6:メールしてみよう
そんな合コンが終わって、家に帰って。
『ついに彼氏出来た~!』
って思ったんだけど。
改めて考えてみたら。
告っても告られてもいないのよね。
これって本当に、お付き合いが始まったことなのかな?
あたしだけが一人、暴走してるのかもしれない。
浮かれちゃって。
分かんないなあ。
でも。
それも当然かもしれない。
だって、たったの1回、ちょっとしかお話ししていないんだもん。
あたし、緊張しまくりだったし。
――だけど。
杜雄君、カッコ良かったなあ。
すごくやさしそうだったし。
それだけで遅刻してたこと、チャラになっちゃう。
単純なあたし。
告ってなくても。
これってお付き合い、始まったことだよね?
(このことメールしてみようかな……)
そうは思うんだけど、ウザい女の子って思われちゃうかもしれない。
『しつこ過ぎるのは、嫌われる原因』
って、雑誌で読んだことあるし。
それだったら、メールで訊くなんて、出来ないよね。
あたしは、紗枝に訊いてみることにした。
数回のコールの後、
「あ、あたし」
『うん、何?』
「今日ってさ、あたしと杜雄君、付き合い始めたってことだよね?」
『何言ってるの。アドレスまで交換してて』
「自信無くって……」
『メールしてみなよ』
「ウザいって思われたくない」
『そんなこと無いって。今、優斗とキャッチで話してるから、もうこれでいい?』
「う、うん。ゴメンね」
『じゃ、また』
――はあ。紗枝も冷たいなあ。
仕方が無いか。
彼氏さんと話してるんだもんね。
うん。
メールしてみよう。
紗枝の言う通り、アドレスまで交換したんだもん。
Subは何にしよう?
いきなりつまづいちゃった。
とりあえず、
『こんばんは』
かなあ。
肝心の本文は……。
うーん。
全然アタマが働かない。
それでも、
『紫音です。
今日はありがとう。
また会ってもらえますか?』
これを打つのに、30分近くかかっちゃった。
でも、いいよね?
――送信。
レス、くれるかなあ。
とりあえず。お風呂に入って気持ちを切り替えてから、レスを待とう。
大丈夫、だよね……?