4:我慢出来ない!
「ごっめんね、紫音ちゃん。寝坊したってメール来たんだ」
ケーキ屋さんの中で、優斗君が両手を合わせた。
「ううん。大丈夫」
そうは答えたけど……。
正直、ランクダウン。
だって。
セッティングまでしてもらった合コンに、遅刻するなんて。
しかも理由がお寝坊さん。
何だか、紗枝の考えてくれたコーデも、色あせたものに感じちゃう。
紗枝は、
「仕方が無いじゃん。人間なんだし」
って言うけどね。
あまりにもタイミング悪いよ。
そんな紗枝は、あたしよりも決まってて。
ブランドで固めてるわけじゃ全然無いんだけど、細かいところがビシッとしてる。
右手のくすり指には、優斗君とお揃いのシルバーのリング。
お店の中なのに、優斗君は紗枝の肩に手を回して、いちゃついてる。
何だかあたしなんか、どうでもいい雰囲気。
一人で浮いちゃってる感じなの。
あ。着うた。
「ゴメン。オレだ」
優斗君のケータイか。
どうやらメールみたい。
「今、電車に乗ったって」
「どのくらいで着きそう?」
紗枝が訊いてくれた。
「アイツの家からだから……。あと1時間ぐらいかな」
「そんなにかかるの!?」
思わずあたし、言っちゃった。
だって。
もうお店に入って、30分は経ってるのに、さらに1時間だなんて。
いくらなんでもひど過ぎるよ。
せっかくの合コンなのに、あたし独りでバカみたい。
「ま、のんびりしようぜ」
優斗君は気楽に言うけど。
いいよね。
紗枝ってお相手がいるんだもん。
いつまでだって、楽しいと思う。
紗枝もそう。
あたしなんか空気みたいな存在で、優斗君とばっかり話してる。
あたし、完全に浮いてる。
何だか泣きそうになって来ちゃった。
「あたし、帰る」
我慢出来なくなって、言っちゃった。
「え? 何で、紫音?」
「そうだよ。どうかしたの?」
「もう、我慢出来ないもん!」
半べそになりながら、バッグを手にして、あたしはお店から飛び出した。
駅の方へ向かって、走り続ける。
――バカ! バカ!!
あたしは自分に向かって、ココロの中で叫び続けた。
ここまで決め込んで、楽しく合コン出来ると思ってたのに。
結局はあたし独りで、空回りしてただけ。
ホント、バカみたい。
ケータイが鳴った。
紗枝からだ。
気が重たかったけど、
『もしもし? 紫音?』
「うん」
『また優斗にメール来て。『ごめんなさいって伝えて』って言ってたよ』
「だって……」
『戻っておいでよ。あたしも悪かった。優斗とばっかり話してて』
「う、ん」
『せっかく紫音もキメたんだから。もったいないって』
そうだよね。――少し気持ちに整理が付いた。
「分かった。あたしもゴメン。突然出ちゃって」
『待ってる。お店の場所は覚えてるよね?』
「うん」
『優斗も謝ってた。気分切り替えて、合コンしよ。ね?』
「――分かった」
『じゃね』
あたしもどうせ会うなら、楽しく会いたい。
それに。
セッティングしてくれた、紗枝と優斗君に悪いもんね。
涙を拭いて、あたしはゆっくり、お店に戻った。




