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33話  闇野青春の弱点

「人を……殺す?」


 青春の表情は曇る。気が進まない。そんな様子だった。

 当然の事だろう。いくら妖魔討伐の百戦錬磨でも、いくら相手が悪人でも……


 人間を殺す……それはあまりにも重い。


 先日の秋葉達に対しては確かに殺すと脅すような発言はした。だがそれは黄緑の身が心配だったから。黄緑が何かされてないか気が気でなかったからだ。

 

 それ相応の憎しみ、誰かを助けたいという想い……それが重なっていたからだ。

 実際、そんな状況になって殺せたかまでは、今となってはわからない。


 その様子を見て察する冬黒。


「殺しはしたことありませんか?」

「……あるわけない」

「まあ、普通の人ならそうでしょうね。ちなみに自分はあります」


 冬黒は表情一つ変えずに言った。さも当然のように……


 青春と同じ年で殺しを経験している……どれだけ壮絶な人生を送って来たんだと、誰もが思うだろう。


「まあ、無理して手を汚すことはないですけどね。まだ正式に入る事決まったわけでもないし、汚れ仕事は自分と尾浜さんでやってもいいんで……ねえ?」


 冬黒は尾浜を見る。尾浜はうんうんと同調する。


「だねえ。子供に無理はさせらんない。基本は妖魔相手、人間相手でも気絶させるとかでもいいさ。とどめはオイラが殺るからさ」


 妖魔あるところに、闇夜の少年あり。青春は妖魔退治のためにも了承するしかなかった。

 教団がどんな連中かはわからない。だが詳しく聞くまでもないだろう。ろくでもない組織なのはわかりきってる。

 妖魔に限らず、悪事をおこなう悪鬼を、彼は許すわけにはいかないのだから。


 そして、さらに青春の気持ちを揺るがす事実を話す。


「それと、教団を影から操る妖魔は……あの四鬼と関わりがあるんだとか」

「――!?」

「ですよね?」


冬黒はスパイ活動中の尾浜に問う。尾浜はゆっくり頷く。


「教団トップの教祖が従う妖魔王一兎……そいつが四鬼と何か関わりがあるみたいだねえ。話題に出してたのを少し聞いたんだ」

「妖魔王……」

「姿は見ちゃいないし、詳細もわからんけど、名前からして相当ヤバい奴なのは間違いないね」


 王と呼ばれるのだ。相当位の高い妖魔と見て間違いない。今まで戦ったどの妖魔よりも格上かもしれない。


「そして妖魔神、四鬼……奴はオイラたちも追ってる最重要危険妖魔だ。奴を探る意味でも、一兎に接近するのも悪くないんじゃ?」


 仇に近づくチャンス……それならば、余計悩む理由はない。


「やります。妖魔と、それを利用する教団は許してはおけない」


 青春は決断した。――だが、


「でも、それらがすべて嘘で、僕を罠にかけでもしたら……全員容赦しないからね」


 尾浜たちに釘を刺しておく。まだ完全に信用できたわけではない。裏切れば殺す……遠回しにそう言ってるのと同義と三人は理解し、尾浜、冬黒……そして秋葉は頷いた。

 

「ところで、君ら都知事選知ってる?」


 尾浜は突然先程の話と当てはまらない話題に変えてきた。

 青春と黄緑は互いに顔を合わせ首をかしげる。キョトンとした青春が可愛すぎて、黄緑はその後すぐに抱きついてきた。

 ……とりあえず抱きつかれたまま、青春は質問に答える。


「都知事を決める選挙ですよね? それが?」

「出馬してる党とか人は?」

「いや、全くわかりませんけど」


 黄緑もまた、青春にひっつきながらワタシも~と手をあげた。


「まあ選挙権ない子はそりゃそうか」


 仕方ないと頷く尾浜だが……青春は付け加えるように言う。


「そもそも今の都知事も誰か知りませんけどね」


 ズルっと倒れそうになる尾浜。

 そしてまた、同じように黄緑も同調し、ワタシも知らない~と言い出す。


「も、もしかして総理大臣も誰か知らない……とか?」


 そんなまさかな……という態度で聞く尾浜。――しかし、青春と黄緑はまたもキョトンとしてる。

 ……知らないようだ。


「この二人、選挙権手に入れても選挙行かないタイプだねえ……」


 半ば呆れ気味の尾浜だった。


「それと今回の話に何か関係でも?」


 青春の疑問はもっともだ。話の内容に繋がりを感じない。


「今の都知事、桜ヶ丘って人なんだけど、間違いなく今回は落選するはずなんだよ」


 ……だからなんだと思う青春。政治に興味もないから、誰が当選しようが落選しようがどうでもいいからだ。


「落選確実な理由はねえ、不倫だとか、汚職だとか、いろいろ週刊誌にすっぱぬかれたからなんだ」


 まあ、ありがちな話だろうと思う。東京をよくするどころか、税金で遊んだり不倫なんてしてたら好感度ガタ落ち。

 選挙は人気投票的な部分もあるし、スキャンダル起こした者に世間の目は冷たくなるだろう。


「……それね、真っ赤な嘘なんよ」

「嘘?」


 スキャンダルが嘘ということだろうかと疑問に思う青春。桜ヶ丘知事は事実無根な話をでっち上げられたという事なのだろうか。


「普通に選挙してたらおそらく、桜ヶ丘知事は再び当選してたはずなんだ。ほかの有力候補なんていなかったしね。でもスキャンダルでそうはいかなくなった」


 だがそのスキャンダルは嘘。何故そんな事をされたのか? 普通に考えれば都知事からの失脚がねらいと思われる。なら他の候補の陰謀?


 そして今までの話を換算すると……


「偽スキャンダルをでっち上げたのは……教団?」


 青春が推測すると、尾浜はゆっくり頷く。


「桜ヶ丘知事が失脚するとなると、有力候補に躍りでる中の一人……達田一門。この男は教団の手のものと噂されてるんだよね」

「……その達田を知事にするために教団は動いてると?」

「そうなるね。達田は教団の、教祖の傀儡のはず。となると、実質都知事は教団がなるようなものさ」


 都知事になって何を企んでるかは知らないが、ろくでもない事なのは察せる。


「スパイとして潜り込んではいるけど、下っ端じゃやはり大した情報は得られない。だから達田と接触してみようと思うんだよね」

「そこから教団へ?」

「そゆこと。教団本部の場所とか吐かせたい。下っ端のオイラはそこまで教えてもらってないからねえ」


 達田経由で教団本部を知り殴り込みをかける作戦。意義はない。

 だが、人間の組織……

 青春自身、悪党は嫌いだが殺すとなると……できるかどうかわからなかった。



 ◇



 ――共信党本部。


 奴らは尾浜達が動く前に、すでに動きだしていた……


 共信党教祖の部屋……そこには半裸の美青年や美少年がある女性を取り囲むように座っている。その中の一人は大きなうちわで女性をあおいでいた。


 女性は妙齢の美女。綺麗でつややかなロングヘアーに、出るとこ出てる抜群のスタイル。露出度が少し多い服装をしている。


 ――この女性こそが……


 共信党の教祖、カオルコである。


 カオルコは優雅にワインを片手に持ち、自らの眼の前に膝まづく壮年に言う。


「その情報は……確かなのん?」

「は、はいいい! 間違いないですカオルコ様! 我が息子が言っておりましたので!」


 壮年は恍惚とした表情で頭を垂れる。


「その息子が嘘を言ってる可能性は?」

「ありえませんんん!! 折檻し、聞き出しましたからあああ!!」

「そ、まあでも? 息子の方も嘘なんかついたら、あんたが教団でどんな目にあうかわからないものねえ?」


 カオルコは視線を動かす。そこには鞭打ちの刑にでもあったかのような跡を、顔や手足につけられていた少年の姿があった。

 彼は涙目で壮年を見つめていた。表情からは絶望を感じられる。情けない姿の壮年を見てか、折檻された苦しみか、この場にいる恐怖からか……あるいは全部か。

 少年はその壮年の息子……そして青春を知っている人物だった。


「茶谷の息子〜間違いないのね〜? 嘘ならどうなるか〜わかってるわよね〜?」


 カオルコの質問にブンブン頭を上下にゆする少年。――そう、この子は茶谷。青春をいじめてた後、助けられ黄緑に下僕として使われてた少年だ。

 

「闇野青春は()()()()()。なら……容易に始末できるかもしれませんわね〜一兎様?」


 カオルコの呼びかけにするりと影から何者かが現る。兎のような長いタレ耳をした、仮面をつけた男……この男こそが、四鬼に近づく鍵……


 妖魔王、一兎いちと



 ――つづく。



「え、青くんの弱点ってそれの事!? ま、まずい! 守らないと!!」


「次回 学園襲撃事件。え!? ま、まじでヤバくない!?」

 

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