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【お正月特別番外編】残業終わりに初日の出を


あけましておめでとうございます







「……やっと、おわったー」


 大晦日、誰もいないギルドの受付でナナリーは1人伸びをする。



 受付のお局部長にシフトを差し込まれたせいで本日は遅番、しかも残業付き。ようやく終わった頃にはすでに年を越していた。



 ナナリーは若手ながらギルド長に信頼を置かれ、指名依頼や貴族対応などを任されている。そのためお局部長に目をつけられているのだ。

 それに加え、なまじ器量が良いせいでいろんな仕事が舞い込んでくる。そのためここ最近の祭日や年行事の日はギルドにいることがほとんどである。


 まぁ祝日とかどーでもいいので全く構わないのだが。



「引き継ぎ資料はここに置いて…よし、帰って寝るか」










 ギルドの施錠をし、まだ薄暗い街を歩く。こんな時間だというのに、結構歩いている人が多い。


「……そっか、今日は初日の出になるのですね」



 少し聞き耳を立てその理由に気がついたナナリー。だが気づいたところで大して興味はわかない。


 元日だからといって、出てくる太陽が変わるわけではない。またいつもと同じ日が始まるだけ___







「あれ?ナナリーちゃん?」

「チュン!」



 その時、聞き覚えのある声が聞こえる。


「おや、リナさんじゃないですか。クロまめさんも」



 声の主は今年冒険者になった少女リナとそのペットであるクロまめだった。





「ナナリーちゃんも初日の出を見にいくの?」


 新年の挨拶を交わした後、リナが尋ねてくる。


「いえ、私は残業帰りです」

「そ、それはお疲れ様です…」



 思わぬ答えが返ってきて、リナは言葉に詰まった。

 それからしばらく2人とも無言で歩いていたが、分かれ道に着いた時、リナが口を開いた。





「ね、ナナリーちゃん。一緒に初日の出、見に行かない?」

「今からですか?」

「うん。疲れてるだろうけど、せっかくだから一緒に見たいなと思ってさ」





 そう言われナナリーは悩む。




 確かに疲れてはいる。さっさと帰ってベッドにダイブしたいくらいには。初日の出にも特に興味ないし。



 ただ、せっかくの誘いを断るのも少し申し訳がない。それに、こういう時についていかないと一生見に行かない気がする。




「今ならクロまめくんモフり権付きだよ」

「行きます」



 もふもふの誘惑には抗えなかった。

 年初めから煩悩が多いようだ。









 リナに連れられ、クロまめをモフりながらやってきたのはこの街に時間を伝える時計塔。



「城壁ではないんですね」

「そうだよー」




 城壁に囲われた王都ハイデアでは初日の出は見られない。そのため、この日限定で城壁の上が特別開放され、街の人が登れるようになっている。

 多くの人はそこで初日の出を眺めるのだが、リナは少々違うようだ。






「ここ穴場なんだ。ま、騙されたと思って着いてきてよ」

「騙されました」

「まだなにも見てないじゃん…」



 冗談を言って笑い合いながら2人は時計塔を登っていく。口からポンポンと冗談が出てくるあたり、ナナリーは疲れてハイになっているかもしれない。






 時計塔の上に到着した頃には空はうっすらと明らんできていた。



「日の出は5時くらいって聴いたけど…ええと、時計は…」

「この真上ですよ」

「あ、それもそうだね」



 リナは窓から顔を出し時計を見る。が、巨大すぎる6が見えるだけだった。



「全然わかんない…」

「そりゃそうでしょ。のんびり待ちましょう」



 あくびをしながらナナリーは言う。




 2人でクロまめをモフっていると、遠くの山から太陽が顔を出し始めた。





「お、きましたよリナさん」

「きたね、ナナリーちゃん」



 モフる手を止め窓の外を見つめる。城壁よりもはるかに高い塔の上では周りに遮るものがなく、眩しい太陽がよく見える。



 その光景はどこか非日常感があり、なにより美しかった。リナの言った通り、ここは穴場のようだ。




「…あれ?」





 ふいに、ナナリーの目が潤む。





「ナナリーちゃん?」

「おかしいですね…こんなことで感動するたちじゃないのに」



 そう言いながらも涙はとめどなく流れる。グスグスと泣き始めてしまったナナリーの頭をリナは優しく撫でてやった。




「……いいんじゃない?今日くらいはさ」

「いいんですかね…?」

「いいよいいよ、どうせわたししかいないんだし。

 ……わたしの目では綺麗には見えないからさ」





 それを聞いてナナリーは思い出す。

 このリナという少女は見ている世界が違う。魔力の強さが明るさとして見える彼女の目では、明るい空に黒い丸がただ出てくるだけなのだ。

 毎年必ず初日の出を見ているが、リナはその光景を心を動かせるほど綺麗に思えなかった。




「____だからさ、ナナリーちゃんが感動してくれてわたしは嬉しいよ。連れてきてよかったって思える」



「…それはよかったです」





 ぼやけた目を擦り、ナナリーはその光景を目に焼き付ける。





「こんな綺麗な初日の出、始めて見ました。連れてきてくれてありがとうございます、リナさん。

 ____今年は、いい年になりそうです」




 少し恥ずかしいが感謝の気持ちをそのまま口に出す。それを聞いたリナからは満面の笑みが返ってきた。








 この日のことを、自分は決して忘れはしないだろう。





 ナナリーはなんとなくそう思った。













「じゃ、見るものも見たんで帰ります」

「余韻が全くないね!?」





今年も「リナは魔法が使えない」をよろしくお願いします




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