61話 修行開始
総裁選までの間、青春と黄緑は修行を開始していた。
周囲の妖魔を狩り、ヒルダの強化……そして自身の戦闘力をあげるために、単純な基礎トレーニングなどを。
四鬼の戦闘力は未知数。前回の手合わせも本気とは限らない。わかってるのは風使いだということだけ……
風、つまり木属性。となると相性でいえば金属性魔力が必要なのだが……
「あれ? ワタシ有利ってこと?」
そう、黄緑の魔力属性は金。なんの偶然か、相性はよかったのだ。
対四鬼の相棒としてこれ以上ないのかもしれないと、青春は思った。
だが、相性が良ければ勝てるなんて、そう単純な話ではない。
黄緑も青春も、今まで相性の悪い相手にも勝ってきている。つまり、やりようによっては不利な相手にだって勝てる。
それに四鬼は今までの、どの妖魔より強いのは間違いない。
油断は禁物……
「でも、お姉さんが切り札になる可能性は大きいよね。僕の必殺技を確実に奴に当てるためにも……」
「つまりお姉ちゃんが相棒でよかったって事?」
「うん、まあ……」
「やっぱり相性最高ってことだよね……これはもう結婚するしかないよねうん」
「わかったからとりあえず修行しようよ……」
四鬼の攻撃速度は尋常ではなかった。
あれに反応するには相当な反射神経と速度がいる。
これに関しても、身体能力強化ができる黄緑は合格と言える。
問題は火力だ。
単純なパワーなら黄緑は規格外だ。だがそれでも四鬼に届くかと言えば疑問がある。
なぜなら奴の配下、一兎ですら仕留めるには至らなかったからだ。
必殺技もあるが、それをいれても少し厳しいと言わざるを得ない。
こちら側の最大火力はやはり、青春の闇空間からの闇光死斬。
青春が対四鬼として考えた必殺技。これをさらに鍛え上げ、強化する。四鬼を倒すにはこれしかない。
だがそう簡単に当てられるかどうか……
「そこでワタシの出番かな? 青くん抱っこして運ぼうか?」
ふざけた提案に思えるが、そう悪い話ではない。
なぜなら黄緑が運び、安全に青春を四鬼の懐に送り込めれば勝機があるかもしれないからだ。
黄緑なら四鬼の攻撃を見切れるという前提の話だが。
「……悪くないかもね」
「じゃあさ! 練習しよ! ゲヘヘ」
「……なんで笑うの」
「あらあら~なんでもないわよ~」
完全に下心満載だが、背に腹はかえられぬと、試して見る。
♢
「いい感じかもしれない……」
何度か試行錯誤して、二人のコンビプレイに磨きがかかっていた。
「あらあら~愛の力ね~青くん結婚は早い方がいいわよね~」
「都知事になれなかったんだから諦めなよ」
「嫌。この際四鬼に洗脳力あるなら国会ねじ曲げて法律変えさせる」
最大の敵を利用して、自らの欲望を叶えようとするこの女……あまりに恐ろしいと肌で感じはするが、同時に頼もしいとも青春は思ってる。
腕を一度切り落とされるような事をされてるのに、四鬼に対して臆さない態度……頼りになると。
「……フフ。お姉さんが相棒でよかったよ本当に」
「でしょ?」
久しぶりに笑った気がしたと青春は思った。
四鬼に敗れ、姉を中途半端に思い出さされ精神が壊れそうになり、自分達に助けを求めてくれた達田は救えず死んだ。
状況的にとても笑えるような状態ではなかったから。
でも黄緑のおかげで笑顔になれた。
……とても救われていた。
気をはってばかりでは変に力が入り、四鬼に勝てないかもしれない。
少しは息抜きが必要なのかもしれないと。
「お姉さん、修行一段落したらさ、……デートでもする?」
――黄緑に電流走る。
青春がついにデレた。つまり結婚と黄緑は早合点していた。
「式場はどこにする!?」
「は? 何か催しでもあるの?」
「催しと言えば催しだけど……」
「どこか行きたい所とかある?」
「青くん家」
……想定外の答えが返ってきた。
「なんで?」
「部屋とか見たい」
「……別に面白いものなんてないよ?」
「いいから」
まあいいかと思い、青春は納得する。
「わかった。いいよ」
「じゃあ準備してから行こうね」
「準備? なんで?」
「いいからいいから~」
ニコニコしてる黄緑にこちらも笑顔になってしまう青春。
家なら変な事されないだろうしとも思っているのだろう。
♢
一方、四鬼達の動向を気にする冬黒達。
都民の冬黒達は四鬼と相対したら操られる心配がある。それゆえに青春達に任せるしかないのだが、それなら二人を無傷で戦わせる必要がある。
そうなると不確定要素としてあがるのが、最後の妖魔王、三蛟。
詳細は全く不明だが、一兎が陸、二鳥が空と考えれば、名前からして三蛟は海と考えてもいいかもしれない。
本当に海としたらどんな戦法をとってくるか読めない。
海を作り出す? 海に移動する?
それに他二人の妖魔王よりも強いのかどうか……
冬黒もまた、自らを鍛え直していた。
好きだった人、青春の姉……春火の仇。できれば自分の手で倒したいところではあった。
だが、東京都民が操られてる事を考えれば、奴と出くわした場合……最悪敵となって青春達と戦う事になるかもしれない。
ならば……任せるしかない。唇を噛みしめながら、他の手下を相手にすることを選ぶ。
「コーリちゃん」
幼馴染みの秋葉が修行もせずにちょっかいかけてきた。冬黒は面倒そうに返事をする。
「なんですか」
「なんか黄緑氏が青春氏とデートに行くんだそうでござる」
「ですから?」
冬黒にとっては至極どうでもいい事だった。誰と誰がデートしようがしったことではない。興味もない。
それが亡くなった想い人の春火だったなら、そうはいかなかっただろうが。
当然黄緑になんて冬黒は興味ない。だから青春とデートしようがどうでもいいのだ。
――しかし。
「ウチ一人だとあの暴走娘止められないでござるから一緒に尾行しようでござる」
「嫌ですよ面倒な。それに闇野もこの大事な時に何を考えてるんだか……」
なんだかんだ黄緑を気にいってるのか? ま、どうでもいいかと冬黒を思う。
「その大事な時に黄緑氏が逮捕とかされたらまずいでござるでしょ?」
「逮捕って……そこまでバカじゃないでしょあの人」
「そこまでバカでござるよ黄緑氏は」
「ええ……」
ただ冬黒はあまり黄緑を知らないため、ないとは言いきれない。変な人だとはわかっているし。
一方秋葉は同じ学校の先輩後輩の関係で彼女をよく知ってる。
そんな秋葉が言うなら……事実なのか? そう思い始める冬黒。
「黄緑氏は元々恋だのなんだの知らない子だったんでござるが、青春氏を知ってからというもの……日に日にヤバさに磨きがかかってるでござるからね」
「初恋ゆえの暴走ってやつですか」
「そんなかわいいものではないでござるよ。犯罪者でござる犯罪者」
「まだ何もしてないでしょ」
先輩の癖に酷すぎないかと思ってしまう。
「元々ショタコンの気はあったでござるが、ああも変貌するとは恐ろしいでござる」
「はあ……」
どうでもいいが、仕方ないので付き合うことにした冬黒。
♢
冬黒と秋葉は青春の自宅近くで張り込むように待機。
すると、黄緑がやってきた。おしゃれとか興味もない彼女が、精一杯のかわいい服装に身を包んでいた。
――しかし、
「ぶはっ!」
つい吹き出す秋葉。なぜかというと……
あまりに厚化粧して真っ白な顔で黄緑が現れたからだった。
「そりゃ化粧したとこ見たことないでござるが、こんなに下手とは……クヒヒ腹いてえでござる!」
バンバン隠れてる電柱を叩く秋葉。
「可愛く見せようと頑張って化粧したんでしょうし、笑うのは失礼かと」
冷静に注意する冬黒だった。
――つづく。
「とりあえずお義母様への賄賂……もとい菓子折りは持ってきたよ……」
「次回 青春宅。部屋にいれてもらえるってことは、もう結婚したようなものだよね?」




