20:2人で1人
ホントのこと。
何より、正直に打ち明けてくれている、杜雄君の態度が嬉しい。
あたしのことも、ちゃんと気遣ってくれて。
笑顔をあたしは浮かべた。
「――紫音ちゃん」
「分かりました。杜雄君のことば、ウソとはとても思えないもの。――あたしも悪い点、たくさんありました。だから……」
今こそ告白しなさい!
紫音!
「あ、たしと。お付き合いしてくれますか?」
ひゃ~! 言っちゃった!
顔を見られないよ~。
「ありがとう。――こんなオレで良ければ、喜んで」
アタマから、湯気が立ってたと思う。
受け入れてくれた。
あたしだって良くないところ、たくさんあるのに。
外見だけで決め付けてたあたし。
カッコ良さばっかり追及して、相手の内面を感じようとしなかったあたし。
何より。
『思いやる』気持ちを、持っていなかったあたし。
「あたしこそ。ありがとう……」
今度はちゃんと、杜雄君の顔を見られた。
――微笑んでくれてる。
「じゃあね? 渡したいものがあるんだけど……」
「はい」
何だろう?
バッグの中から、杜雄君は緑色の小箱を取り出した。
そして、すっとあたしの右手を取ると、
「受け取ってください。彼女の紫音ちゃん」
――これって、もしかして。
そっと小箱を開けた。
まばゆいばかりの、シルバーリング。
「これ……」
「花園仕込み。アイツたいしたもんでね? この前の一瞬で、紫音ちゃんの指のサイズを見て取ってたんだ。だから、ぴったりだと思うよ」
言いながら、杜雄君はあたしの右手、くすり指にリングを通してくれた。
ホントだ。ぴったり。
「恥ずかしいことに、お揃いだったりします。オレも。こんな感じ」
同じく、自分の右手くすり指に、リングをすっと通した。
ひゃ~! どうしよう!?
「――いいんですか? もらっても?」
「もちろん。あの時、花園に引きずられてショップまで行って。お説教食らいながら選んだんだ。
『本当に好きな相手だったら、これからはこんなことのないように。しっかり自分で買えるようになれ』
って言われてね」
そうなんだ……。
現金な感じだけど、ちょっと花園ちゃんがカワイらしく思えちゃう。
杜雄君の相談役だけあるのね。
親しみの感情がちょっと湧いた。
「ありがとう、杜雄君。あたし、信じ続けていて……。ホントに良かった……」
涙が頬を伝ったのを感じた。恥ずかしいけど、止まらない。
「これからは。オレたち、『2人で1人』ってことで。よろしくお願いします」
「あたしこそ。ありがとう!」
――嬉しい。暖かい想い。




