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推しが引退して解散したサークルの元メンバーがダンジョンで憂さ晴らし配信するようです  作者: 9bumi
2章 コラボ配信

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12/30

第12話 調教と成長

 香月さんとの憂さ晴らし体験が終わってから半月後。


「それじゃ、元ALL幹部さんたちとのコラボ配信企画最終回を始めます!」


 池袋のダンジョンで、俺の隣に立つ香月さんが視聴者に向けて元気よく挨拶した。


 香月さんの立てた目標の助けになればと、コラボ配信のテーマは『憂さ晴らし配信への道』ということに決まった。

 内容は俺たち幹部4人からそれぞれコーチングを受け、ダンジョン攻略の技術を向上させるというものだ。

 順番はみんなのスケジュールで都合の良い日を割り当てた結果、俺が最後という形になった。


「今回のゲストは皆さんご存じの通り、学生部隊元リーダーの野田雅人さんです!」

「よろしくお願いしま~す」


 元気よく香月さんが紹介してくれるのに対して、俺はいつも通り気だるげに視聴者へ向かって挨拶する。


 りかファン:出たな野田

 りかファン:りかちゃんに唾つけるなよ?

 りかファン:年齢が一番近いから要警戒

 りかファン:↑本当それ


 なんか最初から印象悪いんだが……

 他のメンバーの配信も見たが、少なくともこんな反応ではなかった。


 まあ、りかファンたちの気持ちはすごい分かる。

 アイラが同年代と共演、それこそ瀬ノ内アキラとドラマで共演した時は同じことを思ったし、実際それが結局アイラの引退に繋がってしまった。

 

 視聴者への理解を示しつつ同時接続を見ると、約80000。

 他のメンバーの時より20000ほど少ない。


「俺って本当に人気ないんだな……」


 ぼそっと呟くと、それが聞こえていたのか香月さんが表情を曇らせた。


「皆、それはないと思います」

「香月さん……?」


 突然、香月さんがカメラに向かって文句を言い始める。

 

 俺はとっさに香月さんの専属カメラマンである佐東栞帆さんに視線を向けるが、彼女はむしろニコニコしている。


「野田さんはAランク探索者さんで、忙しい中、来てくださっているんです。そんな方に呼び捨てしたり、間男扱いしたりして、失礼にも程があります!」

「ま、間男……っ」


 しっかりしたお説教を視聴者に向けてする香月さん。

 心配になってコメント欄を確認する。


 りかファン:俺たちが間違ってました!

 りかファン:りかちゃんの言う通りでした!

 りかファン:野田 → 雅人 に変更します!


 おお……っ!

 視聴者に説教など、炎上必須行為なのに、炎上どころか視聴者が反省している。


 改めて佐東さんの方を見ると、俺に向かってサムズアップ。

 どうやら、香月さんの配信ではこんなやり取りが日常らしい。


「野田さん。私の視聴者がすみません」

「いや、そんな……」


 俺に向かって頭を下げる香月さん。

 その光景にコメント欄が慌ただしくなる。

 

 りかファン:りかちゃんが頭下げてるじゃないか!

 りかファン:雅人馬鹿にしたやつ即謝罪

 りかファン:すみませんでした!

 りかファン:すんません

 りかファン: orz


 すごいな……


 少なくとも、憂さ晴らし配信でこんな盛り上がり方はしない。

 何だか少しだけ、羨ましく感じてしまう。

 

「香月さん、頭を上げてください。今回は、普段から舐められてる俺の責任でもありますから」

「野田さん……」

「俺も香月さんみたいに、ファンを調教できるように頑張ります」

「はい……って、ちょ、調教って何ですか……っ!」


 慌てふためく香月さんに、コメント欄はさらに大盛り上がり。


 りかファン:焦ったりかちゃん可愛い

 りかファン:雅人、今のは良かった

 りかファン:雅人への評価+10

 りかファン:雅人、この調子で頼む


 よく分からないが、急に俺の株が上がった。


「アイスブレイクも済んだことですし、そろそろ攻略始めますか」

「はい……」


 俺の提案に、顔を赤くしたまま香月さんは小さく頷くのだった。


         ※※※


 結論からいうと、香月さんはすごく成長していた。


 りかファン:りかちゃんヤバいw

 りかファン:コラボ配信前と比べ物にならんw

 りかファン:↑廃人ドルオタのせいw


 配信開始から約2時間後。


 トカゲとワニを合わせたようなアースドラゴン(Bランク相当)を一人で倒した香月さんに、コメント欄は大騒ぎだ。


 りかファン:雅人、りかちゃん今何ランク?


 さすがにSランクまではいかないけど、少なくともAランク相当の実力はついたのではないだろうか。

 正直、この短期間でここまでの成長、脅威的な成長速度としか言えない。


「香月さん。お疲れ様」

「ありがとうございます。野田さんのおかげでまた強くなれました!」


 クールな見た目に反して、無邪気に笑う香月さん。

 生アイラで美女慣れしてなかったら、絶対に惚れていた。


「それでは、キリが良いのでそろそろ配信は終了しようと思います!」


 今回の配信は、現在香月さんが到達している50階層から55階層までの攻略が目標になっており、今はちょうど55階層を踏破したところだった。


 りかファン:もう終わりか

 りかファン:今回も楽しかったです

 りかファン:雅人、今度配信見に行くわ

 りかファン:雅人、色々ガンバ


 何だかんだあったが、最終的にりかファンとも仲良くなれた。

 次回の憂さ晴らし配信の予定は未定だが、機会があったら是非見て欲しい。

 

 配信を締める前に軽くコメントした後、最後に香月さんがお礼を言って、配信は無事に終了した。


「いや~、今回も良い絵が取れたよ。帰ったらすぐに編集して切り抜き出すね」

「ありがとう栞帆。今回もよろしくね」

「任せて! それと野田さん、私からもありがとうございました」

「いえ。俺は別に大したことは何も」

「それでも、です。御礼に今度、配信のデータ送ってください。編集するんで!」

「本当ですか、それなら是非!」


 佐東さんの言葉に、喜んで俺は頷く。

 憂さ晴らし配信は俺たちが全員それなりに忙しいこともあり、アーカイブを残しているだけの状態だった。

 良い感じに編集してくれるというなら、断る理由はない。


「それじゃ私はこの辺で失礼します。野田さん、りかが話したいことがあるそうなので、もう少しだけ付き合ってあげてください!」


 最後にそう言い残すと、佐東さんは一足先にポータルでダンジョンを後にする。

 

「それで、香月さん。話って……?」


 尋ねると、香月さんは少しだけ恥ずかしそうな素振りを見せながら答える。


「よろしければ、この後少しだけ攻略の続きに付き合って頂いても良いですか? 今の感覚を忘れたくなくて……」


 香月さんのお願いに、俺は一瞬だけ思考が止まる。

 

 この世にはダンジョンデートなるものが存在する。

 その名の通り、ダンジョンで男女が二人で攻略を楽しむというものだ。

 そして当然、俺の過去にそんな経験はない。


 無論、香月さんが俺に気があるなどあり得ない。

 それは分かっているが……


「分かりました。俺でよければ付き合いますよ」


 こんなの期待するなという方が無理がある。


「……っ、ありがとうございます!」

「それじゃ、早速始めようか」

「はい……っ!」


 こうして、俺は香月さんと二人でダンジョン攻略(ダンジョンデート?)を始めるのだった。

 



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