20話 黄緑、秋葉チームの行方
青春は無事、現場に着地。和花も傷一つ負ってはいない。
すぐに抱き寄せてた和花を離し、青春は頭を下げる。
「ごめん、急に変なことして。セクハラみたいなものだよね。ただ、あそこから降りるにはああするしかなくて……いや言い訳か。とにかくごめんなさい」
「い、いいよ全然! む、むしろ役得というか……」
平謝りする青春に顔が真っ赤の和花だった。
青春は許してもらえた事に安堵すると同時に周囲確認。
和花が一緒なため、安全確保が第一だ。
今の所特に気配はない。
黄緑と秋葉の気配もない。
(降りた場所は同じ。お姉さんも勝手な行動取るとは思えないし……妖魔の仕業かな?)
ここの支配者といえる妖魔が、意図的に青春と黄緑を分断させたと考えるのが妥当だった。
妖魔の根城、テリトリー。それゆえに自在に地形関係なり、ワープなりをできるのかもしれない。
そして青春達の存在に気づき、意図的に分断させた。
(推測にすぎないけど、もしそうなら相当な手練れかもしれない。サイクロプス以上かも……)
早く黄緑を探し合流しなければと焦る青春。
(お姉さん、秋葉さんとは一緒だろうか? 二人とも無事だといいけど……)
♢
黄緑と秋葉はというと……
とりあえず2人は無事だった。
すぐさま黄緑は秋葉をキャッチし、傷一つ負わずに着地に成功していた。
だが、2人は明らかに例の殺人現場とは違う場所に立っていた。
瓦礫の上に着地したはずなのに、地面は綺麗なタイル。
視線を上げれば天井がある。
上から降りてきたというのに、天井があるなどおかしな話。
特殊な空間に閉じ込められたのかもしれない。
「むむむ? どこでござるかこの部屋は?」
秋葉はキョロキョロ周囲を見渡す。
広く、辺りには特に何もない。
あるのは多くの扉だけ。
……変な空間に閉じ込められた? と、黄緑は察する。
「いやあなんという特殊な体験でござろうか! いやあ新刊のネタになりそうでワクワクでござるよ!」
こんな状況にワクワクしてる秋葉に呆れる黄緑。
「先輩、助けたのにお礼も言われてないんですけど~。ていうか状況わかってます?」
「状況?」
「今、めちゃくちゃ危険な状況なんですよ? 青くんともはぐれちゃったみたいだし、誰かのせいで」
「誰かのせい? はて?」
本気で誰のせいなんだ? と、思ってそうに首をかしげる秋葉。
……黄緑のイライラはつのる。
仕方ないので事細やかに、状況説明、そして自分達の事を秋葉に話すことに。
♢
「はえ~妖魔に、それを討伐する闇野くんでござるか~」
メモを取りながら真剣に黄緑の説明を聞いた秋葉。
「むふふ、いいネタでござるなあ!」
「先輩が書いてるのってBL系でしょ? 使えるのこんなネタ」
「バトル要素いれたいでござるからね~。闇野くんもいいキャラデザでござるし~」
「ちょっと! 青くんをネタにする気!」
それは聞き捨てならないという態度の黄緑。と、思ったら……
「なら相手役、ワタシにして下さいよ!」
ガクッとこけそうになる発言。
ネタにするのはいいのかよと言いたくなる。
ツッコミが不在のため、誰も言えないのだが。
「え~? 夏野氏は男体化しても萌えないでござるよ~」
「しなくていいから。普通に女性のままのワタシと青くんのラブロマンス書いてください」
「嫌でござるよ~」
「最悪、報酬をそれで手打ちにしますから!」
報酬、青春がいつも助ける人に請求するお金の事だろう。
気分しだいだが、基本リーズナブルな額の。
ただ、青春が請求する理由は契約してる妖猫ヒルダの嫉妬を避けるため。
つまり、黄緑は請求する必要はないのだが……
「報酬ってなんでござる?」
「明らかに危険な場所でしょ? だから助けてあげるかわりにワタシに渡す報酬ですよ」
「……つまりお金?」
黄緑は頷く。
「な、なんて後輩でござるか〜!! 先輩にたかる気でござるか! 今までこんなに優しくしてきた先輩になんたる仕打ち!」
「別に大した事されてませんけどね。それに勝手な行動した人、助ける義理もこっちにはないんですよ。だから……」
敵地だというのに、大声で言い争いしてる二人。
案の定……
『おお? 獲物がいたぜえ。一番乗りだなあ』
3メートルはあるかと思われる巨体の化け物が扉を開けて現れた。
全身緑色に角の生えた怪物。
筋肉隆々で牙も鋭く、棍棒を持ち歩いてる。
妖魔の種類で言えば、オークに分類される怪物だろう。
「ボスは早い者勝ちと言ってくれてたし、一番乗りのおれさまがこいつら食い殺していいんだよな」
下品な笑みを浮かべるオーク。気色悪いことこの上ない。
――しかし、
「ちなみに、いくら請求する気でござるか?」
「1万……いや、5万……状況によってはもっとかも」
「が、がめつい!! 5万は高すぎるでござるよ!」
「いやいや、命の値段としたら安いでしょ先輩。それに同人誌の売り上げいいんでしょ?」
オークの出現に気づかず、金の話をしている二人。
この巨体の存在感といえばかなりのもの。足音も大きかったし、誰でもすぐに気づくはずなのに……
「あ、ああ? てめえら状況わかってんのか? なにいつまでもペチャクチャ話して……」
オークはガン無視されてることに憤りを感じるが……
「だいたい、そんなお金とって何に使う気でござるか? なんか欲しいゲームでも?」
「それもいいですね。ただまずは、青くんとのデート代ですかね~。――いやん! 恥ずかしい! でもゲームもいいから報酬増やそうかな~」
「しまった! 失言でござったか!」
「ワタシと青くんの同人誌書くなら5万で手打ちにしますよ」
「5万は決まりなんでござるか!?」
未だガン無視は続いていた……
オークはブチ切れて、動く!
「このガキ共! なら気づかないまま黙って食い殺されるんだな!」
オークはジャンプして二人に飛びかかる――が、
「――うるさい死ね!!」
オークの叫び以上の大声を放ち、黄緑は渾身の拳をオークの顔面にぶちこんだ!
奴の顔はひしゃげる。そして勢いよく回転しながら吹き飛んでいき、壁に激突した。
「ほ、ほぎゃ!? ああああ!?」
あまりの一撃に、声にならない声の悲鳴をあげるオーク。
「だーかーらー、うるさい!」
黄緑は超スピードで奴に近づき、手刀を縦に振る。
それにより、オークは一刀両断!
「ぎぴゃあああああ!?」
哀れな断末魔をあげ、オークはいとも簡単に絶命した。
「必殺、光闇死斬……なーんてね。青くんみたいに剣でやるほうがカッコいいからなんかないかな?」
青春の闇光死斬みたいな名前の技だ。
そこからパクり、もとい、もじった技名なのだろう。
青春大好きな黄緑らしい。
黄緑はオークの存在に気づいてなかったわけではない。わかっていたが、恐れるような相手ではなかったから、嘲笑うように無視していただけだ。
わりと性格悪い。
黄緑はオークを切り殺したため、返り血をいくらか浴びていた。
――軽いホラーのような光景だ。
その状態で、秋葉に笑顔で黄緑はこう言う。
「ね? こんな化け物いっぱいいるんですよ? 守ってあげるのに5万は安くないですか?」
秋葉は、冷や汗かいて……ゆっくりと頷いた。
黄緑は笑顔のまま、
「話は決まった! 青くんと合流して、早く妖魔殲滅だ~」
元気よく手を上げた。
……そんな様子を遠くで、ある人物が見ていた。
「「へえ。……結構強いですね彼女。闇野青春以外にもこんな実力者がいるとは思いませんでしたよ」」
「「ここの妖魔は厄介と聞いてるけど、本当に殲滅しちゃうかもしれませんね」」
――つづく。
「さすがお姉ちゃん、絶好調! 青くんに早く会いたい……」
「次回 妖魔軍団と謎の影。なに? 第三勢力?」




