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アクロバティックマタドール



「さすが、と言わざるを得まい。あの魔法は全力で放ったのだがな。無傷とは…」

「確かにあれは大した威力だったよ。今のボクにはとてもじゃないが、あのレベルの魔法は使えない。今のボクにはだよ。ここ重要だよ。」

「では何故貴公は無傷なのだ。」

神父の顔には純粋な疑問が浮かんでいる。

ダメージを負わないのは考えられるが、まるっきり、制服ですら無傷なのは解せんと。


「詳しく説明すると科学的になってしまうから、辞めとくけど簡単に言うと真空を作って凌いだだけだよ。」

これも風魔法の応用だね、とリリー。

中学生の私にはよく分からなかったけど、神父さんは理解したらしかった。

「なる程、いくら原初の炎といえど燃えるには酸素が必要。自分の周囲だけ真空にし、炎をやり過ごしたというわけか。」

あっ、なんかありがとう神父さん。

そこら辺の説明は普通語り部がやるものなのだけど、代わりにやってくれたのね。

台詞の中でさり気なくとか、悔しいけど紳士ね。


「ま、そういうことかな。法級が低い魔法でも使い方次第ってことだね。じゃ、次はボクの番だよね?」

パチッとフィンガースナップ。

すると、神父さんの目の前で爆弾が起こる。

「くっ⁉︎」

素晴らしい反応速度で、その爆発を上昇することで躱す神父。

「まだまだいくよ!」

またしてもフィンガースナップ。

その度神父の周りで爆発が起きる。

しかしさすが紳士。

アクロバティックマタドールの様な華麗な動きで爆発をやり過ごす。

「那由他、これも風魔法の応用だからよく見ておいて。」

《これも風なの⁉︎明らかに爆発してるわよ?》

「これは単純に神父さんの周りに真空を作り出してるだけだよ。確か、爆縮という現象らしいけど、知らない?」

《まったく、中学生の知識を舐めないでほしいものね。そんなの知るわけないじゃない!》

私は誇り高き中学生。

余計な知識はつけないわ!


「ふーん、それなら勉強になったね那由他。それではここで一つ実践といこう!」

急に身体の感覚が帰ってくる。

リリーが中に引っ込み、私が表にでたためだ。

でもいきなり主導権変えたら風魔法で飛んでる私って落下するんじゃないかしら?

あら、やっぱり ー

「墜ちてるじゃなーーーい!!!!」

高度にして800メートル。

パラシュート無しのスカイダイビング。

心の準備?

あるわけないじゃない!


「きゃああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜‼︎」

「死ぬぅぅぅ〜〜〜〜!!!!」

「ぎゃあぁぁーーーーー!!」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・。」

「やっぱり、死ぬぅ〜〜〜〜!!!」

あぁ、私って一日に2回も死ぬのね。

悲劇のヒロインも真っ青な人生じゃない。

これまでが唯我独尊過ぎてツケが回ってきたのかしら。

それとも水樹にムチばっかり与えてアメは一切与えなかったから?

それとも、それとも、作者の世紀末過ぎる頭髪事情をバラしたから?

もしかして、私が余りにも可愛いから?

心当たりがあり過ぎて分からない、分からないの!

助けて!ターキーレンジャー!


《落ち着きなよ、那由他!早く風魔法使って立て直して!》

「でも!でも!私どうしたらいいか、分かんないー!」

《君のリスペクトするブルース・リーが残した名言を思い出して!》

私のリー様の名言。

それは ー

「ドン、ティンク!フィール!」

地上はすぐ目の前。

後少し遅れていれば那由他のユッケが出来上がるところ。

無我夢中でやったことだが…

「出来た!出来たわ!飛んでる!私、飛んでる!」

小さい頃、かめはめ波より舞空術派だった私。

あの頃は本気で修行すれば舞空術を使えると思って、毎日亀の甲羅背負って牛乳配達してたっけ。

《那由他、そのまま右に!》

「えっ⁉︎」

といいつつ右へ移動。

した瞬間、さっきまでいた場所を眩いばかりの閃光が通り過ぎ、アスファルトに、怨みでもあるのかと思う程に深い穴を開ける。

《那由他、これからは一瞬の油断が命取りになるから、集中してね♡》

「語尾のハート、ムカつく!そんなこと言われても、上手くやれる自信が驚く程湧いてこないわ!あんたがやってよ!」

私はこう見えて、学年トップ維持のために予習はきちんとやってるのよ。

偶然空飛べたからって、いきなり予習なしに魔法で闘えって、どんだけスパルタ教育よ!獅子の子落としよ!


《そうしてあげたいのは山々なのだけれどね、那由他。実はボクが那由他の身体使うのって負担が大きいんだよ。両者にとってね。だから、なるべくは那由他に頑張ってもらわないと、とんでもなことになるんだよ。》

「とんでもって、具体的にはどうなるのよ?」

《…那由他が死んじゃうかな♡》

「はぁあ⁉︎なにそれ!とんでもなさすぎよ!あんた、早く私から出て行きなさい!」

負担かけ過ぎたら死ぬとか、どんな加圧トレーニングよ。

《それをしちゃうと、那由他が魔法使えなくなるから出来ないよ。それに、負担かけ過ぎたら死ぬってだけで、さっきみたいにちょくちょく交代しながら闘えば、大丈夫だよ。うん、大丈夫だよ》

努めて明るく話すリリー。

その無理した明るさがなにかを隠匿している気がする。

那由他に知られては不味いなにかをを。



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