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13/21

13:もう少し信じたい

 何杯コーヒーを飲んだかな。

 お手洗いが近くなっちゃうけど、今はこの苦みが欲しい。

「紫音! どうしたの、いったい?」

 紗枝が息を切らしながら、テーブルまで来てくれた。

 ホントにゴメンね。

 優斗君と会ってたのに……。

「ゴメン。デート中だったのに」

「そんなのいいよ。杜雄君と何かあったの?」

 また涙がこぼれた。

「あたし、フラれたみたい」

 かいつまんで、事情を話した。

 それを聞いた紗枝は、

「うっそ! それひど過ぎる!」

 そう言ってくれた。

「優斗経由で文句言ってあげるよ。優斗にも。そんなコがいる人を紹介したなんて、許せないから」

 あたしは弱々しく首を横に振った。

「優斗君は悪くない。悪いのはそんなことも分からないで、独り喜んでたあたし」

「紫音……」

「へへ。バカみたいだね。何やってるんだろ、あたし。ホントだったら後を付いて行ってでも、2人の関係を聞き出さなきゃなのにさ」

 涙がぼろぼろこぼれて来た。

「杜雄君ね? あたしのこと、『彼女』って言いかけて、結局『友達』って言ったの。これって見事に玉砕したことだよね」

 沈黙が訪れた。店内のBGMが、ココロを動かすことも無く、あたしたちの間を流れて行く。

 ――杜雄君、どんなCD探してたんだろうな?

 未だにそんなことを考えちゃう。

「杜雄君、他に何て言ってた?」

 紗枝の問いに、あたしは思い返す。

「確か……。『後でメールする』って」

「メール送るってことね? もうこっちから送ろうよ、紫音」

「でも……」

「想いを踏みにじったのは、杜雄君の方なんだから。言いたいこと全部、ぶちまけちゃいなよ。ね?」

 紗枝が言ってくれるのも分かる。

 でも。

 まだあたしは疑問があった。

 あの時、花園ちゃんは、

『新しい彼女じゃなくて?』

って言ってた。

 少しおかしくない? 紗枝に話してみた。

「うーん。確かに。そのコが彼女だったら、矛盾したことを言ってるね。『新しい彼女』ってことは、今やっぱり、杜雄君に彼女はいないってことかな?」

 分からなくなって来た。

 やっぱり今、こっちからメールしない方がいいのかも。

(待ってて。信じてていいの? 杜雄君?)

「紗枝。もう少し信じたい。でもね? あたしからも訊きたい。――メール送るか、どうしよう?」

 紗枝は腕を組んだ。目を閉じる。そして、

「こっちから訊こう。少なくとも、杜雄君にはそのコとの関係を、説明する義務がある。そう思うよ」

 力強く、きっぱりと言ってくれた。

 うん。

 そうかもしれない。


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