18:花園ちゃんとの関係
並んで歩き始めたあたしに、
「お店に入る前だけど。本当にゴメンね」
「お話してもらえれば。あたしは大丈夫です」
素直な気持ち。
だって、信じてるんだもん。
少しの間お互い黙って歩いて。
お店に着いた。
今日はそれほど混んでないみたい。
どきどきして来た。
注文をして、あたしはお冷を一口飲んだ。
「今日は来てくれてありがとう。話せる限り話すけど。その前に、本当にごめんなさいって謝っておくよ」
杜雄君がアタマを深く下げている。
「いいですよ、そんな。あたし、準備出来てますから」
「じゃあ、少しずつ話すね」
「はい」
あたしは思わず姿勢を正しちゃう。
「どこから話そうかな。うん。実はね? 紫音ちゃんと会う直前まで、付き合ってたコがいたんだ。向こうからフラれちゃったんだけどね」
杜雄君をフっちゃうコなんているんだ。
あたしはそれにびっくり。
「そのことを、花園は問い詰めたんだと思う。知らせてなかったから」
ケーキと飲み物が運ばれて来た。
あたしはレモンゼリーとレディグレイ。
杜雄君は生チョコレートケーキとチャイ。
ちょっとずつ食べながら、杜雄君が続ける。
「花園はね? 前の母親。そう。いわゆる『腹違いの姉』なんだ。家が近いから、まだしょっちゅう会ってるんだけど、それだけの関係。花園が何かと出しゃばってるだけで」
え~!?
「そんな、関係。だったんですか……」
「うん。だから遠回しになっちゃったけど、『家族のようなもの』としか、表現出来なかったんだよね。今は母親、完全に離婚してるし。正確に言えば、『家族』じゃないから」
思い返したのが辛かったのか、少しだけ痛そうな表情。
そうだよね。
もう、本当のお母さんはいないんだもの。
――辛いと思う。哀しいと思う。
それで、婉曲な表現を使ってたんだよね。
『家族のようなもの』
って……。
でも。
それで、花園ちゃんはあんな強い態度で、杜雄君に話しかけることが出来てたんだ。