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推しが引退して解散したサークルの元メンバーがダンジョンで憂さ晴らし配信するようです  作者: 9bumi
1章 初回配信

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第5話 止まらない

 未到達階層へということで、俺たちは本格的にダンジョン攻略を開始した。

 ちなみに、炎竜の魔鉱石は仙台支部の職員に1階層まで来てもらい預けた。

 相場によって値段は上下するが、100万円~200万円は固いので、帰ったら焼肉でパーティーだ。


 そのためにも、何としても配信を成功させなければ。


 メンバーへのお詫びとして、目的地までの戦闘(雑魚狩り)は基本的に俺が中心となって行うことになった。


「雅人、辛くなったらいつでも言えよ~」

「分かりました!」


 俺の背後で、牧さんが温かい声をかけてくれる。

 木戸さんはありがたいことにカメラを向けてくれる。

 宮辻さんは楽しそうに視聴者とお話ししていた。


「みんな私みたいな三十路のどこがいいの?」


 元メンバー:まだ29歳ですよ!

 一般人:↑なら三十路じゃない

 一般人:三十路でもOK!

 一般人:このままずっとお話しましょう!


「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」


 元メンバー:宮辻さんデートしてください(10000円)

 一般人:↑投げ銭でデートのお誘いw

 一般人:これが宮辻ファンクラブか


「ごめん。無理」


 一般人:当然の結果

 元メンバ:塩対応ありがとうございます! また誘います!(10000円)

 一般人:↑振られたのに何で投げ銭してんだw


 俺の戦闘を映して欲しいと思わなくもないが、視聴者が楽しんでくれているのならなによりだ。

 それから、現在到達している最高階層となる45階層にたどり着くまで、着々と攻略を続けていく。

 俺以外の戦闘を見たいというコメントが何度か来て、それに応じて皆がそれぞれファンサービスをしてくれた。

 そのおかげで、配信の接続が落ちるようなことはなく、逆に増えていった。

 最初が1000いるかいないかだったのが、今は5000人にまで増えている。

 

 そして、延長配信を始めてから2時間後――


「皆さん、ついに45階層に到達しました!」


 俺たちは現状到達している最高階層にまで到達した。

 ここから先は次階層に繋がるゲートの位置がマッピングされていないため、自力での探索になる。


 一般人:ようやくか

 一般人:待ってました

 一般人:未到達階層に行けるのか?

 元メンバー:余裕です

 一般人:↑期待しときます

 香月りか:無理しないでくださいね?

 一般人:↑りかちゃん優しい


 コメント欄は当然のように盛り上がり、このタイミングで接続が10000を超えた。 

 未到達階層への挑戦ということで、拡散されているのかもしれない。


「それじゃ、攻略始めま~す!」


 久しぶりの本格的なダンジョン攻略ということで、コメント欄と同じく俺も相当テンションが上がっている。

 他のメンバーも心なしか気合が入っているように見える。


 気付けば、当初の目的である憂さ晴らしはとっくに終わってしまっていて。

 今では憂さ晴らし配信とは名ばかりの配信となっていた。


 未攻略階層の探索は、攻略済み階層とは違う。

 マッピングされていないゲートが簡単に見つかることもあれば、そうでないこともある。

 加えて未攻略階層にはゲートを守る門番、RPG風にいえばフロアボスがいる。

 ゲートの探索に加えてフロアボスの討伐と、攻略済み階層に掛かる時間とは比にならない時間を要することになる。


 まずはフロア内の魔物の強さを確認し、単独で行動して問題ないと判断すると、俺たちは散開してゲートを探す。


 一般人:急に静かになった

 一般人:これが本当の探索か

 元メンバー:これは皆本気だわ

 元メンバー:この階層になると普通ソロでは探索しない

 一般人:緊張感あるな

 初級探索者:勉強になります


 必然的に会話がなくなり配信の方が心配になるが、真剣な攻略に対する好意的なコメントが目立つ。

 先ほどまでの高いテンションと今の緊張感とのギャップが良かったのかもしれない。

 ソロで探索を始めて一時間弱が経過し、事前に決めていた合流地点に戻る。


「どうでしたか、皆さん」

「ゲートを見つけた。フロアボスはフェンリルだな」


 状況を確認すると、牧さんがゲートを見つけたと報告をする。


「フェンリルですか」

「ああ。特段準備の必要はないが、配信のほうがな……」


 フェンリルは巨大な狼の魔物で、他のダンジョンでもフロアボスとして出現したと報告がされている。

 基本的に動きが早く、配信で戦う相手には向いていない。


 ただ、向いていないからと言って配信を止めていい理由にはならない。


「配信の方は俺が――」

「今回は私がやるわ」

「宮辻さん?」


 理由を尋ねると、宮辻さんは答える。


「フェンリルが相手なら、薙刀の私じゃ相性が悪い。雅人くんが参加した方が効率が良いわ」


 やろうと思えば、宮辻さん一人でも何とかなるはずだ。

 ただ、安全性などを考えると宮辻さんの言う通り俺が戦闘に参加した方がいいのは確かだ。


「本当にいいんですか?」

「ええ。投げ銭だってもらったしね」


 もちろん今のは冗談だろう。

 俺は宮辻さんの好意に感謝してカメラを手渡す。


 一般人:宮辻さんありがとう(1000円)

 元メンバー:安全第一(10000円)

 一般人:↑いざとならったら配信切ってください

 一般人:↑ガチでお願いします

 香月りか:皆さん、頑張ってください!


 香月さんを含め視聴者からのエールも受け取り、俺たちは牧さんの案内の下、ゲートの位置まで向かう。

 10メートルほどの大きさの閉じられた両開きの扉、ゲートが見えてくる。閉じているのが未攻略階層の証でもある。

 そしてゲートの前には牧さんから報告が合った通り、全身を灰色の毛で覆われた青い瞳の大狼が陣取っている。

 大きさは炎竜より二回りほど小さいが、向けられる殺気は炎竜の比ではない。


「それじゃ、皆。いってらっしゃい」

「行ってきます」

「戦いたくなったら参加してもいいからな。どこかの雅人くんみたいに」

「おじさん、頑張っちゃうよ~」


 宮辻さんに見送られる形で、俺たちはフェンリルへ攻撃を仕掛けた。そして5分後――


「意外とあっさり終わったな」

「ですね」

「おじさんの出番、あんまりなかったな~」


 俺たちはあっさりとフェンリルを倒した。

 

 一般人:この人たちヤバい

 一般人:牧さんの無双がヤバい

 元メンバー:初めて幹部の本気の戦い見た


 コメントにある通り、牧さんの無双状態だった。

 俺は牧さんが攻撃に専念できるようにフェンリルの注意を惹き、木戸さんは宮辻さんの方にフェンリルが行かないように陣取っていただけ。

 牧さん以外はほぼ何もしていないといっていい戦闘だった。


 一般人:フェンリルと炎竜ってどっちが強いの?

 元メンバー:↑フェンリルの方が上

 元メンバー:フェンリルは動きが速いから攻撃当てるのに苦労する

 一般人:牧さん一回も攻撃外してなくね?

 一般人:さすがは若手部隊の代表

 初級探索者:凄すぎて参考にならない

 一般人:↑本当それな


 コメント欄はすっかり牧さんへの高評価一色だ。

 俺としては悔しいが、視聴者が満足してくれたのなら良かった。


「それじゃ、そろそろ――」

「待って、雅人くん」

「どうしたんですか、木戸さん」


 配信としてキリが良いと判断した俺に、木戸さんが待ったをかける。


「おじさん。これは面白くないな」

「木戸さん?」

「雅人くん。木戸さんは自分の見せ場が欲しいのよ」


 宮辻さんの言う通り、今回の配信で木戸さんの見せ場は殆どなかった。

 個別の戦闘を見せたりしたので、全くなかったわけではないが、視聴者が持つ木戸さんの印象は依然として変わらない。


 一般人:色々たまってるおじさん

 一般人:さすがに可哀そうw


「雅人くん。たまってるおじさんのままで終わりたくないよ~」

「――っ、そ、そうですよね~」


 俺が牧さんと宮辻さんを見ると、二人とも両手を上げる。


「木戸さんの意思を無視するわけにはいかねえな」

「ええ。雅人くん」


 木戸さんはALLの創設者でもある。彼の意向には誰も逆らえない。


「分かりました。では――」


 本当にいいのかと思いつつ、俺は視聴者に向けて告げる。


「それじゃ、未到達階層攻略継続しま~す」


 不意に同時接続数を見てみると、20000を超えていた。

 どうやら需要はまだまだあるらしい。


 香月りか:皆さん、本当に無理しないでくださいね?


 ごめんなさい香月さん。こうなったら皆止まれないんですよ。

 今回の流れに繋がる提案をした香月さんは気が気でないかもしれないが、許して欲しいと内心謝罪をして、俺たちは攻略を再開した。

 

  


 

 


 

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