40話 二対二
「こ、ここここここコーリちゃん! な、なんかの冗談でござるよね! ウチに戦えとか!」
「……なんで出てこないんですか?」
秋葉の戦闘用人格が出てこない事に不信がる冬黒。今までは戦闘に限らず不意に出てきたりするのにと。
「まあ、いいです。とりあえず始めましょう」
意に返さず、戦うもよう。
どうせ危なくなったら出てくるだろうと気楽に考えてるようだ。
「下納、貴様は銃でサポートせい」
「はいよ」
右堂は全身に電気を纏いだす。触れただけで感電死しそうな電圧……
属性相性でいえば特質三大属性として、光に強い。
――つまり、冬黒にとって相性が悪い。
「面倒ですね。こいつの相手は赤里さんに……」
冬黒が視線を秋葉にむけてそらしたスキを右堂は逃さなかった。
一瞬で冬黒の目の前に移動する右堂の速度はまさに電光石火。冬黒が反応しきる前に、電気を纏った拳が直撃する。
雷でも落ちたかのような、耳を貫く轟音が周囲に鳴り響く。
冬黒の全身に電気が流れ感電させた後、勢いよく彼は壁に吹き飛んでいった。
「コーリちゃん!?」
「まず一匹」
右堂は次に秋葉をにらむ。秋葉は恐怖で転けそうになりながら逃げ惑う。
そんな先輩を見ながら黄緑はあくびしていた。
「き、黄緑氏! た、助けて!」
「自分でなんとかできるくせに……」
黄緑は秋葉の強さを知ってるから助ける気など毛頭ない。こちらの秋葉は何の力もないというのに……
「その一匹はあたいが仕留めてやるわよ!」
下納は秋葉にむけて銃を乱射した。
「ば、バカ! 待て下納!」
右堂が止めるが時既に遅し。下納は既に銃を発砲していた。
弾丸は秋葉の肩に直撃し貫通。
傷口からは出血……そう、血が出る。
その瞬間明らかに出血量以上の血液が、秋葉の傷口から下納目掛けて飛び出していった!
消防車のホースからの放水と思われるほどの圧と勢い! 下納はその衝撃で吹き飛び尻餅をつく。
「う、うううう……い、痛い。痛いでござるぅ……誰か助けて……」
一方、秋葉は傷を痛がりうずくまっている。
「な、なんなの!? こ、この女! こいつの攻撃じゃないわけ!?」
攻撃してきておいて、一般人のように痛がってる秋葉を不信がる下納。
そして、まだ攻撃は終わってなどいない。
床に散ってシミになっている血液が浮き上がっていく。
「――はっ!?」
浮き上がってきた血液が弾丸のように下納を狙って飛んでくる。
それを必死に避けていく下納。
対し、右堂はただ見てるだけで動かない。そんな彼の態度に下納はキレる。
「おっさん! なに突っ立ってんの! 助けろよ!」
そんな叫びにもまるで反応しない右堂。――この男、下納を犠牲にして秋葉の力を分析してる様子だった。
(出血の量事態は関係なく、多量の血液を生み出し操る能力か……。出血さえすれば大小は関係ない)
そう、秋葉の血操舞は出血さえすれば能力は起動する。
ただ、出血の量が全く関係ないというわけではない。
出血量は持続時間に関係してくる。
すぐ止まる程度の出血量なら、当然発動時間は一瞬で終わる。
今回のケースは銃弾の貫通。けして軽症ではない。だが、直撃したのは1ヵ所。それと肩だ。それを考えると持続時間事態は大したことはない。
右堂は独自のルートで秋葉赤里の能力は調べてあった。それゆえに、彼女が血まみれになればなるほど能力を強化する恐ろしい女だと理解していた。血まみれにまでなれば威力も増大するという噂もある。
倒すならできる限り出血をおさえさせて……一撃で倒す。それが右堂の考えた対処方法だった。
(あの程度の傷口なら下納とやりあってるだけで時間切れになるはず。そうなればこちらのものだ)
右堂は下納を捨て石にする方法を取ることにしていた。
元々四天王は信徒でもない雇われ。四人事態にも特に関わりなどろくにない。ゆえに、仲間意識など誰一人ない。左井川を簡単に始末したのもそういう理由からだ。
「く、くそ! 鬱陶しい!!」
下納は自らを自動追尾してくる血液を銃撃で、消し飛ばしていく。
しかし続々と血液が襲いかかってくる。
血液は弾丸だったり、手を形どったり、スライムのようになって襲いかかってきたりと様々。
しかし当人の秋葉はうずくまったまま。
ならばと、下納は動く。
「本体を殺す!」
銃は撃っても血液に守られる。ならば接近して……そう考えた下納は秋葉の元に走る。
そして、あっさりと秋葉の眼前へとたどり着き、攻撃を仕掛ける!
――あっさりと?
血液に守られている秋葉に?
……そんな疑問に思い当たらなかった時点で、下納に勝ち目など最初からなかった。
誘き寄せられただけだというのに……
「ばぁぁぁか」
秋葉の表情はいつものアホで明るい女の子のものではなくなっていた。
「貫血泉」
――その一言の直後、下納の足元から巨大な血液の氷柱のようなものが飛び出してきた。
当然下納は反応できずに……
「ぎぃやああああああ!!」
全身串刺し。
その後、秋葉が指を弾くと氷柱は血流に変化し、下納の全身全てを飲み込んだ後、天井を突き破って飛んでいった。
右堂はすぐわかった。下納の死を。
(恐ろしい娘だ……あれだけの出血でこの強さ……。だが、)
秋葉の操る血液の動きが止まり、地に沈んでいく。
「ふっ。時間切れだな」
血操舞の持続時間が切れたもようだ。
「下納を犠牲にした甲斐があったというものだ」
「ウチの能力知ってるの?」
「調べつくしている。抜かりはないわ」
「ふーん。コーリちゃんの能力は?」
「ん? あの小僧は取るに足らん相手だったろ」
「……さすがコーリちゃん。敵に自らの手の内を晒さないよう心がけてんだね」
「「当然でしょう」」
背後からの声にゾッとして振り向く右堂。
声の主は冬黒光李。口元からは殴られた時に切ったか、血が少し出ている。だが、それだけだ。
右堂はうろたえた様子を見せる。
「ば、バカな。この小僧は大したことないはず……」
「そのはずでしょう。自分は基本目立たず行動してる。敵からはとるに足らない人物に見えるようにね……そう思うとね、相手は情報を得る事を怠るんですよね」
「な、にい……?」
「あなたは四天王じゃ最強、そして冷静に分析できる力もある。でも敗因は驕り。自分を雑魚と侮り、情報収集をしなかったというね」
右堂はすぐさま電気を全身に纏う。攻防一体の右堂の得意戦術。
脳の伝達速度も高め、人外の速度も手に入れられるため、肉弾戦最強を今まで誇ってきた。
ゆえに自信はあった。負けるわけなど……ないと。
冬黒が動く前に、この速度と拳で殺す……右堂はそう考えていた。
仮に攻撃が当たっても相性のいい光なら電気の鎧を貫けるはずもない。
「遅いですね」
「えっ?」
ピチャリと血の落ちる音……
音は右堂の足元から聞こえてくる。
視線をおろすと、右堂の左腕がいつの間にか地面へと落ちていたのだ。
「な、なあああ!?」
「自分の攻撃が見えない程度の動体視力なら、相手になるはずないですね」
その直後、冬黒の周囲から光のレーザーが大量射出!
全弾受けた右堂は静かに地へ……倒れ伏す。
♢
「はっ!?」
右堂は目を覚ます。全身は赤い鞭のようなもので厳重に縛られていた。秋葉の血液の鞭だろう。
右堂は濡れている。起こすために水をぶっかけられたためだ。
「早く青くんの居どころ答えなさい。答えないと殺す」
黄緑の冗談には聞こえない脅しが右堂を襲う。
「彼女なら、マジでやりかねないから答えたほうが身のためですよ? 下納って人みたいに死にたくないならね」
下納は秋葉の一撃により死んだもよう。
右堂は観念するように目を閉じた。
「わかった。話すよ。拷問部屋だよ」
「青くん傷つけたってこと?」
黄緑の冷たい言葉が突き刺さる。今にも右堂を殺しかねない。
言わなきゃ殺すで、言っても殺すなら悪役みたいだ。
「だが、上墨が来てないところを見ると……」
右堂は察する。青春は既に脱出してると。
♢
――その予想通り、青春は拷問部屋を後にしていた。上墨を連れ、……教祖カオルコの前に、姿を現していたのだ。
カオルコは青春に飛びきりの笑顔を見せる。
「こんにちは、闇野青春。教祖のカオルコよ。よろしくね」
ウインクしてくる彼女に対し、青春は視線を鋭く向けるままだった。
――つづく。
「あれ、青くん脱出してるのか。嬉しいけど、かっこよく助けたかった気持ちも……って違う!あらあら~よかったわ~」
「次回~青春対教祖。頑張ってね~青くん~」




