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始めの男の記憶
彼は笑っていたけれど、きっと泣いてもいたのだろう。
彼の視点で、彼の命で、ほかならない彼を見つめているのは、紛れもなく俺自身だった。
生命が途絶えた肉塊の上に彼は立っている。愛していたものの肉塊を抱きしめながら、他の肉塊を踏みつけて、嗤う。声をあげて、高らかに嗤う。その声は枯れることを知らず、ただただ彼の嗤う声が響く。血に濡れた鉄臭い空気に、大地にそれは反響して、やがてわんわんと鳴り始める。耳につく煩わしい音は、どこか泣き声にも似ていた。
そう、彼は、
彼は笑ってはいるけれど、きっと泣いてもいるのだろう。
長い時間男は一人でそうしていたけれど、それもようやく終わりを告げる。
男は腕の中に抱いた、愛する者の亡骸を見つめ、心底愛おしそうに名前を呼ぶのだ。
「 」
俺はその名前を言う前に、いつも目が覚める。