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狼とジャック・オ・ランタン

本来は書く気のなかった話です。

とあるきっかけがありまして、書きました。

ハロウィンの賑やかな夜

子どもたちと大人たちの

絶え間ない笑い声


暗き夜を仄かに照らすのは

カボチャの中身を

くり抜いて作られた

笑い顔のランタン


ランタンの光と夜の闇

その境界線に

狼は一人佇んでいた


地上での最後の時を

見守るように微笑んで


夜が更けるのを

別れの哀しみを胸に抱いて

待っていた


その様子を

仮装を楽しむ

子どもたちの

人混みに紛れながら

ジャック・オ・ランタンは

くり抜かれたカボチャの奥に

仄かに瞬く

朱い光の眼差しで

狼を見ていた――


夜も更けて

人々が眠る時が訪れると

カボチャのランタンの灯りが

すべて消され

夜の闇だけが

地上を覆い被さった


その時を待っていた狼は

寝息を立てている

己の仔である白狼を

背中に乗せながら

人里から離れた

丘の頂に来ていた


冬の聖人であるイヴェールが

目覚める時までに

地上を去るために――


狼が薄い雲に包まれた

夜空を見上げると

地上を去るための

魔法が込められた

遠吠えをあげた


すると、夜空を包んでいた

薄い雲たちが

狼の前に雲の階段を

作るようにして

集まり始めた


その時を狼から離れていた

ジャック・オ・ランタンは

黒い手袋が

嵌められた手で

指をパチンと鳴らすと

雲の階段の左右に

カボチャのランタンが現れ

仄かな光の線が

曲線を描くようにして

夜の闇を切り裂いた


狼は後ろを振り向くと

少し離れたところから

ジャック・オ・ランタンが

見守るように

微笑むように

くり抜かれたカボチャの奥にある

朱い光を瞬かせていた――


ジャック・オ・ランタンの姿を見た狼は

ありがとうと言うように

微笑みながら一声吼えると

天上へと続く

光の曲線に照らされた

雲の階段を登り始めた


地上を去る自分に

ジャック・オ・ランタンが

ささやかに

送別してくれたことに

感謝して

一歩一歩しっかりと

地上を振り返ることなく

ただただ、ひたすらに

天上へと進みゆく


新たなる世界で

疲れ切った心身を

親子ともども

癒やすために


そして、新たな物語を

紡ぐために――


《終》

短編集に収録されている「天上の海」と同じモチーフです。

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