68話 最高のコンビネーション
「闇光死斬」
「光闇死斬!」
青春と黄緑の必殺技が同時に上空から放たれる。四鬼は受けて立つ覚悟。
両手を強く振るい、身を引き裂くほど強力な烈風を生み出し、二人にぶつける。
二人は剣を前にだし、烈風を切り裂く。
青春の持つ長刀ナイフ、これは黄緑が生成したものだった。
金属性固有能力、武器の生成。青春の能力によるものではなかった。
四鬼の属性は木。金には相性が悪い。さらに青春の最大の技が剣に伝わってるのだ。たかが烈風程度で抑えられるほどの威力ではない。
ならばと四鬼は更なる行動に出た。
四鬼の皮膚から女性の顔が浮かんでくる。前に四鬼が青春達に見せた女性……
そう、青春の姉、春火だった。
この瞬間青春に姉、春火の記憶が舞い戻る。
……前回青春は、それで動揺してしまい、隙をつかれてやられてしまった……
「同じ手に引っ掛かるかあ!」
青春は強い意思を持ち、切りかかる。
「青くん……」
姉、春火の苦しそうな声が聞こえる。
騙されるな。あれは四鬼が姉の顔と声を使って隙を作ろうとしてるだけだ。そう青春は思い、ナイフを振るう。
「旋風壁」
四鬼は凄まじい風圧を引き起こす。それにより、青春と黄緑は腕を動かせなくなる。圧力で物理的に技を止めにきたのだ。
だがそれでも青春と黄緑の必殺技。振る事もなく、ただそこに魔力がある……それだけで風圧が切り裂かれて、少しずつ消えていく。
黄緑の金属性魔力のおかげかもしれない。
風圧のせいで宙に浮いたままの二人を見て、笑みを浮かべる四鬼。
「いいのかなあ? この……お前の姉? 切っちゃっていいのかなあ?」
憎たらしい笑み……青春の腸は煮えくり返りそうになる。
「いいも何も! 姉さんは死んでるんだ! 姉さんの顔を切るのは心苦しいが仕方ないこと!」
「死んでるなんて言ったっけ?」
「なに……?」
死んでると言ってない? ではなにか? 春火は生きてるのか? 青春は逡巡するが、これは四鬼の企みだと、頭を振る。
四鬼に喰われた者は人々の記憶からも消え去る。そんな事になったのに、喰われたものが生きてるだなんてありえない。
これは奴が自分を翻弄するために嘘を言ってるだけだと。
「あれえ? 信じてないの? いいの? 姉を切ったら復活は不可能だよ?」
「あ、青……くん、あたしは、いい……から、こいつを……」
春火は自らの命をかえりみず、四鬼を倒せと言う。
青春は姉の記憶を取り戻したため、彼女がどんな女性か思い出している。
姉なら……こう言う。青春はそう思った。
だが、四鬼は喰った相手の記憶や性格を熟知して、あたかも姉がしゃべってるように見せかけてるだけではないかと思う。いやむしろその可能性のほうが高いだろう。
――でも。
「青くん、ワタシに任せて」
黄緑が動く。四鬼の風を切り裂き、技を放つ!
「うわ、マジかよこいつ。人でなしだねえ」
四鬼はドン引きしつつ、春火の顔が浮かんでる腕を向ける。春火を切らせるために。
「いいの? お義姉さん切ったら記憶はまた消えるはず。つまり、青くんに対する弱点は消えるわよ?」
と、黄緑はらしくなく、駆け引きをする。
同じ手にはかからないとは言いつつも、青春はまだ子供。姉が生きてる可能性を知れば、四鬼への攻撃頻度が下がる、もしくは隙を作ってしまうかもしれない。
だが黄緑にとっては他人。問答無用で切ることが可能だと四鬼もわかってるはず。
一番厄介なのは青春。黄緑相手にそのカードを壊されてしまえば、何の憂いもなく青春は四鬼と戦えてしまう。
四鬼は自らの力に自信がある。何者も自分に敵うはずなどないと。
だが青春は、妖魔神と化したヒルダと契約している。同格とは思いたくはないが、同じ妖魔神という立場。その力を持つ青春は今まで存在しなかった最大の敵なのは間違いない。
ここまで自分の攻撃を防いだ相手などいなかった。それこそが何よりの証拠。
自分の方が強い。それだけは間違いないと豪語できる。だが、青春との戦いに有利となるカードをここで捨てていいのか?
「……ちぃ」
四鬼は自らの腕に浮かんでいた春火の顔を消す。
黄緑は笑みを浮かべる。これで心置きなく、四鬼を切れるからだ。
黄緑にとっては他人でも、青春にとっては大事な姉。もし彼女を救える可能性があるというのなら、黄緑はその可能性に賭ける。
大好きな青春のために。
黄緑の剣は振るわれ、四鬼の左腕を切り裂く……が、即座に再生。
そして黄緑の首を掴んでくる。
「ぐっ!」
「調子にのるなよ小娘」
「お姉さんを離せ!」
背後からは青春。
「うざいんだよ君たち」
四鬼の全周囲から放たれる強力な烈風。持ってる剣を離してしまいそうなほどの風圧。二人まとめて吹き飛ばされて四鬼から距離をとらされてしまう。
遠距離戦になってしまっては、四鬼の独壇場となってしまう。
即座に二人は近寄ろうとしつつ……
「おらあ!」
黄緑は黄金の球を生成&全力投球。
青春はナイフを大量に出現させての投擲。おまけに黄緑の金属性魔力がナイフをおおっている。これで風圧を防ぎつつ、四鬼に一撃を加えようと思っているのだ。
「ダブル旋風剣」
四鬼は小さな竜巻を手のひらから生成し、放つ。そして続けてもう一発竜巻を放つ。
竜巻はそれぞれ黄緑と青春に投げられる。
竜巻は黄金の球を切り刻み、青春のナイフも粉々にする。それでもなお、竜巻は勢いが止まらず二人を飲み込み切り刻む!
「うあ!」「きゃあ!」
互いに血が弾け飛ぶ。その上圧力により二人の腕が曲がり折れる。
そして二つの竜巻は、青春と黄緑を捉えたまま互いに近づき……一つの大きな竜巻に変貌。それにより、青春と黄緑は同じ空間でグルグル回されながら切り刻まれていく。
「あ、あはは……あ、青くんとメリーゴーランド乗ってる……き、気分……」
こんな状況でも青春への愛を語る黄緑につい、青春は笑みをこぼす。
「よ、余裕だねお姉さん……」
「だって、青くんと一緒なら……楽し……」
黄緑の表情が青ざめる。そして頬を膨らませて……
「お、オエエエエエエエ」
……黄緑はグルグル回されてる事で気持ち悪くなり、嘔吐した。
「うわ! 気持ち悪!」
嘔吐物が風と共に回り飛び散る事で、四鬼はつい竜巻を解除してしまう。
さすがの妖魔神も嘔吐物をくらいたくはなかったようだ。
「……しめた!」
黄緑はその瞬間青春を担ぎ、四鬼へと突撃する。
「は!? まさかわざと?」
「わざとゲロ吐けるわけないっしょ!」
黄緑は青春の足に手を添える。
四鬼はすぐさま迎撃体勢を取り……
「旋風剣!」
またもやあの竜巻を黄緑目掛けて放つ……が!
黄緑はその前に青春を勢いよく四鬼に向けて投げる。青春は竜巻に直撃せずに、四鬼の目の前に!
「しま……」
「闇光死斬」
青春の剣撃が四鬼の左腕を切り裂く。そしてそのまま四鬼の心臓目掛けてナイフを……
突き刺す!
「ゴハッ!」
「このまま……死ね!」
青春は刺したナイフから魔力を注ぎ、四鬼を内部から破壊しようと企む。
「……いいの? 小娘死ぬよ?」
「え」
青春は黄緑へ視線を動かしてしまう。
先ほどの旋風剣、青春にこそ当たらなかったが……
青春を投げた黄緑に直撃していた。
黄緑は竜巻に切り刻まれ、致死量レベルの血を流しながら、竜巻にとらわれ続けていた。
痛みで苦しく、声をあげたいはず。だが黄緑は青春がこちらに意識を向けないように、声を出さないでいたのだ。
……おそらく放っておけば……
黄緑は死ぬ。
青春は、四鬼を倒すチャンスのために、黄緑を見捨てる覚悟を……
もてなかった!
青春は逡巡せずに、ナイフを離して黄緑の元に戻る。
「お姉さん!」
もう、実の姉のように、誰かを……大事な人を失いたくなかったから。
「バカだよね。本当に!」
四鬼はそんな青春目掛けて……旋風剣を放った。
――つづく。
「愛、これは愛。愛されてごめんなさいねえ~ゲヘゲヘ」
「次回 誰も失わずに……勝ちたい。青くんのためなら死ねるけど、青くんの望みは叶えなきゃね!」




