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10.ある穏やかな日のトライアングル

 ねみー。というか寝てた。また先輩に怒られるかもなー。まーバレていないければ大丈夫だろ。


 おや?こちら側の門から町に入ろうなんて珍しいな。東門の街道の先は村が二つだけだし、どっちも小さな村で、あまり社交的ではないのか知らないけど滅多なことではアイフェストまで来ないんだけど。


 やって来たのは旅人にも見えない二人。格好から判断すればどっかの不良が普通の村人を引っ張ってきたように見える。でも人相は全く逆。盗賊の一歩手前みたいな服装の茶髪の男は、人相は良い方だと思う。それに比べて村人っぽい褐色黒髪は、まるで殺人鬼のような目をしている。なんだこいつら?

・・・まいいか。気にせず仕事しよ。


「はいどうもこんにちはー。身分証お願いしまーす」


うわーこえー。欠伸したら殺人鬼が睨んでた。肝が冷える。

と、ビクビクしてたら茶髪の優男が通行証を発行して欲しいという。


「えー(殺人鬼と一緒かよー。詰所入りたくねー)あー(でもしょうがないか。仕事しないとまた先輩にどやされるし)ついてきな」


 詰所に入って書類棚を漁る。さっさと仕事終わらせたい。あんな殺人鬼と狭い詰所にいるとか本気でちびる。


「ほい、これに名前と出身地書いて」


さぁ書けやれ書けそして出て行ってくれ。

ん?なんだと?!字が書けないだと?!


「おろ?」


どんだけ田舎もんだよ。今時8歳の少年少女でも自分の名前くらい書けるのに・・・。

もしかして奴隷?あーなんかこの先に踏み入ると面倒事の予感がするわー。流そ。


「学園の手が回らないほど田舎なのかー。まいいや。名前と出身地教えてー」


茶髪の優男は何故か俺と殺人鬼を交互に見てそわそわしている。なんだこいつ?

・・・まいいか。仕事しよ。


ってーい。変な名前だな殺人鬼。リュウノスケって何だよ。しかも出身のニホンてどこだよ?どんだけ田舎だよ!なんか堂々としてるし、嘘じゃないのかな?んーなんかこの先も面倒事の予感だ。仕事しよう仕事。



「はいどうもー。次、そっちの人」


ネッドさんね。あれ?でもこの人は出身が普通だ。


「ん?イタ村なのに学園に行ってないのか?」


って聞いたらまた胡散臭い答えが返ってきましたよ。まー例によって流すんですけどね!

いやだって問題起こして飛ばされたって。どこへ?何したのあんた?

ここは聞かないのが大人の対応だ。

俺がこの人達を町へ通したところで、問題が起きなければいいのだ。


「へー、そんな話聞いたことないけど、まいいや。町の中で問題起こさないでくれよー」


うん、すぐにフォルザに登録してくれるって言ってるし、人相に免じて信じてあげよう。

だが殺人鬼。てめぇは信用ならねぇ。というわけで交代の時に報告してから上がりますかね。


「そうかい。じゃあはいこれ。何かしら身分証が手に入ったら捨てちゃっていいから。どうせ本人しか使えないし、一度町から出たら無効だからそこんとこよろしくー」


説明することも全部言ったかな?

んじゃ、交代までまた寝ますかねー。あー怖かった。




***




 入口の扉が開いて、入ってきたのは二人の男性でした。見たことない顔ですね。

一人は茶髪で人相の良い青年。もう片方は・・・まだ少年と言ってもいいかもしれない年齢ですね。ただ目つきが尋常じゃないですが。

あの年であんな威圧感のある視線を飛ばせるのは凄まじいです。

おやおやそんな視線をあたりかまわず撒き散らさないでください。問題が増えそうです。胃薬が増えそうです。

周りの連中も子供相手になに殺気立ってるんですかまったく。茶髪の方は怯えて少年にしがみついていますよ。混沌としてきましたね。仕事上ここを離れられないのが悔しいです。


 おっとそんな事を思っていたらあちらの方から来てくれました。ここからは仕事です。

ここはフォルザ。来るものは拒まずが信条ですからね。ですが油断は禁物です。


「どういったご用件でしょう?」


私がそう言うと何やら少年の雰囲気が和らぎました。はて?何かしたでしょうか?どこか瞳から期待を感じます。何に期待しているのでしょうか?まぁいいでしょう。


 登録ですか。この少年は既にかなりの修羅場をくぐってきたように見えるのですが、まだ冒険者ではなかったのですね。今日一番の驚きです。まだ朝ですが。


 ああ登録料金は少年の方が出すのですね。この茶髪の方はいったいなんなのでしょう?男色なのか疑いたくなります。


「確かに。ではこの紙に名前と年を記入してください」


 私がそう言うと少年がそれだけでいいのか?なんて聞いてきました。何か書きたいことでもあるのでしょうか?自分から情報を漏らすのはいい傾向ではありませんよ?いやだからこそ管理側に教えるのが普通と考えているんでしょうか?この歳で?わかりませんね。

それにここはならず者も多く来ますからね、いちいち素性なんて気にしてられなかったりするんですが。

まぁ怪しい者は裏で調べたりはしますけどね。

この少年は・・・暴力性は垣間見えますが大丈夫でしょう。


「結構です。ただ偽名を使用して後で発覚しますと最悪奴隷になることもありますので注意してください」


 私がそう言うと、意外そうな顔してますね。それは偽名黙認に対してなのか、奴隷になることに対してなのか気になるところです。


 おっと字が書けませんか。このご時勢珍しいですね。しかもお二方ともですか。もしや奴隷かとも思いましたが、どこにもその証は見つかりません。どうやら違うようですね。


リュウノスケ スオウとはまた珍しい名前ですね。スオウ家など聞いたことはありませんが、ニホンというのは大層田舎なのでしょう。あるいは外国かも知れません。はたまた他の大陸?いえ、詮索はいけませんね。仕事柄気にしてしまいますが、組合長に打診してからにしましょうか。ネッドさんの事情も含めて・・・・ね。


 その後は二人とも新人冒険者の枠を出ませんでした。おすすめの宿を聞いてきたのは驚きでしたが、私のイチオシを教えておきました。気に入ってくれると嬉しいですね。




***




 今日やっとアイフェストに到着した。まったくリュウノスケには驚かされてばかりだった。

まさか字が書けないとは思わなかった。

 国が義務教育という制度を始めたのはもうかなり昔のことだという。平民ほどの稼ぎがあれば、簡単な識字計算が身につくんだそうで羨ましい。俺は身売りされたせいで入学前に奴隷の身だったので詳しくは知らない。

そもそも今の時代に字が書けないのは子供か奴隷くらいしかいない。田舎者でごまかすのにも限界はあるし、今日の俺の言い訳なんかは最悪だ。

調べれば簡単にバレてしまう。ネッドなんて奴は学園に通ってないことが。

リュウノスケにはそのことで迷惑をかけるかもしれない。あいつは気にも止めなそうだが。


 フォルザでは肝を冷やした。入るのは初めてだったが、冒険者は怖かった。何故かみんなこっちにガンつけてきたし、目つき悪いし。リュウノスケの目つきを知らなかったらちびっていたかもしれない。腕を離せと言われたが、そんなん無理だ助けてくれ。

これからまともに仕事できるのか不安だ。遠慮なくリュウノスケの腕を頼ろうと思っている。

 というかあいつ俺がしたフォルザの説明半分以上聞いてなかった。さすがに悲しいぜちくしょう。


 宿に入るとリュウノスケはすぐさま水浴びをし始めた。と思ったら素っ裸で出てきて、「お湯が出ない」ときやがった。お前は貴族か!なに贅沢抜かしてやがる。

そう言うと渋々戻っていった。いや、まだ浴びるのかよ。冷たいのに。

変な奴。


 そう思っていた俺にバチが当たったのか、リュウノスケが俺に水浴びを強制してきやがった。なんで?というかシャワーって何?さっきから連呼しているが、どうも水浴びのことらしい。あ、その目つきで迫ってくるの止めて。軽く漏れそう。

え・・・・臭いのか、俺の体。あ、かなり心が痛い。

素直に従おう。



くっそ冷たかったぜ、リュウノスケめ。



冷えた体を引っ張ってフォルザに入る。

掲示板の前で難しい顔をしていたリュウノスケが依頼を選ぶのを俺に任せてきた。

どうやら面白そうなのが見つからなかったらしい。

俺が依頼を一通り見てみると、面白そうなのがあるじゃないか。

水浴びの仕返しだリュウノスケ。

依頼書をはがしてリュウノスケに見せつける。


『下水掃除』


さぁ一緒に糞まみれになろうぜ?

上から門番、メタカさん、ネッドの順です


トライアングルというのは3つの視点て感じですね

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