第一話 始まりの鎮魂歌(レクイエム)
家が燃えている…
その中で1人の幼い少女が母親の身体にしがみついていた…
その母親は、ピクリとも動かない…
「おかぁさん…」
少女は、血まみれの手で一生懸命に母親の身体を揺すり涙を流し必死で呼びかける…
でも、そこには虚しさが広がっているだけなのに気が付かないのか…
あるいは、少女が幼すぎたのか…
少し前までは平穏な日常だったのに…
当たり前の幸せな家族がそこにはあったのに…
でも、もう戻れない……あの頃には…
あぁ、私はもう戻れない…
全ては…自分の侵した罪から始まった悲劇なのだから……
――――――
「いやぁぁぁぁぁ!!」
悲痛な叫び声を上げて斉藤桜が目を覚ましたのは、冬へと向かい始めた少し肌寒い11月の日曜日の朝8時…
何も変わらない自分の部屋のベッドだった。
「………、夢…だったの?…」
自分の荒い呼吸を整え、改めて現実だと実感しながら自分の手を見つめる。
手にはべっとりと汗を掻いていた…
今まで何度となく見た強烈な夢…
だからこそ怖く感じた…
コンコンと誰かがドアをノックする音。
「どうぞ…」
怖さを隠しきれないまま声を出す。
部屋に入ってきたのはこの家の執事、滝沢厚生だった。
彼は60代という初老の人だがベテランで何事にも落ち着いて行動出来るこの家の執事。
「お嬢様…起床のお時間でございますよ?」
滝沢はそう言いながら一階から持って来たらしいワゴンを部屋に入れ、ベッドの側まで持ってくる。
ワゴンには湯気のたったポットとカップが一つ置かれていた。
「大丈夫でございますか?お嬢様」
滝沢がポットの中身をカップに注ぎながら桜を見遣る。
「何故?」
「いえ、さっきお嬢様の悲鳴の様な声をお聞きしたものですから…」
どうやら目が覚めたとき悲鳴を上げてしまったらしい…
安心させるように少し微笑んで答える。
「平気よ。少し嫌な夢を見てしまっただけ」
桜は不意に手を胸に当てた。
執事はゆっくりとカップを差し出す。
「左様でございますか」
カップの中身はあったかいココアだった。
それをゆっくりと咽に流し込む。
暖かくて心が落ち着いた…
「さて…」
滝沢は改まって桜の方を向く。
「今日のお嬢様の御予定は覚えていらっしゃいますか?」
唐突な質問に一瞬、不意を突かれたが思い出して答えた。
「えっと…、確か舞梨と映画を見に行くから、9時に駅に待ち合わせだった気がするけど…」
桜は机にある時計を見つめる。
現在、時刻は午前8時20分…
ん?8時20分…?
「…って、あと40分しか時間ない!!着替えて…食事して…駅まで行って…明らかに時間がたりない!完全に遅刻だわ!」
ベッドから飛び出して洋服ダンスをあさりはじめる桜を微笑んで見ながら滝沢は優しく言った。
「お嬢様、そんなに慌てなくとも私が車でお送りすれば5分でお着きになりますよ。その前に支度をなさって下さい。朝食は、車内で食べられるようにパンをご用意いたしますので」
「ありがとう。迷惑かけてごめんなさいね。」
これから、着替えようとしている桜に気を使って、滝沢は「お気になさらないでくだい。では、下でお待ちしております。」と一礼すると部屋を出て行った。
「うーん。急いで選んでしまったけど、変じゃないかしら…」
着替え終わると姿見の前に立って確認してみる。
黒リボンのタイが付いた白のブラウス…下はミニフレアスカートと靴下を黒に合わせてみた。
「まぁ…、男の子と行くわけじゃないんだし…舞理ならそんなに気にしないか…。」
桜はさっさと、着替えを済ませると自分の机に置いてあった十字架のペンダントを身につける…
「……よし、準備終わり…。急がないと遅れてしまうわ」
最後に机の鏡に写っている姿を見て整えると斉藤 桜は鞄を持って部屋を出た…
こんにちは!! わんこです( ̄∀ ̄)
そんなこんなで異世界王女が始まった訳ですが…
正直やっていけるか不安です…
今、私は平穏な2年の女子高生なのですが、3年になるのが近づくにつれて進路の問題が…
まあ、何とかがんばりますです!
最後に……この物語を読んでくれた読者さんに感謝致します!
応援してくれると嬉しいです。
それでは…
See you next time(^o^)/