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39話  対決四天王

「なんか騒々しいなあ」


 左井川除く、他の四天王の三人が騒動に気づく。

 右堂は表の見張りの妖魔から騒動の原因を聞いて部屋に戻ってきた。


「敵襲らしい、左井川がゲロッたようだな」

「はあ!? あいつあんなキチった野郎なのに、やられたら命惜しさに吐いたのか? 情けね」

「左井川の始末の命令も出てるな。我らも行くぞ」

「めんどくせ。二人だけじゃダメなのかよ。おれはこのガキなぶり殺したいし」


 上墨が見下ろす視線の先には、椅子に座らせられた状態でかつ、鎖などで厳重に縛りつけられてる青春の姿があった。

 

「殺すな、やりすぎるなと指示があるだろうが。忘れたか? まあ我らじゃ殺せはせんと言われてるが」

「けっ」


 唾を吐き捨てる上墨。


 ……青春にはそれなりの暴行を受けた様子が見られた。

 青春は三人を睨み付けている。その表情には怯えはない。あるのは恨みつらみ、憎しみだろう。

  

 言われた通り、顔には特に傷はないものの、手足に刺し傷、むち打ちのような後。……そして一部爪が剥がされていた。


 それらの暴行を受けても青春の精神は揺らいでいない。虎視眈々と、この状況をひっくり返そうと考えている。


 そんなことはつゆ知らないこの三人は滑稽ではある。何もできないとたかをくくっているのだろうが。


「しかしこいつ泣き叫びもしねえし、タバコ押しつけても火傷もしやがらねえ。マジ化け物だよな。もらった武器じゃねえとろくに傷つかねえ」

「だから我らでは仕留められんという事なんだろうな。防御力は一割ではないわけだ。とにかく、迎撃に向かうぞ」


 右堂と下納はすぐさま部屋を出てく。上墨はダラダラゆっくり歩いてく。


「あれ? そういや女いるんだっけか。可愛い女なら殴れねえな。おいガキどうなんだよ」


 青春に美人がいるか問う。

 ……睨み付けたまま、青春は口を開く。


「……お姉さんの事なら、とびきりの美人だよ」

「お、マジかよ~」


 美人と聞くとニンマリする上墨だったが……


「気持ち悪いんだよ。そんな顔、お姉さんの視界にいれるな。だからここで死ね」


 冷たく暴言を放つ青春。普段の優しさが消えたかのような冷徹な表情……


「一割で三人がかりはキツイけど、お前だけなら容易に始末できるからね」

「ガキ……もう殺す!」

「その言葉、そのままお返しするよ」


 青春の全身を縛っていた鎖やらが、突然地面に落ちた。

 鎖はバラバラ。綺麗に切り落とされた跡が垣間見えた。

 おそらく見えないナイフを生成し、切り落としたのだろう。

 

 そうなるといつでも脱出可能だったと見える。

 すぐ脱出しなかった理由は和花の居場所を探るため、三人だと分が悪い、夜までの時間稼ぎ……辺りが理由だろう。

 殺すなと命令されてるのは知っていたし、すぐに行動に移す必要はなかったから。

 とはいえ暴行はきつかったはずなのだが。


 「このガキ!」


 上墨は部屋に置いていた槍を手に取り、青春に向けて刃先で突く!

 ――が、金属音が鳴り響くと共に槍が弾かれた。

 見たところ青春はなにもしてはいない。


「ちぃ! こなくそ!」


 上墨は槍を高速で突きの連打。しかし、全てが弾かれる。

 種明かしをすると、青春は自らの周りに見えないナイフをいくつも宙に固定していた。そのナイフを移動させつつ、盾のように使って槍を弾いているのだ。

 ナイフが見えない以上、何故弾かれてるのか上墨は理解不能だろう。


「うざってえ!」


 上墨は全身に力をいれると筋肉が膨張! 着ていたタンクトップがビリビリと破れ、上半身裸になった。

 鋼のように鍛えあげられ、膨れ上がった凄まじい筋肉。人間離れしているほどだ。


「おれはなあ、他の連中と違い、魔力を外に放出する才能はねえ。だから特殊な戦法はできねえ」

「……で?」

「だがな、変わりに生まれもった体格と魔力が交わり、身体能力を極限まで高める事ができたのよ」


 要は身体能力強化、筋肉の肥大化が可能ということだろう。

 単純なパワーの強化。それも妖魔並みに強大な力。


「その上に教祖から渡された妖魔の力!」


 カオルコに渡された指輪を指にはめ、力を解放する上墨。

 筋肉はさらに膨れ上がり、腕の太さだけで大の大人のウエストサイズを上回るほどに膨張。


「これだけのパワー……くらったら一瞬でお陀仏だな!」

「当たればね。その前にこれ、防いでみなよ」


 青春は周囲にナイフを大量生成する……が、


「しゃらくせえ」


 上墨は槍を大きく振り回す。その振りにより、風圧が発生。周囲を巻き込む小さな竜巻のよう。


 射出されたナイフは風圧にはじかれ、上墨には届かない。


「無駄とわかるだろ? そしてさらに!」

「――!?」


 上墨の姿が青春の視界から突然消える。否、上墨は超高速で部屋の周囲を旋回していたのだ。

 あまりの速度ゆえに、視界から消えたように錯覚したのだ。


「筋肉ムキムキで、速度ねえと思ったろ? あめえんだよ。身体能力の強化がパワーだけなわけねえだろうが!」


 上墨は自らの速度に青春がついてこれてないと判断。

 ナイフをいくら射出しようと当たりはしない。ナイフの速度など上墨にとっては止まって見える。


「要するに、てめえは詰んでるんだよ! なにしようがおれに勝つことはできねえ!」


 青春の背後から槍を振るう。青春は振り向きもしない。取った! そう奴は思った。


 ――すると、青春をねらったはずの槍があさっての方向へ飛んでいった。

 槍を投げた覚えはない。なのに自分の手元から離れていった。

 上墨は自らの手元を確認する。

 ……そこには切り落とされている自分の手首があった。


「は? は!?」


 槍を握っていた手がそこにはなくなっていたのだ。


「魔力を外に出せないってことはさ、防御にまわせないってこと。つまり防御力は常人とさほど変わらない。常人ならただのナイフで切り裂くことも容易。故に一割の攻撃力でも腕の一本や二本、切り落とせるんだよ」


 青春は視線を向けずに冷たく言いはなった。

 

 青春は背後に見えないナイフを罠として設置していたのだ。

 上墨はその設置されていたナイフに自ら手を突っ込み、切り落とされたのだ。


「お、おががが!!」


 失った手の痛みに悶え苦しむ上墨。


「さて、どうしたものかな」


 青春は冷たい視線で悶える上墨を見下ろす。


「同じように、拷問でもしようか?」


 上墨は冷や汗をどっとかく。自分よりはるかに体格の小さい少年に、本気の恐怖を感じ震えあがっていた……



 ♢



 ――一方、黄緑達。


 圧倒的武力で妖魔達を撃退しながら辺りの部屋をぶち壊し、青春を必死に探す黄緑。そこに少し離れながら冬黒と秋葉がつづく。


「あらあら~全然見つからないわね……」


 青春が見つからないことでイライラが頂点に達しかけている黄緑。あらあらキャラも崩壊しかけている。


「あんた、青くんがどこに捕らわれてるのか知らないの?」


 盾として装備してる左井川を揺する。すると奴ははっとする。


「あ、ご、拷問部屋かも、知れねえ」

「拷問部屋?」


 黄緑の顔に血管がわきでる。


「まさか青くんを拷問してるとでも言うんじゃないでしょうね……そんなことしてみなさい。全員生まれてきたことを後悔するくらいに痛めつけて……」

「ま、待て! おれは何もしては……」


 ダン!


 ――突然発砲音が鳴り響く。


 左井川の側頭部から血が流れている。

 何者かが左井川を撃ち殺したのだ。


「はーい裏切り者には死を」


 背後から下納と右堂が現れた。下納の手には銃が握られていた。撃ち殺したのは下納のようだ。


「手間省けた。他の幹部なら青くんの居場所知って……」

「夏野さん、とりあえずここは自分と赤里さんにお任せを」


 冬黒が黄緑の前に出てくる。


「今のところ役にたってないですからね。この二人は自分達が仕留めますよ」

「ふーん。まあいいけど」


 と、黄緑は二人に任せようと距離をとる。

 ――一方秋葉は……


「へ? コーリちゃん!? ウチが戦うってなんの冗談でござるか!?」


 主人格の秋葉は、冬黒の言ってる事が理解できなかった。自分戦うなんてなんの冗談だと……


「いいから、やりますよ」

「えええええええ!?」



 ――つづく。



「見ものと言えば見ものかなー二人の実力ってちゃんと見たことないし」


「次回 二対二。こんな奴ら、さっさと仕留めてよね」




 



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