2:合コン!?
「そんなに彼氏が欲しいなら、紹介させるよ」
お昼休み。
学食で紗枝が、そんなことを言った。
「うーん」
「優斗、顔広いし」
あ。優斗って言うのは、紗枝の彼氏さん。
「でも、どうせ恋愛するなら、運命の出会いを待ちたいよ」
「紫音はいつも、そう言うね」
だって、本当のことなんだもん。
「いい? そんなこと言ってたら、永遠に彼氏なんか出来ないよ?」
矢がぐっさり刺さった。
確かにそうかもしれないけど。
夢を持っていても、いいと思うのね。
あたしだけの、白馬の王子様。
そんなことを言ったら、
「だから! 紫音は甘いの! 恋愛するなら、もっと積極的にならなきゃ。『白馬の王子様』は、自分から捕まえに行くの!」
学食のほうじ茶をすすった、紗枝に叱られた。――そうかもしれないけど。
「夢を持ってちゃダメ?」
「だーかーらー! 『夢』は作るものなの!」
さすが彼氏持ちだなあ、紗枝は。
あたしも『夢』、作れるのかな?
「でもあたし、全然自信無い」
「そこが紫音の良くないところ。自分に自信を持たなきゃ」
あたしもほうじ茶をすする。
「そんなに良くないところかなあ」
「あーもう! じれったいなあ。じゃあ、今度の土曜日。合コン決定! それまでに、優斗に誰か紹介させるから!」
「ひえっ!?」
ちょっと待ってよ、紗枝!
「いい? それまでに自分の気持ちを固めておいて」
「そんな、いきなりだよお!」
「だって、そうでもしないと紫音、永遠に彼氏なんて出来ないよ?」
「そうかもしれないけどお……」
「大丈夫。あたしと優斗も一緒にいるから。もっと気軽に考えて」
そうは言うけど、合コンなんて初めてだし、男の子とちゃんと話せるかなんて、これっぽっちも自信が無い。
クラスの男子とも、ほとんど話したことが無いし。
――合コンかあ。
「あ。一応、好みのタイプ、聞いておくよ」
「えー? えーとねえ。カッコ良くてやさしい人」
紗枝は苦笑した。
「そこだけは、はっきりしてるのね。欲張りさん」
「そうなの?」
あたし、正直に答えただけなんだけどな。
「ま、優斗に伝えてみるよ。当日はうんとキメて来てね」
「キメるなんて、分かんないよ」
紗枝はため息。
「分かった。じゃあコーデも考えてあげるから。金曜日、ガッコ終わったら、服とか見に行こう」
「そこまでしなきゃダメ?」
「当たり前でしょ。自分をうんとアピールするの」
何だか大ごとになって来ちゃったなあ。
「うーん。じゃあお願い」
チャイムが軽やかに流れ始めた。
お昼休み終わっちゃう。
「それじゃ、金曜日にね」
「うん」
今からどきどきして来ちゃった。
大丈夫かなあ……。