22話 第3勢力?
「あんた誰? ワタシに何か用なのおじさん」
突如として現れた、謎のチョビひげ生やしたおじさん。
そんな相手に黄緑は特に驚きもしなかった。
おじさんは口を開く。
「そうそう! 君に用があるんだよ!」
「あっそ。ワタシにはないから。じゃあね」
素っ気なくこの場を去ろうとする黄緑。
「ちょ、ちょっとまってよ話聞いてくれたまえよ! ほら! このダンディーなおじ様フェイスに免じてさ!」
ウインクして、自らの顔をアピールするおじさん。
自分の顔が自慢なのかもしれないが、別段かっこよくはない。
まあ、おじさん趣味な人にはささるかもしれないが……
「キモ……ワタシにはおじさん趣味なんて一切ないから。カワイイ男の子ならともかく……」
ショタコンの黄緑にはまるで意味ないどころか、機嫌をそこねた様子。
「ほう、そういう趣味か。ならあてはあるよ。紹介しようか?」
「結構。ワタシは青くん一筋なんで」
「……《《闇野青春》》か」
その一言を聞くと、黄緑は臨戦態勢をとる。
青くんの一言しか言ってないのに、青春の本名を言い当てた。
知り合い……のような雰囲気は感じない。怪しい、黄緑はそう判断した。
いや、そもそも妖魔のアジトに潜んでいた人間の時点で、怪しさ100%なのだが。
「おっと! そんな警戒しないでよ。噂で知ってるだけなんだよ。名だたる妖魔を仕留め続ける死神少年ってね」
「死神とか縁起悪い。イケメン美少年に改名させてよその噂」
またどこかズレた発言をする黄緑。おじさんはうんうん頷く。
「わかったわかった。そのイケメン美少年とさ、手を組みたいと思ってるんだ」
「手を? そもそもあんた誰なの? 何の目的が?」
「失敬、そういや名乗ってなかったねえ。ダンディー戦士、尾浜則男だよ。そして世界平和のために活動してる団体、共信党に所属してる」
「共信党~? うさんくさ~」
宗教団体か何かと思い、あからさまに怪しむ黄緑。
「なに? そこに青くんをスカウトしたいってこと?」
「そうさ。君もね」
「ワタシも?」
まさか自分もとは思わなかった黄緑は少し驚く。
「なんでまた」
「実力はよーく見させてもらったよ。あれほどの数の妖魔をいとも簡単に仕留める。うちの組織にぜひとも欲しい逸材だと思ってね」
「……」
褒められているが、全く嬉しそうにはしていない黄緑。
感触が悪いと尾浜も感じる。
「もしかして怪しんでる? 共信党はね、妖魔から人々を守る正義の団体だよ? 心配するような事はなんにも……」
「青くん言ってた」
尾浜の説明を遮る黄緑。
「妖魔を知ってる人間の中には、妖魔の悪事に加担してる輩がいるってね」
「おいおい参ったね。おいら達をそんな悪党だって?」
「だって怪しいもん。ワタシが妖魔と連戦してるときも見てただけなんでしょ? 味方にしたいなら加勢の一つでもすればいいのに。まあそれでもそう簡単には信用しないけど」
実力を目文してたのかは知らないが、戦いを静観してた事実が怪しさを際立たせる。
妖魔と戦う組織なら、戦えないわけもないし。
「な、なんかよからぬ雰囲気をピリピリ感じるでござるよ……味方じゃないでござるか?」
この場で蚊帳の外な秋葉。
しかしそんな彼女の発言を無視して、尾浜は頭をかきだす。
「参るね。どうすれば信用してくれ……」
『尾浜! なーにをごちゃごちゃやっとるか』
突然地中からモグラのように、何者かがわき出てきた。
デコの広い、白髪の爺さんだった。
「うげえ、こんどはジジイかよ。はやく青くんの顔見て癒されたい~」
爺さんの乱入に対して、黄緑の反応はそれだけだった。
のんきなものである。
逆に仲間と思われる尾浜の方が慌てていた。
「ちょ、ちょっと山田のじい様!? なんで!? ここはおいらに任せてって言ったっしょ!?」
「ばかもんが。らちがあかなそうだからワシが来たんじゃろ。見ておれ。若い小娘なんぞ簡単に説得してみせるわ」
(何このジジイ。ムカつくな)
自信ありげな山田とかいう爺さんにイラつく黄緑。何を言われようが、説得になぞ応じない構えを見せる。
そんな山田の第一声は、
「おい小娘、相応の金をやるから、闇野青春を裏切り殺せ」
「ああ!?」
黄緑は血管が浮き出るほどにぶちギレた。華の女子高生が見せる表情ではない憤怒。まさに鬼ような形相だった。
山田の爺さんもさすがにびびる。
が、負けじと話を続ける。
「あ、あれか? いくらくれるかって話か? なら百万は……」
「億でも、兆でも! ワタシが青くんを裏切るわけないでしょうが!」
怒りの鉄拳を地面に叩きつける。
地面はえぐれ、落とし穴並みの深さの穴があく。
「舐めてんの? 殺すよ?」
黄緑の目がヤバイ。本気で殺しかねない、そんな表情をしている。
山田の爺さんは冷や汗をたらす。
「お、おい本気か? 友情や愛より金じゃろうが普通。金のためなら人間は何でもするもの……」
「長く生きてそうなのに何にもわかってないんだ。愛は、なにものにも変えられないの」
「バカバカしい。お前程の女ならあんな《《クソガキ》》より、ワシらと組んだほうが何倍もいい思いできるんじゃぞ……」
《《クソガキ》》、完全に黄緑の地雷を爺さんは踏んだ。
目にも止まらぬ速度で、黄緑は山田の爺さんの顎に掌底をぶつけた!
顎の骨は砕け、血を吐き散らす。そして掌底の勢いで上昇……しきる前に爺さんの土手っ腹に怒りの鉄拳をぶち込む!
「ごっえっ!!」
嗚咽し、地面に転がりながら、肌が擦り切れる山田の爺さん。
老人だろうが容赦しない黄緑。
とはいえ、一般人なわけではないしセーフなのだろうか?
「訂正しろ……」
黄緑は倒れてる山田の爺さんの頭を踏みつける。
「誰がクソガキ? 美少年に対してその発言は許されない。お金の価値では測れない、青くんの存在価値は無限大……さん、はい」
「へ、へ?」
「あ、お、く、ん! の存在価値は無限大!」
どうやら繰り返せと言いたいらしい。
読者諸君もご一緒に。
「青くんの存在価値は無限大! 言え!」
「あ、あおく、んの……」
顎割られてるため、上手く喋れないもよう。
だがそんな事情など知ったことではない黄緑。
尾浜はさすがにヤバいと思いわってはいる。
「すまんすまん! この爺さんは過激派すぎるだけなんだ!」
「知らないよ。少なくとも、このジジイのお陰でやっぱりろくでもない組織とわかったし」
元々疑ってはいたが、これで確信できた。
青春の始末を頼む時点で、人々を守る正義の団体だなんて発言は嘘だと。
むしろ妖魔に加担する組織の可能性のほうが高い。
なぜなら妖魔退治を日常的にしてる青春が邪魔だから、始末の依頼をしたとしか思えないからだ。
少なくとも、黄緑はそう思った。
「参ったね。もうごまかせないかぁ。確かに《《共信党は》》、ここの妖魔と組んで悪事を行ってる組織だよ」
「やっぱし……それで青くんが邪魔だってことね。クズじゃん。そんな組織に協力するわけないじゃん。解体してあげるよ」
黄緑は尾浜に向かって構える。
しかし、当の尾浜はそのまま突っ立ってるだけ。
「なに? あんた戦うつもりないの?」
「そうだねえ……おいらは結構強いほうだけど、さすがにお嬢ちゃんには勝てないかな。それに女性に暴力は振るわない主義だし」
フェミニスト主義を掲げる尾浜だが、対する黄緑は……
「あっそ。ならそのまま素直にワタシにボコボコにされるんだね」
まったく容赦するつもりはなかった。
尾浜は耳を疑う。
「え、手を出さないって言ってるのにボコボコにするのかい?」
「うん、敵だし。だいたい男なら殴れるっていう根性もどうかと思うよ実際。真の平和主義で誰にも暴力振るわないとかならまだ好感わくけどね」
「じゃ、じゃあ《《それで》》」
「いや、遅いって」
腕をブンブン振り、今にも殴りに行こうとする黄緑。
「しかしあんたらも考え甘いよ。ワタシは常日頃から戦いの現場では青くん以外信用してないの」
「え?」
「こんな現場で現れた怪しいあんたらなんて、信用できるわけないじゃん」
「信用、信用ねえ……」
突然笑いだす尾浜。
可愛く首をかしげる黄緑。
「なに? 頭くるった?」
「いやね、すでに君、ミスおかしてるんだよ? 闇野青春以外を信用しちゃってるじゃないか」
「はぁ? なにを……」
ズキュウン!!
――と、発砲音が鳴り響いた。
黄緑は腹部と背に痛みを感じた。
確認すると――血がドクドクと流れていた。
背後を確認すると、そこには真っ赤な銃を構えていた……
黄緑の先輩、秋葉の姿があった。
秋葉は笑顔でこう言う。
「ごめんでござる~。なんてね」
「秋葉赤里は、おいらの仲間なんだよ。ごめんねお嬢ちゃん」
――つづく。
「先輩、裏切るとか……ぶっ殺す! でも魔力があるなら青くんが気づくと思うんだけど……」
「次回 青春、和花の行方。時系列戻るのかな? 先輩が何者かくらいはわかるかも」




