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64話  決戦の日、来る

「……と、まあそういう事なんで、頼みますよ元・総理」

「は……い」


 ――総理官邸。

 そこに堂々と入り、歓迎されている四鬼。

 

 現総理大臣の笠村。彼は解散宣言をし、総理の座を降りた。四鬼の命によって。

 総理の笠村は都民。四鬼の能力により、完全に洗脳されているからだ。


 国会議員からの推薦もあり、四鬼は総裁選への立候補権利を得ていた。議員もまた都民だからだ。


 こうなれば出来レースも同然。総裁選が始まれば四鬼の総理当選は確実。そうなると、四鬼に日本が完全に乗っ取られる事を意味する……


「四鬼様、日本を手中におさめたらどうなさるおつもりで?」


 配下の妖魔王、三蛟が膝をつきながら聞いてきた。

 四鬼は天を見上げながら首をかしげる。


「そうだねえ……暇潰しに近いから、特に考えてないね」

「でしたら余興として日本を軍事国家に変えたり、外国諸国に戦争を起こしたりして遊んでみたらどうです?」

「ああ~それもいいね。なんなら他の国の大統領選とかに出てもいい。人間界全てを手中におさめるのも面白そうだ」


 四鬼にとって、日本を手中におさめるのは遊びの範疇。野望があるわけではない。

 

 四鬼は退屈を嫌う。それゆえに、常に何か面白い事を探している。そうして思いついたのが、日本を手中におさめることだった。

 実際四鬼は今楽しんでいる。さらに楽しむために、洗脳した人間達に何をさせるつもりかわかったものではない。

 今言ったように戦争を起こさせたり、集団自殺などもさせるかもしれない。


 この妖魔をほうっておいたら……


 人間全てが、滅ぼされてしまうことだろう……


「総裁選は……すでに始まってるんだよね?」


 四鬼が問うと、三蛟は頷く。


「はいすでに。四鬼様に票は集中しておりますし、明日にでも結果を発表できることかと思います」

「なんか周りをうろちょろしてる連中もいたけどさ、まさか内密に、すでに総裁選が始まってるとは思ってなかったろうね」


 テレビでもまったく総裁選についての報道はない。明日、突然新総理が発表される手筈となっている。

 前代未聞なことだが、あらゆる人物をいのままにしている四鬼にとってはその程度の事、造作もない。


「明日、我らの邪魔を企む人間共は驚きを隠せないでしょうね……作戦を練る暇もなく、すでに戦いは明日終わってしまうのですから……クフフ」


 四鬼が総理になった時点で、日本に住む人間全ては奴の手中に落ちる。青春も黄緑も……

 そうなれば戦わずして、四鬼の勝利になる……


「ま、それもそれでつまらないけどね」


 暇潰しで行動してる四鬼としては、なんのイベントもなく、すんなり日本を手に入れられてもそれはそれでつまらないようだ。

 全てゲーム感覚の妖魔らしい発言。


 四鬼は自分の強さに絶対的な自信がある。ゆえに、邪魔者が来るなら返り討ちにすればいいと思ってるのも大きい。


「四鬼様、ですが邪魔者が現れたら万が一が……」

「お前はオレが負けるとでも言いたいのかい?」


 不適に笑う。


 妖魔には階級がある。

 スライムのような低級妖魔。

 人の言葉をちゃんと話せる中級妖魔。

 妖魔を束ねる力を持つ大型妖魔。青春が前に倒したサイクロプスなどがそう。


 そして大型妖魔すら束ね、極少数のみしかいないと言われる妖魔の王、妖魔王。

 妖魔王は一兎、二鳥、三蛟の三体しか確認されてない。

 青春の相棒、ヒルダがその領域につこうとしているが。


 そんな妖魔王を束ねる妖魔の中の妖魔……妖魔神……

 今現在、妖魔神は四鬼のみ。唯一の妖魔神。戦闘力は規格外。人間などに負けることは……ありえない。少なくとも、三蛟はそう思っている。


「四鬼様の敗北は考えられません」

「ならいいじゃない」


 万が一の事を考えてください。……などとは恐れ多くて言えない。ここは素直に言うことを聞くしか三蛟にはなかった。


 だが、なにか青春達がなにか仕掛けてくるなら……自分が積極的に動くしかないと考えていた。


「さあて。オレは一眠りでもするとするよ」

「はい。おやすみなさいませ」


 四鬼は総理官邸の、総理の部屋にあくびをしながら入っていった。


「さて……念のため警備でもするとするか」


 三蛟は少数の妖魔を連れ外に出る。すでに夜は更けている……


「「今だ!」」


 何者かの声がした瞬間、総理官邸から光の柱が次々と建っていく。柱に囲まれた総理官邸は、牢屋内に入れられたかのような形になり、館内には入れなくなった。

 つまり、三蛟達は孤立無援状態に陥った。


「敵襲か?」

「「ご名答」」


 妖魔達の前に現れたのは……


 冬黒に秋葉、それに組織の者達の姿だった。青春と黄緑の姿はない。


「貴様、確か二鳥を殺ったとかいう噂の……」

「冬黒光李。あなたを仕留める者の名前です。よく覚えていてください」


 不適に笑って挑発する冬黒。

 配下の妖魔達は憤慨してるも、三蛟の表情は涼しげ。

 

 同じ妖魔王を単独で仕留めた男……それゆえに、かなり警戒しているようだった。


「自分と赤里さんで妖魔王を殺ります。他の皆さんは配下の妖魔を」

「大丈夫なのかい冬黒?」


 同じく来ていた尾浜が問うも、冬黒は頷く。


「どちらにせよ、闇野抜きでやらねばならない戦い……二人でかかれるだけマシですからね」

「まあおいら達では足手まといか。頼むよ」

「ええ。そちらも」


 尾浜達部隊は散る。すると配下の妖魔達もそちらに向かいだし、この場には冬黒と秋葉、それと三蛟だけが残された。


「簡単に思惑通り動いてくれるんですね」


 配下を離れさせ、一人になった三蛟に聞いた。実際尾浜達に攻撃させて、分断させようと思っていたのだが、勝手に分断してくれたので拍子抜けしていた。


「二鳥を倒すほどの男……仕留めれば妖魔王最強は吾輩と決まる。となれば、四鬼様の片腕の座は決まったも同然だからな」

「どちらにせよ妖魔王はあなただけでは? 消去法で片腕はあなた……」

「消去法では意味がないのだよ。吾輩が! 四鬼様の! 完全なる! 忠実な片腕と! 証明する必要が! あるのだ!」


 プライドなのか、狂喜的な四鬼への忠誠なのか、正々堂々冬黒を倒すことで妖魔王最強を証明したいようだ。

 

 冬黒は秋葉と共に戦うつもりなので、むしろこちら側が卑怯になってしまう。

 だが、そんなことを言ってる場合ではない。卑怯だろうがなんだろうが、ここで三蛟を倒すことが重要なのだ。四鬼の野望を打ち砕くためには……


「行きますよ赤里さん!」

「……オッケー! で、ござる~」


 秋葉はもう一つの人格に変貌、戦闘準備は万端……いざ……


「「海円領域オール・ブルー」」


 三蛟はそう言い放った瞬間、周囲にどこからともなく海流が発生する。そのあまりの水の勢いに冬黒と秋葉の二人は飲まれてしまう。


「おぶっ!」

「が、な、なんでござ……」


 あまりに不意に現れた海流に動揺が隠せない二人。

 名前からして水を使ってくることは読めてはいた。だがあまりに急な出来事ゆえに反応する事もできなかった。


 水の中に沈む二人は三蛟が凄まじい速度で泳ぎ、近寄って来ることに気づく。二人は泳げないわけではない。だが、三蛟の速度は人間では到底出し得ない速度ゆえ、とても逃げ切れやしない。


 そして攻撃するにしても、水中ゆえの水の抵抗……攻撃の威力も速度も落ちるというもの。


 三蛟の攻撃から逃れる術はなく、二人は強く弾かれてしまう。

 

 水中ゆえに息もできない。ならばまず水上へと……そう思うも……


(ふ、深い……!? い、いや、水上が見えない……)


 沈められた海流があまりに深いのか不明だが、冬黒の目には水上が確認できなかった。


 つまり、息継ぎができない……


「さあ、この海の化身たる妖魔王三蛟の恐ろしさ……とくと味わうといい」




 ――つづく。




「海かあ……青くんとデート行く時の候補にしよ。でもワタシ達以外誰もいない海がいいなあ」


「次回 海の王 ポセイドンじゃないじゃんこいつ」



 






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