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62話  青春宅

「たのも~。……じゃなかった。あーおーくん、遊びましょ! ん? いや違うな……」


 一人青春宅の玄関外でぶつぶつ言ってる黄緑。珍しく緊張している様子だった。


「こうして見ると微笑ましく思えるでござるが騙されたらダメでござるよ」


 秋葉は冬黒に注意する。そもそも冬黒はこんなこと興味ないから、騙されるも何もないのだが。


「ところで、家に入られたらどうするんです? 陰ながら見張るとするなら中の様子は見れないわけですが」

「そんなもん窓から覗くとか、隠れて侵入するだけでござるよ」


 それは不法行為だろと冬黒は思った。


「はあ……どうしても中の様子見たいなら、闇野の母親にこそっと入れてもらえばいいでしょ」

「どうやって?」

「まあ、ギャンブルですが、母親が玄関に出てくれば、二人に気づかれないようにしてくれるかも……」

「じゃあそれで」


 適当だなこの人……と、冬黒は思った。


 玄関のドアが開くと、ヤンママみたいな容姿の女性……青春の母の姿が見えた。


「あら? 黄緑ちゃんじゃないの~上がって上がって」

「オ、おっじゃまっし、ま、す」


 声のトーンが高かったり低かったりと、ド緊張してる黄緑は滑稽そのものだった。


「しかし青春氏の母上、よくあの厚化粧で黄緑氏とわかったでござるな」

「まあ髪の色とか体格とかであの人と判別できるでしょう」

「それもそうでござるが、よく笑わずにすむでござるな」


 実際のところ、青春の母、巳春は笑いをこらえてるだけなのだが。


「と、ところで黄緑ちゃん、顔でも洗ったら?」

「何故です? 化粧取れちゃいます」

「だからとった方が……」

「え?」

「あ、なんでもないわ。青は二階にいるから。お菓子持ってくから部屋で待っててね~」


 そうして離れてく巳春。そして黄緑は……


「青くんの部屋青くんの部屋青くんの部屋青くんの部屋」


 興奮冷めやらぬ様子で階段を駆け上がっていった。


 秋葉と冬黒はワンテンポ遅れてチャイムを鳴らす。巳春がドアを開ける。


「あらどちら様?」

「かくかくしかじか!」

「よくわかんないけど二人に内緒にしとくのね」


 説明は省略。とりあえず友達と信用してもらい、二人には来たことを言わないでほしいと伝えたのだ。


 そして二人は青春の部屋のドア前に。そして耳を当て中の様子をチェックする秋葉。


 一方冬黒は隣の部屋を見ていた。


(もしかして……春火さんの?)


 部屋のドアが開いていて、中の様子が見えた。空き部屋のようだったが、誰かが使っていたかのような形跡が見えた。


 青春以外の家族には、春火の記憶はない。ゆえに空き部屋、物置小屋のようになっていた。

 だが机なり、女性物の服などが見えた。母の巳春のものには見えないから、姉の春火の部屋で間違いないだろう。


(何を見てるんだ自分は……変態じゃないか)


 冬黒は、恥ずかしさと自己嫌悪で目を反らす。想い人の部屋を見ようとするなんて、とんでもない話。ましてや物色なんてしようものなら品性を、人間性を疑……


「青くん! エッチな本とか隠してない? お姉ちゃんに見せなさい!」

「ちょ、止めてよお姉さん!」


 ……青春の部屋にて、その品性を疑う発言が聞こえた。

 冬黒は、ああはなるまいと心に刻む。


「まあまだ、動くタイミングではないでござるな」


 秋葉は様子見の態度。物色くらいかわいいものと思ってるのだろう。


(哀れ闇野)


「ところでお姉さん、その顔何?」


 青春は凄まじい厚化粧の黄緑に反応した。


「え、色っぽい?」

「いや、まあ……本人がいいならいいか」


 器の大きな青春。人を見かけで判断はしない。厚化粧で変な顔してようが、本人がいいならとやかく言わない少年。

 そして笑いもしない。


 だが、普通なら笑われるという感性がないのもまた厄介ではある。注意ができないからだ。

 このままでは黄緑の化粧はこれがデフォになるかもしれないし。


 とはいえ化粧をしない女の子だから、そこまで痛手にはならないかもしれないが。


「とりあえずゲームでもする?」

「するする!」


 と、二人はゲームを始める。

 聞き耳立ててる秋葉だが、今のところ何か起きそうな素振りはない。


「やはり大丈夫なんじゃないですか? そもそも親御さんもいるんですよ家に。そんな嫌われるかもしれないリスク、負わないでしょう」

「黄緑氏のことだから信用ならないでござるよ」


 酷い先輩だと冬黒は思った。


 ――すると、


『ニャ~』

「ん?」


 白い猫が二人の目の前に現れた。青春宅で飼ってる飼い猫だろうか。


「あらま、かわいい猫ちゃんでござるね」

「ありがとう」

「あらま、きちんとお礼言えて偉い猫ちゃんでござるね」


 ……


 ……


「猫がしゃべ!」

「静かに! 隠れてる意味ないでしょ!」


 冬黒がすぐさま口を塞ぐ。とはいえ冬黒も驚いてはいる。

 ただの白い猫が流暢りゅうちょうにお礼を言ってきたのだから。


 だが冬黒はすぐさま察する。

 猫……ということは、


「妖猫ヒルダ……?」

「ご名答」


 青春の力の源、妖猫ヒルダ……普段は大きく、狂暴な猫なのだが、今はそんな様子もない小さな子猫だった。


「そんな姿にもなれるのか」

「なれるようになったのは最近ですわ」

「最近?」

「妖魔王の力を取り込んだ辺りかしら」


 青春は倒した妖魔の力の一部をヒルダの力に変換させている。妖魔を倒せば倒すほどにヒルダは力を増す。それが妖魔王ともなれば……


「自分が倒した妖魔王も取り込んだとなると……君はもはや、妖魔王と言っても差し支えないほどに強くなってるのだろうね」

「そうかもしれませんわね」

「五人目の妖魔王……五猫ごびょうってところですかね」


 秋葉が吹き出しそうになる。


「五秒って! 時間でござるか! ひっひっ……」

「あたくしも、あまりいい名前に聞こえませんわね……」


 あまりに適当に名付けすぎたかと、冬黒の顔が少し赤くなった。


「妖魔女王になったからこそ、あたくしは青春から離れ、ただの猫として活動できるようになったのかもしれませんわね」


 青春とヒルダは一心同体のようなものだった。

 朝と昼は青春の影の中で身を潜め、力を出す事はできなかった。そして夜と深夜になれば青春の影から出て外に出てこれるようになる。青春に力を与えながら。それでも青春から離れられる距離は限られていたのだが。


 猫化できるようになってからは、こうして昼間も徘徊できるようになり、青春から離れられる距離も広がった。

 とはいえヒルダは青春にゾッコンゆえに、あまり離れる事はしないのだが。


「おそらく今なら昼間でも、青春は力をだいぶ発揮できると思われますわ」

「それは朗報ですね。万が一昼間に四鬼と戦う事になったとしても、それなら安心です」

「いつか人の姿にもなれればなと思いますわね。そうしたら青春を独り占めできる……」


 ヒルダはヤンデレと言っていいほど青春を気に入っている。近づく者には危害を加えようとするほどに……

 だから助けたのは青春に得があったからと証明するために、わずかな金銭を助けた者から頂戴してたのだが……


「最近、闇野の周りの者に嫉妬しなくなったようですね。現に自分達に危害を加えようとはしませんし」

「あ、そういえばでござる!」


 流し目で冬黒を見ながら、ヒルダは答える。


「まあ力が安定したからかもしれませんわね。あたくしとしても、青春の悲しいお顔は見たくありませんからね。とはいえ気に入らないものは気に入らないままですけども。あのメスとか」


 おそらく和花のことだろうと察する冬黒。黄緑だけでなく、ヒルダにも嫌われてるのかあの子はと、少しばかし同情していた。


「わかんないでござるなあ。ならなんで黄緑氏はいいんでござるか?」

「あの子は青春の姉になってくれましたから。春火? という女子の代わりに」

「春火さんの代わりなんていないです」


 自分にとってのではなく、青春に対しての話なのに、冬黒はつい反応してしまった。彼もまた春火を忘れてしまっているのに。それだけ彼女への想いは強いものなのだろう。


 冬黒はまたもや顔を赤くしていた。


「まあ、青春にとってもそうでしょうけどね。それだけ強く優しい姉だったのでしょう。あたくしも会ったことはないからわかりませんが」

「会ったことはない……君、いつから闇野と?」


 素朴な疑問だった。

 青春とヒルダの出会い、そして力を得たきっかけ……


「いいでしょう。話しましょうか。あたくしと青春の出会いなど」




 ――つづく。





「そういえばその辺の事情聞いたことなかったね」


「次回 妖猫ヒルダ。ゲームしよ青くん!」





 


 


 

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