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66話  冬黒対赤里

(赤里さん……?)


 明らかに様子が変わった秋葉。


 三蛟が水と化して秋葉の中に侵入し、様子が変わった……


 この事から察するに秋葉は三蛟により、乗っ取られてしまったのではないかと推測できていた。


 秋葉はゆらゆらと揺れるように動きながら……


 冬黒に向かって一直線で走りだした!

 今の空間は水中内として扱われている。なのに地上を走るかのように、全く水の負荷を感じさせないように動く秋葉。


(さっきまでの赤里さんの動きではない! となるとやはり、三蛟か!)


 冬黒は水中内ゆえに、まともな回避行動がとれない。

 ならばと、冬黒は前方に光のレーザーを放つ。

 攻撃は最大の防御。攻めて攻めて攻めまくることで、相手が攻撃できないようにするまで……


 秋葉は人間離れしたようなくねくねした動きでレーザーを見事に回避。冬黒も続けざまにレーザーを連射する。自分に近寄ってこれないように……


「ぬるいぬるい」


 秋葉はそれら全てを容易に回避していく……


 冬黒のレーザーの速度は並みではない。音速を越える速度だ。

 本来の秋葉の身体能力では、冬黒のレーザーを避けるどころか、目で捉えることすらできない。


 三蛟が操ることにより、本来の秋葉を上回る身体能力をみせられているわけだ。

 だが本来できない動き……そんな事を何度も何度も行えば……

 

 体に負担もかかるというもの。


「――!」


 秋葉の体が軋み、血が吹き出す。

 そもそも三蛟の攻撃により、秋葉は元々大怪我をしていた。その状態で本来できない人間離れした動きなんてさせられれば、当然体にガタがくるのも当然のことだ。


 だが三蛟から言わせれば、秋葉がどうなろうと知ったことではない。だから無理して動かそうが何も問題はないのだ。

 ――その上……


 無理した動きをすることで、血が吹き出し、秋葉の能力をさらに引き出す事ができる。


 そして、仲間の秋葉に冬黒は傷をつけることはできない。三蛟はそう思い、彼女の体を奪ったのだ。


(レーザー攻撃はしてきているが、どれも狙いが甘い……やはり仲間は傷つけられんよなあ?)


 と、思っていたら……


 三蛟の顔面にレーザーが掠めた。さっき以上の速度で。


「な、に?」


 動揺する三蛟をよそに、冬黒は周囲の水を吹き飛ばすために、光の光球を放つ。光球は弾け、輝く光の雫となって周囲の水空間は消え去る。


 そうする事で、呼吸を整え……口を開く。


「赤里さんを傷つけられない……なんて思ってましたか? 甘いんですよ」

「き、貴様……仲間を容赦なく殺せるとでも言う気か!?」

「必要ならば」

「ふ、ふざけてるのか!?」

「ふざけてなんて……」


 冬黒は光球を再び生成させ……


「いませんよ!」


 放つ!


「ちい!」


 三蛟は舌打ちした後、回避行動をとる。冬黒はすかさず連続で光球を連発する。秋葉がどうなろうが知ったことがない。そう言いたいかのように攻撃を続ける。


「貴様! 頭おかしいのか!」

「赤里さんを盾に使ってる奴に、どうこう言われたくはないですね」


 正論を述べた後、放った光球は弾け、細かい粒子となって三蛟を襲う。

 あまりの量に、回避は不可能。


 マシンガンで撃ち抜かれるかのように、粒子が三蛟を貫いていく。


「ぬぐっ……あ、甘いぞ……」

「?」

「この小娘ごと吾輩を殺すつもりなら甘いって話なんだよ」

「ほう。あれですか? その瞬間赤里さんから逃げ出すからとか?」

「さあてどうだろうな」

「でも、それならおびき寄せる事はできるから、無駄にはならないでしょ?」

「貴様正気か!?」

「もちろん」


 まさか妖魔に正気か問われるとは、冬黒も思ってなかった。

 

 悪人がよくやるような人質作戦、誰が相手でも成功すると思ったら大間違いだと、冬黒は身をもって教えてやったまで。

 

「赤里さん、死にたくないなら自力でそいつ追い出してくださいね」


 でないと一緒に殺してしまいますよと脅す。この言葉が秋葉に届いてるか否かで変わってくる。


 すると血が……グルグルと三蛟の周りを取り囲む。そして……


「なに!?」


 三蛟に向かって血液が襲いかかってくる。針のように尖らせてあるため、串刺しにしてくるかのように。


「やはり、意識というか、赤里さんは自分の声が聞こえてる見たいですね。当然か。中に侵入し、体の自由を奪って操ってるわけですからね。洗脳とかではない」

「くっ……まさか吾輩の支配から抗おうとするとは……!」


 血液は三蛟を串刺しにする。それにより、さらに体から血液が大量に流れ出す。


「がはっ! この小娘! 自分に攻撃するとは正気か!? 小僧といい、頭のおかしいガキ共め!」

「頭おかしくないと、妖魔退治なんてまともにできないんですよ」


 秋葉はおそらく、自分をズタズタにすることで三蛟を自分の体から追い出そうと企んでるのだろう。


「ならば、この体が動けなくなる前に、貴様を始末する!」


 三蛟はまたも血液を操る。秋葉が操れてるのはせいぜい三割か四割。だがさらに血液が流れた事により、三蛟の操れる血液量もまた増えた。


「死ね!」


 津波のような血流を全身から放出! その上血液の弾丸が同時に放たれていく。


 冬黒は発光し、防御体制をとるが……

 

 ――背後から貫かれる。


「な、に……?」


 貫いているのは血の刃。出どころは地面。地中と地面からも血は流れ進み、冬黒の視界外から襲ってきたのだ。


 その不意討ちにより、隙だらけになった冬黒を、逃しはしなかった……


貫血泉ブラッディゲイザー


 地面から吹き出す、血の間欠泉。それは冬黒を飲み込み、貫く……

 さらに内部に突き刺さった血も弾け……


 冬黒は全身串刺し状態……

 どう考えても、生きていられないほど、体が貫かれていた……


「く、クフフフフ! 後は小娘から抜け出し、小娘も始末すればいいだけだな」


 秋葉の体は三蛟が無理やり動かしていたようなもの。そんな奴が体から抜け出せば、秋葉は当然痛みやらで動くことができない。そうなればいい的だ。容易に殺されてしまうかもしれない。


 冬黒は全身から出血し、氷のように固まった血の上でぶら下がって動かない……


 ――万事休す。


 秋葉の体から、ドロリと体液のようなものが浮かぶと、それは地面に落ちる。

 体液はゆっくりと人の形を作り上げる。


 無論その姿は三蛟。


 秋葉は突然地面に崩れ落ちる。三蛟の無理な動きと今までのダメージが大きすぎたからだ。


「ぐっ……う」

「ふふん。後は貴様を始末すれば」


 不適に笑う三蛟……だったが、


 ――突如、全身を何かが貫いた。


「がはっ!!」


 全身から血が吹き出し、倒れそうになるも踏みとどまる。


 一体なにが? そう思い振り返る……


 視界が捉えたのは、固まった血に貫かれたままの冬黒……

 彼はニヤリと、口元から血を流しながら微笑んでいた。


「ふ、フフ……ついに出てきましたね」

「な、にい?」

「自分が死ねば、赤里さんの中に居座る理由ないですからね……」

「貴様、だからわざと攻撃をくらい、死を……装ったと……いうのか……?」


 こくりと頷く。

 冬黒は秋葉もろとも殺そうとした。ゆえに、人質作戦は意味がないと三蛟に思わせた。だからこそ、串刺しになって倒れたのが演技だなんて思いもよらなかった。

 いや、串刺し事態は本当。ただ死んではいなかっただけで。


 一歩間違えば死んでたかもしれない。だが冬黒は今この瞬間、秋葉から三蛟が出てくる事を狙って身を犠牲にしたのだ。


「ぐ、くそ!」


 三蛟はまた液体になって秋葉に戻ろうとするが――


「終わりですよ……魔光天輪!」


 冬黒の奥義が放たれる。

 

 三蛟は自らの能力で冬黒の動きが鈍くなってると思っていたのだが……


 放たれた光の粒子は水の抵抗をものともせず、三蛟を切り刻み、焼いていく……


「な、なにいい!?」

五光世界シャイニングワールド。悪いですが、今この場は自分の光の空間術の中なんですよ。気づかなかったでしょ?」


 光の粒子、刃は熱をもち、液体の三蛟を気体へと燃焼していく……


「体が液体で攻撃を受け流せるとしても、気化されたら……どうしようもないですよね」

「ぐ、ぎゃああああ! ば、バカな、吾輩が、妖魔王たる吾輩があ!」


 三蛟の体は蒸発していき……


 ただの水蒸気へと変貌し……


 消滅した。





 ――つづく。





「おめ~後はワタシたちにお任せだね! さて、愛の二人が悪を滅する!」


「次回 決戦の火蓋、あがる。さあ~頑張ろうね青くん!」

 


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