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26話  ボスの能力

「あ、がががが!!」

「じいさま!?」


 山田のじいさんは痙攣して鼻血をたらしていた。尾浜はただ事ではないと察する。


 一方の黄緑はあくびして興味なしの態度。

 敵とはいえ、よからぬ現象をまのあたりにしているのだ。少しはうろたえたりするべきところ。

 しかし、妖魔との戦闘に慣れ、メンタル強化された黄緑に怖いものなど皆無だったのだ。


 敵だから心配する必要もないし。そんな感情しか彼女にはなかった。


「う、うあああああああああああ!!」


 爺さんは発狂し、足元に落ちていた鉄パイプを拾い、尾浜と黄緑に振り回しだした。


「じ、じいさま!? ちょっとどうしたんだい!?」

「うざっ……」


 二人は全く反応が違った。

 仲間の豹変に動揺する尾浜は攻撃を避けることしかできなかったが、黄緑は違う。


 拳に魔力を一点集中し、爺さんめがけて放つ!

 拳は鉄パイプを貫き、爺さんの腹を殴打!

 その一撃を受け、爺さんは血反吐を吐きちらす。そして勢いよく吹っ飛び、壁に爺さんは激突した。


 爺さんは白目を向き、失神。

生死はわからない。黄緑の方も、別に爺さんが死んでもかまわないくらいの気持ちで殴っていた。


 相手は人間? いや、正当防衛だし。みたいな軽い考えしか黄緑にはなかった。


「じ、じいさま~!? だ、大丈夫か!? ちょっとお嬢さん!」

「何? 敵に手を抜く必要ないし」

「て、ていうか君動けたのね……」

「あれくらいでワタシをおさえた気になっていた、あんたらの姿はお笑いだったぜ」

「な、なんで急に男口調?」


「「雑談してる余裕、あんの~?」」


 黄緑の背後に気配、振り返ると同時に黄緑はパンチ!

 手応えあり! 拳がとらえた妖魔の頭部が吹き飛び、壁に埋まる。


「ん? キッショ」


 黄緑が気味悪がる。

 無理もない。黄緑が殴り飛ばした妖魔は頭部だけ、目からは血のようなものが流れ、目玉が見えない。髪の毛は蛇みたいで容姿も妖魔というより悪霊のようだった。


「「うわ~酷いな~ぼくちゃんの事気味悪がるなんて~。まあ本当の容姿じゃないんだけどね~幽霊に扮するための仮の姿だよ」」

「何も聞いてないんだけど。興味ないし」

「「冷めた女の子だなあ~。メスガキって奴?」」

「知らんし。まああんたに比べればガキかもね。どうせあんたもジジイでしょ?」

「「さあ? どうだろ」」


 妖魔の頭部はドロリとロウソクのように溶けだす。

 そして全てが溶けて、液体のようになって地面に落ちていく。


「あっ、そっか。仮の姿だもんね。となるとどこかに……」


 黄緑はキョロキョロと辺りを確認して警戒。どこかに隠れて、不意討ちでも仕掛けてくるやも……


「キケーーーー!!」


 じいさんがまたも発狂。あまりのうるささに黄緑は耳を塞ぐ。


「化け物……化け物――!」


 そう叫んだ瞬間、じいさんの頭は爆発するかのように破裂した。

 血しぶきと、あらゆる肉片が飛び、常人ならその光景に吐き気をもよおすだろう。

 2人は常人ではないためそんな様子を見せる事はなかったが。


「どうやってジジイを殺したのかな? 能力?」


 黄緑は普通に、冷静に考えるだけだった。肝が太い。


「「ボクちゃんの力に当てすぎたみたいだね。いやあホントにボクちゃんは強い。強すぎるよ〜」」


 妖魔はケラケラ自画自賛。


「ほざいてなよ」


 黄緑は親指を下に向ける。


「青くんが来るまでもないよ。ここでワタシが仕留めてあげる」

「「言うねえ……なら、やってみなよ!」」


 突然辺りが暗くなる。電灯が消えた? いや、これは……


 少し経つと、明かりは勝手につき始める。

 ……一体なんのつもりなのだろうか?


 視界がはっきりすると、まず黄緑の前にうつった光景は……


 辺り一面血塗られた壁、床、そして……

 足元には何者かの臓器のようなものがたくさんあった。


 踏んづけると血が吹き出し、グロテスクにもほどがあった。

 華の女子高生、悲鳴をあげ泣き叫んでもおかしくない、奇妙で気色悪い空間。


 しかし、わかりきっていたことだが黄緑は……


「うわ、なにこれキモ」


 眉一つ動かさずその一言の反応しかなかった。

 青春と出会う前の彼女はもういない。恐怖といったものは、彼女の感情になくなったのだろう。


「ん?」


 ふと気づく。

 さっきの頭部のみの妖魔と、同じ顔をした人物の姿が近くにあった。


「うん? いつの間に?」

「ンサウョジオタシウド」

「え? なんて? キモい言葉使うなよ」


 妖魔は謎の言語を発っしている。理解不能だが、特に襲ってくる様子はない。


「なに? かかってこないならこっちから行くよ?」


 拳を振り上げる黄緑。

 妖魔は両手を前にだし、またなにか言い出す。


「?! キルスニナニライオ?! ニナニナ」

「さっきからなに語?」


「「いやあ驚いたよ。みんなだいたいこの光景を見たら恐怖に震え、逃げるか、暴れまわるものなんだけどね」」


 ボスの声が響く。

 声のする方は別の方角。今目の前にいる妖魔顔の人間らしき者ではない。


(あれ? そういえば尾浜のおっさんは?)


 尾浜がいない事に気づく黄緑。


(うーん、明らかにさっきの場所じゃないし、また別空間に移動させられたとか?)


 だから尾浜がいなくなってるのかもと、黄緑は推測した。


 ――だが、実際は違う。


 尾浜は近くにいるのだ。


「な、なんだってんだ一体……」


 尾浜はこの状況に狼狽えていた。


「お嬢さんは急に()()()()()()()()()()()()()()話が通じてないように見えるな……」


 黄緑が拳を振り上げた相手は妖魔の顔をした人間だった。

 だが、実際は違う。

 その()()()()()()()……尾浜だ。


 どういう事かと言うと……


「「そうだ、もう一人のおっさんにも能力かけようか。そうしたら仲間割れになる」」


 妖魔のボスは、尾浜に魔力らしきものをぶつけた。


「な、なんだ!?」


 ダメージはない。だが……?


「う、うわああ!! な、なんだ!? 臓器!? 血!? うげえええええ!!」


 尾浜は嘔吐する。

 なぜか? それは尾浜の視界には、黄緑と同じく周囲が血だらけ、足元には臓器の山のグロテスクな空間がうつっていたからだ。


 ――そして、


「う、こ、今度は化け物!?」


 尾浜の目の前には同じように妖魔顔の人物が現れていた。


「ナイモキ。ヨナクハロゲ」

「うわ!? 何言ってんだこの化け物!?」


 またも謎の言語。

 ――一方、黄緑視点では……


 妖魔顔の人物が嘔吐する光景を見ていた。


「ゲロはくなよ。きもいな」

「?! ノモケバノコダンテッイニナ?! ワウ」


 互いに聞いた謎の言語と、妖魔顔の人物の正体。

 ……それは、黄緑視点では尾浜、尾浜視点では黄緑だったのだ。


 謎の言語は、当人からしたら普通の言葉を話しているだけ。だが相手には謎の言語に聞こえ、妖魔の姿に見せられていたというわけだ。


 それがボスの能力だった。

 相手に幻覚などを見せる能力、だが相手は能力を受けた事を認知できない。


 互いを妖魔に見せる事で仲間割れを起こす事を得意としている。

 黄緑と尾浜は仲間ではないが、互いを争わせれば、自らが手を下す必要はない。


 ボスはそうやって外敵を仕留めてきたのだった。


 そして、ボスの狙い通り黄緑と尾浜は互いに潰しあおうとしていた。


 ――そんな時だった。


 この部屋に、ある人物が入ってきた。その人物は辺りを確認し、二人に気づく。


「ンサエネオ」


 ボスのせいで黄緑にはまた、謎の言語にしか聞こえなかったし、妖魔の姿にしか見えなかった。


「新手? まったく!」


 黄緑はその人物の前に立つ。そして先に倒そうとする――


 と、思いきや。


 黄緑はその人物を見て動きが止まる。


「「え? なんだ? どうしたんだあの女?」」


 ボスは理解できなかった。

 黄緑には妖魔にしか見えない相手、攻撃をしかけるものと思っていた。

 だが黄緑はその場で止まり……


 ――ガン!!


 黄緑は自らの額を思い切り殴った!

 額からは血が流れる。


 謎の行動……そして、黄緑は振り返る。


「ワタシをハメようなんて、百年早いよ化け物!!」


 黄緑は手刀を振る。すると、衝撃波のようなものが姿を隠していた妖魔にクリーンヒットした!!


「「があっ!? な、なんでボクちゃんの居場所が!?」」

「舐めた真似してさあ……あんたは青くんの手を煩わせる必要ない。ワタシが仕留めてあげるよ」



  ――つづく。



「謎の言語、逆から読めば普通の言葉になるよ。それで最後に現れたのが誰か、すぐに察せると思うよ」


「次回 光対闇 時系列、少し戻るみたい」



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