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推しが引退して解散したサークルの元メンバーがダンジョンで憂さ晴らし配信するようです  作者: 9bumi
2章 コラボ配信

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第11話 目標

 ボアレースはついに最終局面に入り、残すはあと一周。


 俺は着実にレースを進め、ウリ何某と一緒に僅差の2位につけている。

 これなら最後の最後で逆転勝ちが望める形だが、想定ならすでに首位を奪っているはずだった。


 ここまで苦戦を強いられている理由は、間違いなく香月さんだ。

 最初こそ展開についていくことに必死だったのが、今は自然な感じでレースに興じているように見える。

 序盤は確実に距離を詰められていたのが、動きに無駄がなくなっていくにつれて詰められる距離が少なくなっていった。


 そして、最終一つ前のコーナーを抜けた直線で、ついに俺は首位に立つ。

 だが、不思議と嫌な気がしてならない。

 一つだけ分かるのは、後ろにつく宮辻さんと香月さんの雰囲気が変わり、何かをしかけようとしていることだけ。

 

 仕掛けるとすれば、間違いなくゴール前の最終コーナー。

 ただ、結局最後までそれが分からないまま、最終コーナー手前に差し掛かってしまった。

 こうなった以上、俺は最適ななコーナリングを実現するために速度を落とす。

 

 そのタイミングで宮辻さんたちが前に出た。

 向こうは減速力が高いので、この展開は必然だ。


 しかし、今まで減速していたタイミングで、二人は減速しなかった。

 あれでは、的確なコーナリングは実現できず、コーナーを大回りしてしまうことになる。

 どうやら、最後の最後でミスったようだ。


 これは俺の勝ちだと、そう確信した瞬間だった。


「嘘だろ。おい……っ!」


 前を走る虎介が、今までにない減速を見せ、見事にコーナーをクリアしていた。

 どうして、今のような芸当ができるのか。

 理由は明らかだった。


「これは完全にやられたな……」


 今までは宮辻さんだけで速度の調節をしていて、香月さんはただ減速力を上げるための重りみたいなものだった。

 それが先ほどは、宮辻さんと一緒に速度調整に加わることで、さらに減速力を上げることに貢献したのだ。


「最後の最後でやってくれたな……」


 猪の速度調節は簡単にできるものではない。

 それをぶっつけ本番でやって見せるとは、流石としか言いようがない。


「完敗だよ。香月さん」


 コーナで想定より開いてしまった差を埋める手段はない。

 この時点で、勝負は完全に決するのだった。


         ※※※


 完全に一か八かだった。

 最初に真己乃から作戦を聞かされた時、できる自信はなかった。

 しかし、りかは見事やってのけた。


「やったわね。りかちゃん!」

「はい……っ!」


 全身に血流が巡り、興奮で鼓動が収まらない。

 りかは冗談抜きに、今まで一番の高揚感を覚えていた。

 そして、ゴールにトップで入った瞬間だった。


「あれ……っ?」


 突然、宙に投げ出され、浮遊感を覚えて下を見てみると、虎介が魔鉱石へと変わっていた。

 最後の最後で無理をさせたことが原因だった。


 大仕事をやり遂げ緊張感が消えていたこともあり、咄嗟に身体が動かない。

 

(あれ、私このまま……っ)


 魔力で身体能力が強化されている探索者といえど、勢いよく地面に落ちれば大けがをする。


 定まらない思考で周囲を見ると、真己乃が手を伸ばしてる。

 あの手を取れば、助かる。それは分かるのに、やはり身体が動かない。


 何もできないまま、りかは地面へ落下していく。そして――


「ま、間に合った……っ」


 落下寸前のタイミングで、りかはウリ何某に乗った雅人に抱きかかえられる。

 それで、本当に糸が切れたのだろう、スッとりかは意識を失うのだった。


         ※※※


 りかが目を覚ましたのは、気を失ってから三十分後のことだった。

 

「あれ、ここは……?」

「吉祥寺支部の医務室よ」

「宮辻さん、私……」

「ごめんなさい。危険な目に合わせて」

「えっ……?」


 意識を失う間際のことをあまり覚えていないりかは、頭を下げる真己乃を前に混乱する。

 すぐに何があったのかを聞き出すと、りかは逆に頭を下げる。


「私の方こそ心配をおかけしてすみませんでした!」


 自分から憂さ晴らし配信に出たいと言い出した挙句、しっかり迷惑をかけてしまった。

 謝るのは当然自分の方だ。


 りかと真己乃が謝罪し合っていると、雅人と克哉が入って来る。

 目を覚ましたりかを見るなり、二人はすぐに謝ろうとするが、それを遮るようにりかは謝罪を繰りかえした。


 そして、謝罪の波が落ち着いたところで、雅人が尋ねる。


「まあ色々あったけど、俺たちはいつもあんな感じだからさ。香月さんには合わないと思うんだ」

「そう、ですね……」


 雅人の言う通り、今のりかは実力的に釣り合っていない。

 新進気鋭、天才と一部から呼ばれるとはいえ、やはり経験値はまだ足りていなかった。

 これで仮に憂さ晴らし配信に同行すれば、今回のように迷惑をまたかけてしまうだろう。

 そんなことは、当然あってはならない。だが――


「私、強くなります」


 ボアレースの最終番、あの瞬間はりかの人生で最も充実した瞬間だった。

 雅人たちと一緒にいられれば、きっと同じような瞬間に何度も巡り合えるような気がする。

 だから、りかはより強くなりたいと願う。そして――


「私、また皆さんと一緒に探索がしたいです」


 それが、りかにできた新しい目標だった。


「なので、これからコラボ配信でしっかり鍛えてください! よろしくお願いします!」


 純粋な眼差しを向けられた雅人たちは、仕方ないなと笑顔で頷いた。


 これが後に、日本屈指の美少女Sランク探索者の誕生につながるのは、また別の話。


 

 

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