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あの子のオパンチー


不意に頭上から楽しげな声が聞こえた。

顔を上げると、水樹から見て、上空15m付近を浮遊している未確認飛行物体もとい、渚の姿があった。


なるほど。オパンチーは紫色ですか。

「顔色が腐った人参みたいだけど、大丈夫?」

よくもまぁ、ぬけぬけと。

「ああ、お陰様で死にそうだよっ!」

「それは大変!苦しいのね♡苦しんでるのね♡分かるわ。油汗がすごいもの。」

「けどまあ、お前のド派手なパンツ見たら元気でたわ、少しだけどな。」

動揺しやがれ、コンチクショー。

「これぐらいで、派手とか言ってほしくないわー。勝負パンツは穴空きなんだけどなー。」

うん?動揺一切無し?

変態レベルが那由他並み?

てか、上の発言規制的にアウトなんじゃ…。

「なに?その大きな権力に怯えたような顔は!心配せずとも、心配する暇も無く殺してあげるっ!」


まるで壁でもあるかのように空中を蹴り、こっちに突っ込んでくる渚。

俺が心配するのもなんだが、そのまま地面に激突したら、ぐちゃみそミートパイが出来上がるのでは?

確か高さ10mから水面に飛び込んだ時の衝撃が、コンクリートに激突したときくらいの衝撃だと聞いたことあるから、コンクリートそのものに、音速で突撃したときの衝撃は…。

軽くクレーターは出来るだろうな。

なんて益体もないことを考えながらも、俺は体育館の屋根上に華麗にして優雅に跳躍、着地する。

そう!まるで孔雀かのように!


「逃がすかっ!」

当然のように着地し、同じく屋根上に跳躍、着地する。

残念。ミートパイにはならなかったらしい。

「さっきから威勢の割りに逃げてばかりなのだけれど、なにか作戦でもお有りなのかしら?」

薙刀を肩に担ぎながらゆっくり近付いてくる渚。

「あるよ!あるからちょっとだけ待ってくれない?」

「そんなこと言って、さっきみたいな大掛かりな魔法使う気なんでしょ?いけない子」

どんどん距離が詰まってくる。

「いやいや、俺まだ魔法の使い方知らないから」

知ってたらとっくに使ってる!

「えっ⁉︎そうなの?」

ピタリと足を止める渚。


「当たり前だろ、魔法の存在を知ったのがついさっきなんだから。」

「じゃ、二回目の時空間干渉魔法は誰が使ったのよ?」

「そんなの、ブレイドさんに決まってるだろ!」

そんな便利な魔法使えたら、使えたなら俺は、俺は、男の夢を叶えに行くぜ!

まってろ、しずかちゃん!


「ちょっとあんた、戦えないんじゃなかったの?」

ブレイドさんを警戒するように少し距離をとる渚。

「もちろん戦えないよ。だけど、僕の力は水樹君を通してこちら側に持ってきたからね。少しは援護するさ。」

「なるほど、なるほど。つまり、邪魔なあなたから殺っちゃた方が得策ってわけね。」


「オン!ハリバラダンソワカ!」

正面に薙刀を構え、呪文を唱える 。

すると、薙刀の切っ先が聖なる青い光に包まれる。

「この状態の”巴”は、霊的な存在を斬り、祓うことができるわ。この呪文は妖怪退治や怨霊退治の時に必要だから、仕方なくマスターしたのだけれど、まさかこんなところで役に立つなんてね。妖怪だけにもっけの幸いだわ」


まあ、軽くスルーしますけど、はい。

そんなことより、心無しか周りの空気が清まっていくような。

隣にいるブレイドさんの顔色が俺並みに悪いような。

いよいよこの物語の終幕(主人公の死によって)のような。

とにかく、こっちサイド両名共に人生の崖っぷち、クライシスです。

「おいっ!ブレイドさん!いよいよヤバイことになりそうなんだけれど、なんかいい手はないのか?」

「あまり気が乗らないが、ここは作戦Bは諦めて、作戦Cで行くしかないようだ…。」

渋い顔でブレイドさんが次の作戦を告げる。

念のため言っておくと、事前に打ち合わせなどしていないので、作戦Cとか言われても全然分からない。

いよいよ、ブレイドさんの頭が心配である。


「で?作戦Cはなにをするんだ?」

やるなら早くやらないと、変態が襲ってくるぞ。

「僕が水樹の身体を使って戦うんだよ」

成る程、成る程。そんな事が可能なのか。なるほどねー。

はい!皆さんの仰る通り!最初からそうしろよっ!って感じですよね。

「なんか、その、大丈夫だよな?」

そのまま乗っ取られる、なんてことが無いとは限らないわけだし。それに、他人に身体を預けるってのはどうも気が進まない。

「もちろん大丈夫だよ!一種の憑依とでも考えればいい」

なんだか説明が少なすぎて不安が拭いきれないが、

後一秒もしないうちに変態が襲ってきそうなので、あれこれ考えている時間もない。男なら腹をくくるか。

「分かった!よろしく頼む!」

俺の返事と同時に渚が踏み込んでくる。薙刀を長めに持ち、俺たち二人まとめて胴凪ぎにするつもりらしい。取り敢えず避けようと足を動かす。

動かない。

横を見る。

ブレイドさんが居ない。

俺。パラレルパニック。パナソニック。

錯乱状態になりかけた瞬間、自分の意思とは関係なく足が動き渚の横薙ぎを紙一重で躱す。

俺がブレイドさんが憑依したんだと、解説を入れる間も無く、流れるような円運動で先程よりもスピードの乗った一撃を間髪入れずに放ってくる渚。

その一撃も辛うじて躱し、距離をとる。

これでやっと、解説出来ると俺が口を開きかけた瞬間に、今度は神速の突きを、怒涛の勢いで放ってくる渚。必死に避けるブレイドさん。

あくまで解説はさせないつもりのようだ。

「もうっ!避けないでよねっ!」

先程までの怒涛の突きを急に辞め、間合いを取り直し一閃。

「空斬・白波!」

その間合いは水樹を斬るには遠すぎて、一閃は空を斬る。しかし、その一閃は言葉通り、空を斬り、見えない斬撃と化す。

渚程の力量の空斬はカマイタチなどではない。

風を斬るのではなく、空間自体を斬るに等しい。

斬られた空間にあったものは分子だろうが、原子だろうが真っ二つに斬られる。

つまり、ただの一閃が遠距離攻撃も兼ねた一撃必殺に昇華するというわけだ。



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