけじゃない!
それにどっちかと言うとあっちの方が遥かにギルティでしょ!殺人未遂よ殺人未遂!
いや、でも、よく避けたわね、私。
もしかして、才能あるのかしら?)
《流石だね、那由他。とても素人には見えないよ。魔法を使いこなしているのも驚き桃の木だけど、その状況判断能力というか、反射神経というか、あるいわ勘なのかな?とにかく山椒の木だよ!嬉しい誤算、いや、当然といえば当然なのかな。》
「この私から逃れられるものか!」
すぐに神父さんが体勢を立て直し、光剣片手に迫る。
「はい、来たー」
この短時間で風魔法のコツを掴んだ那由他は、取り敢えず距離を開けようと上昇する。
もうパンツが見えていることへの羞恥心はない。
那由他は強い子なのだ。
痴女なのだ。
「むぅん!」
豪快に光剣を那由他に向かって振る。
すると皆様の想像通り、その軌跡が、太刀筋が光となり、弧を描きながら那由他に迫る。
あれだ、月牙天衝かアバンストラッシュを想像してくれ。めちゃくちゃでっかい。
「それ反則!」
視界一杯に光。
普通に飛んだのではとても範囲外には逃げられない。
《これはヤバイから一瞬借りるよ!》
咄嗟の判断でリリーがでてきて、すぐさま柏手を一つ。
そして、ものすごいスピードで回避。
なんとか範囲外へ逃げる。
ナレーション的仕事をしとくと、周りを真空にして、空気抵抗を無くして回避し、ついでに神父にも攻撃したのだろう、とか言っとけばいいか。