度胸の塊
「あの、ちょっとすいません。」
2人の間にブレイドさんが割って入る。度胸の塊ブレイドさん。
そして、俺に耳打ち。
「相手は武器持ち、こっちは無手じゃ圧倒的にこっちが不利だよ。」
「んなこと、分かっとるわい!けど、肝心の武器が無いんじゃ、しょうがないじゃん!」
「こんなこともあろうかと用意しておきましたよ!」
通販のノリである。こちらの世界を勉強中に運悪く観てしまったようだ。
「本当か⁉︎それ、貸してくれ!俺も武器持ったほうがテンション上がるから。」
水樹の武器使用肯定の言葉に、一瞬含みのある笑みを浮かべるブレイド。
しかし、そのことに気がつかない水樹。
「しかし、用意した武器が少々いわくつきでして…」
「おいくらなんです ー」
もう、完全に話の途中。通販のノリに乗りかけた途中。渚が堪えきれずに斬りかかる。
その気持ち。今となってはよく分かる!
ギリギリのところで、壁から飛び出る形で脱出。
そのまま渚の後ろをとる。
「すばしっこいねずみさん、可愛いねずみさん。お姉さんとぉ、遊んでよぉ!!!!」
また消える。そして目の前へ。
視認できる頃には、薙刀は振り切られた後。
さっきは前髪を斬られた。今度は ー
「すばしっこいねずみさんには〜、お姉さんがお仕置きしないとね‼︎」
今度は右手。
ちょうど右肩から後が無い。
水樹が斬られたことに気がついたころには、右手は数メートル離れたところに飛ばされていた。
「ー うああぁぁ‼︎‼︎」
飛ばされた右手を見て、斬られたと思った瞬間、ものすごい痛みが襲ってきた。切り口からは血が大量に吹き出し、服を朱色に染めていく。
そして、あっという間に水樹の周りに血の池ができる。
「あは、いいわ!いいわね!いっぱい、いっぱい血が出てるわ!とても痛そう♡あぁ、辛そうな顔をしているわね。可哀想に。かわいそうにねー‼︎」
その場で一回転。
今度は横薙ぎで胴を真っ二つにするべく斬りかかる。
あっ、死んだと思った瞬間、違和感を感じる。その違和感は先程、渚に殺されかけた(最初のこと)時に感じたものと同じものであった。
瞬時に理解し、全力で距離をとる。
てか、逃げる。
ダッシュである。
しかも、ただのダッシュではない。今の水樹のダッシュは世界を制する。スプリンターである。
風の如くである。
時間にして、0.5秒。逃げた先は学校。隠れるにはもってこいの場所。
そして一秒後。
何もない空間を斬る音が学校まで聞こえた。
「ハァ、ハァ、今のは、やばかった…。死んだと思った。」
右肩の付け根を抑え、何とか止血を試みる。しかし、後から後から血が湧き出る。肩口がマーライオンである。
「危なかったねー。腕大丈夫?」
いつの間にかブレイドさんが隣に座っていた。
「はは、ちょっと大丈夫じゃないかも…。なんか、寒いし」
こんな時思い出すのは、血塗れだった那由他の姿。
そういえばあいつの体温も冷たくなっていたな。
「なんか遠くを見る目をしているよ、水樹くん。早く腕直しちゃわないと、本当に死んじゃうよ。」
「治せるのかっ!」
こいつの力は腕が無くても治せるのか。とんだチートだな、こりゃ。
「もちろん治せるよ。ただの怪我なら簡単なんだけれど、腕とれちゃったとなると、少し難しいけどね。」
「なんでもいいから早く教えてくれ!あの変態が来ちまう!」