11:楽しみだけど……
その日の夜。
あたしは明日の小テストに向けて、少しだけ勉強してた。
落ち着かないの。
机の上に出してるケータイが、いつ震えるかと思うと。
メールを送ったのがお昼なんだから、そろそろレスをくれてもいいのに。
勉強に集中出来ない。
アタマの中は、杜雄君のことでいっぱい。
(あたしの気持ち、伝えたいのに)
シャーペンをノートに転がして、あたしは椅子の背もたれに寄りかかった。
わ! 来た!
ケータイが震えてる。急いで手に取った。
ウソ! メールじゃ無い! かかって来てる!
「も、しもし?」
『あ、今いいかな?』
待ち焦がれた、杜雄君の声。
「は、はい」
『この前決めなかったよね、次』
「はい」
『紫音ちゃんは、どこか行きたいところ、ある?』
え~! いきなり言われても~!
「その、えと。会えれば、どこでも」
『ホント?』
「はい」
『じゃ、CD探すの付き合ってくれないかな?』
「はい!」
『ありがとう。紫音ちゃんも探したいCDあったら、一緒に買おうか?』
正直、あたしは音楽にあんまり詳しくない。
「あ、あたしは特に……」
『だったら、この前と同じ時間と場所で。いいかな?』
「はい」
あたしまた、『はい』ばっかり。
『じゃ、よろしくね』
「はい」
電源ボタンで通話を切った。
心配し過ぎだったのかな、やっぱり。
紗枝の言う通りかもしれない。
それより。
ちゃんとあたし、告れるのかな?
杜雄君は、うなずいてくれるのかな?
会えるのは楽しみだけど、不安なこともいっぱい。
(杜雄君。しつこいかもしれないけど。あたしだけの彼氏だよね……?)
握ってくれた右手。
(――熱い)
信じてる。
杜雄君。