10:次が決まっていない
「それでそれでっ? 紫音はどうしたの?」
またお昼休みに学食。
あたしは紗枝の、質問攻撃にさらされていた。
もちろん、この前のデートのこと。
「えーとね? ケーキをちょっと交換したの」
「すごいじゃん! いきなり間接キス?」
そこまでオオゲサなもんじゃないけど。
あたしにとっては、大事なこと。
「うん。でね? 手もつないじゃった」
紗枝は口笛を鳴らすと、
「初デートなのに、すごいね」
「あたしもそう思うよ。――でもね?」
「うん」
「まだ彼氏なのか分かんない。告っても告られてもいないんだもん」
「そこまでしてて、何言ってんのよ」
(紗枝。気のせいだと信じたいけど、杜雄君、女の子に慣れてる)
言いたかったけど、言えなかった。
「ちょっと……。杜雄君って、あんなにカッコいいのに、彼女いないなんて」
「それはあんまり関係ないでしょ。タイミングだよ」
「あたしのタイミングが良かったの?」
「そんなもんだと思うよ」
「でも、不安だよ」
息を吐いた紗枝は、
「それが紫音の良くないところ。心配し過ぎ」
「気になるんだもん」
「じゃあさ。次に会った時に、紫音の方から告りなよ。それが一番、はっきりさせる方法じゃない?」
あたしはちょっと、暗い顔になったと思う。
「――次に会う予定、決めてないの」
「最後に決めなかったの?」
「うん……。あたしから言い出せなくって」
「じゃあ、そこからメールしなきゃじゃん。今、打っちゃえば?」
「ウザく思われないかなあ」
「心配し過ぎ」
「はい」
あたしはケータイを出すと、杜雄君のアドレスを選んだ。
でも……。
「紗枝ぇ。何て書けばいいのかな?」
「しょーがないなあ。じゃ、また一緒に考えてあげるよ」
2人で考え考え。
Subは、
『今度は』。
本文は、
『いつ会えますか?』
にした。
シンプルな方がいいんだって。
紗枝のアドバイス。
「じゃ、送っちゃうね」
――もし。
もしこれで、レスが来なかったら。
あたしどうしよう?
「レス、来るかな?」
「絶対大丈夫だって。杜雄君のタイミング、待とう」
「うん……」
チャイムが流れ始めた。教室に戻らなきゃ。
「ありがとね、紗枝」
「改まって、何を。いいよ」
あたしたちは、学食を後にした。
(杜雄君……。待ってるよ、あたし)