59話 青春対コカトリス
「ふん。青髪の小僧か。確か四鬼様に無様に負け、べそかいてたとか聞いたが?」
「このニワトリ殺す……」
黄緑がコカトリスに臨戦態勢をとるが、青春が制する。
「こいつは僕が殺る」
「はぁ~い」
可愛くぶりっ子ポーズとって下がる黄緑。
「泣き虫坊っちゃん。お姉ちゃんに甘えて、ミルクでも飲んでたらどうだ?」
「こいつムカつくけど、青くんが甘えてくれたら嬉しいからそれもありね……」
うんうん頷く黄緑。
コカトリスは即座に距離をとる。
奴の能力は狙撃特化。発射速度は規格外。
あの冬黒達が近くにいたのに、反応すらできないほどの速度だからだ。
銃口を向けられた瞬間、発砲され、相手に風穴をあける……
ならば銃口を向けられなければいい。
言うは易し。そう簡単にできる事ではない。
距離をとられたらマズイ。
青春は百も承知だ。
コカトリスは窓に向かって走り出す。おそらく外から狙撃するつもりなのだろう。
コカトリスにも翼がある。つまり空を飛べるわけだ。
空に逃がしたら最後、上空から狙撃の雨を降らされる。
何があっても、窓から外に出すわけにはいかない。
青春は窓にナイフを大量に投げつける。ナイフは魔力により、互いにくっついていき……窓をふさぐ。
コカトリスは銃を放ち、窓をふさぐ大量のナイフを弾き飛ばそうとするも、弾丸は弾かれるだけ。
「ちぃ! 頑丈なナイフだな!」
「褒めてくれてありがとう……死ね」
青春はナイフに魔力を集中し、刀身を伸ばす。さながらビームサーベルのように。
コカトリスは近寄ってくる青春から必死に逃げる。
「逃げてばかりなの? こんな子供相手に情けないね」
安い挑発。
当然コカトリスはのってこない。しかし、表情からは怒りが見える。
短気な奴なようだ。
外に出られない事で、部屋の中で互いにおいかけっこしてる状況。
部屋の出口は黄緑が塞いでいるので逃げ場はない。
いつまでも狭い部屋で青春から逃げつづけることは出来ない。
そう思ったコカトリスは銃を壁に向ける。
おそらく壁を壊して無理やり外へと脱出するつもりなのだろう。
無論、そんなことさせるわけがない。
青春は千……いや、万の数のナイフを一瞬で生成し……放つ。
こんな狭い空間でこれ程の数のナイフ、避けきれるわけがない。
コカトリスを必死で銃を放ち、ナイフを弾いていくが、手数が足りず……
翼にナイフが何個も突き刺さる。
「ギャア!」
地に倒れるコカトリスに追撃の……
「闇空間」
漆黒の闇が辺りを溶かす……
身動きの全てが封じられたコカトリスは為す術がない。
そして奴がした行動は……
「ま、待て! た、助けてくれ聞きたい事があればなんでも……」
「お前は達田さんを殺した。万死に値する」
聞く耳もたない青春は、ナイフ一本に魔力を集中……
彼の十八番が放たれる。
「闇光死斬」
「ギャアアアアアア!!」
コカトリスの体は一刀両断される!
激しい断末魔と共に、奴は粉々に砕け散った。
わずかな静寂……
青春は静かに、黙祷のような事をする。
「青くん。良かったの? あいつから何か四鬼について聞き出せたかも……」
「いいんだよ。どうせ殺すのに話だけ吐かせるなんてのもね。それにどうせ大したこと知ってやいないさ」
むなしさを感じている青春。
仇はとった。だが、達田が帰ってくることはないから……
黄緑は指を高速でくねくね動かす。隙あらば抱き寄せようと企んでいるのかも。
心の弱った青春が心配なのはもちろんだが、この隙に距離を縮めたいという邪な考えをおもちだった。
黄緑はやはり黄緑……
「……清史郎くんのところに行こう。謝らないと」
♢
二人は撮影現場に向かう。
そこには、死体の達田の手を掴んだまま、涙を流している清史郎の姿があった。
あれからずっとここにいたようだ。
隣には秋葉赤里もいた。心配で、近くにいてあげてるようだった。
青春は近くによってから……土下座した。
「ごめん! 僕は達田さんを守れなかった! 助けてくれと、頼まれていたのに!」
清史郎はこちらを見ない。
青春は頭を地にこすりつけたまま、謝罪を繰り返す。
「完全に僕の力不足……その上、子供みたいに塞ぎこんで……」
「青くん! 実際子供なんだから、仕方ないって! 悪いのは青くんの心を踏みにじった四鬼!」
黄緑は今回の一件、青春に罪はないと思っている。どうあっても、達田の死は避けられなかったと思っているから。
「第一、尾浜のおっさんの組織がこの場にいたのに何もできなかったんだし! むしろ悪いのはおっさん達! 清史郎くんも青くんを責めないであげて!」
黄緑は何があっても青春の味方。ゆえにどうあっても庇ってあげたいのだろう。
「お姉さん……いいんだ。僕は責められても仕方ない人間だ。この場に僕がいたら何か出来たかもしれないのに……」
『いや、責任は組織にありますよ』
三人の前に、二鳥を倒した冬黒がやってきた。
「むしろこの場にいた自分達に責任がある。清史郎くん、責めるなら自分を……」
「いいよ。誰も……悪くないから」
清史郎は涙を拭いて、唇を噛みしめながら言った。
「悪いのは……妖魔達……だから、だからさ!」
清史郎は無理やり笑顔を作るようにして……言う。
「お父さんの仇を……とってよ! あいつら……や、やっつけて……」
だがやはり、涙は流れ出てくる。どんなに我慢しても、大好きな父の死を受け入れることなんてできやしなかった。
秋葉がたまらず、清史郎を抱き寄せてあげた。
「大丈夫でござるよ。うちらがお父さんの仇とるでござるから」
「う、うわああああああ!」
もう、こんな悲劇は起こさせてはならない……
姉の仇だからってだけでなく、四鬼を倒さねば、こんな悲劇が繰り返される……なんとしてでも、奴をこの手で……倒す!
♢
その後、都知事選の結果が出た。
達田は亡くなったため、彼への投票は無効になった。
彼は死んだことで、四鬼達から逃れることができたのだ。
ずっと脅され、利用され続けてきた達田はついに解放されたのだ。
そのためか、彼の死に顔が安らかなものに、青春達には見えていた。
都知事選の結果は、黄緑達の落選に終わった。とはいえ達田を落選させるためにやったこと。彼が亡くなった以上、黄緑達が勝とうが負けようが同じ事。
だから誰が勝とうが関係はない。
黄緑は女子高生と男子中学生の結婚の合法化を目指していたから、落選はかなり悔しがっていたが……
青春は本気だったのかと少し呆れていた。
そもそも都知事にそんな力はない。
次期東京都知事は、黄緑達とテレビで共演していた信貴条候補となった。
信貴条。
しきじょう。
――四鬼、じょう。
――つづく。
「残念だったね~達田のおっさん(鼻ほじ)でもあのおっさん悪いこと手伝ったわけだし、仕方ないよね。清史郎くんには悪いけど」
「次回は新章……え、最終章!?」
「新章、最終決戦、妖魔神四鬼討伐編スタート!」
「次回 乗っ取られる東京。えええ!?」
「え? その前に座談会? なにそれ」




