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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-82 物部かすみ、交霊会に参加する(後編)

物部かすみ、交霊会に参加する(後編)


さて、午後8時を少し過ぎた時に、交霊会を行う霊媒師が登場した。俵京香(たわらきょうか)の話ではその霊媒師は男性だという。だが、見た感じは中性的な印象を与える、肩まで届く黒髪と細く華奢な体格と、モデルか何かやっていても違和感のない、そんな風貌の人物だった。そして、早速集まった女性たちと自己紹介をした時、その霊媒師、名前をアクトと名乗ったが、その声を聞いたとき「栄養失調じゃねえの?」とツッコミを入れたくなった物部かすみである。それ位にか細い声で自己紹介をした。


 霊媒師アクトが行う交霊術は、俗に言うチャネリングと言う方法である。チャネリングの方法は色々とあるようで、例えば自分に霊体を憑依させて口述させるとか(要するに恐山のイタコ)、自動書記とか自動筆記と呼ばれる自分の意思に関係なく自分に憑依した霊体に文字や絵などを描かせるとか、あるいは自身がトランス状態に陥って霊体と対話するなど、様々な種類があるようだ。そして霊媒師アクトは、自身がトランス状態となり霊体を憑依させて口述することを得意とするらしい。そこで、部屋に用意されているダイニングテーブルに載っている彼女たちの宴会の残りを急ぎ片付けて、その周りに人数分の椅子を用意して座ることにした。霊媒師アクトは、早速持参してきたキャリーケースから底の浅い硝子ボウルを取り出しテーブルの上に置いて、その中に何やら液体を注いだ。そして、ガラスボウルの中に1本の少し太目の蝋燭を立てて、そこにマッチで火をつけた。それから部屋の電気を消して、各々霊媒師アクトから指示された通りに、隣の人と繋いだ手をテーブルの上に置き、目を閉じるように言われた。かすみは何故かテーブルの片面を一人だけで占有しており、丁度霊媒師アクトの正面に対した。他の4人はかすみから見てテーブルの両サイドの角に近い所に座る形となった。そして、愈々(いよいよ)交霊会が始まった。


 およそ30分の間、霊媒師アクトは何やら呪文のような言葉を只管唱え続けていたが、それから暫くすると、突然目の前の蝋燭が揺れ出した。皆は何かが現れたのかと期待の目で蝋燭の炎を見続けた。ただし、一人を除いてだが。かすみは、そこに何かが現れた気配を全く感じておらず、蝋燭が揺れたのは、液体の沸点が低くそれが蒸発する時に対流を生んだからではないかと推測した(かすみは、液体が恐らくアルコールで、その匂いを誤魔化すために何か香油を混ぜていると予測)。と言うのは、蝋燭が揺れ出す少し前から(ほの)かだがいい香りが漂うのを感じたからである。まあ、手が込んだことをするんだなー、と一人呑気に考えているかすみである。しかも、「もしかして、うちらの降霊術もこんなパフォーマンス入れたらええんとちゃう」と想像したりすると、何やら楽しくなってきたのだ。ただし、顔には出さないように注意は怠らなかった。


 そして交霊会が始まってから1時間ほどした時、霊媒師アクトが突然声を張り上げた。これにはその場にいた全員がビックリして、後ろに倒れそうになったため、慌てて握った手をしっかりと握り締めて転倒を防いだりした。そして霊媒師アクトだが、蝋燭の薄明かりからも分かるくらいに、かっと見開いた眼が何やら血走っているように感じられた。そんな表情を見た女性達は、みな息を飲んでその後の成り行きを静かに見守った。


  「わ、た、し、は、ね、あ、ん。

   れ、い、か、い、か、ら、き、た」


何かネアンとかいう霊体が入ったようだと、かすみは隣の山本明日香に呟いた。先ずは、この交霊会の呼びかけ人である京香が霊媒師アクトではなく、ネアンと言う霊体とコンタクトを取ることにした。


  「ネアン様、私は俵京香と言います。

   一つ聞いても宜しいですか?」


答える代わりに頷いて返事したネアン(?)。京香が尋ねたのは自分の今の仕事について、もう1店舗店を出すかどうか悩んでいるということでその相談であったが、これにはかすみは「殆ど、占い師やんか」と又も心の中でツッコミを入れていた。他の女性達も京香に倣って、今の仕事が自分に向いているのかとか、職場の人間関係の悩みをネアン(?)に相談した。そしてかすみだが、かすみは特に何か悩みとかがある訳ではなく(あるとすれば、母親からの干渉くらいか)、ただ、少しだけ悪戯心が芽生えたため、ある質問をぶつけた。


  「ネアン様、私は物部かすみと言います。

   私は特に仕事の悩みとかはないですが、

   一つだけ聞きたいことがあります。それは...」


霊界ってどういうところなんでしょうか?とストレートに質問した。当然かすみはその答えを知っている。勿論、死後の世界と言うベタな答えは期待していない。そこで、そう言う意味ではないと付け加えておいた。すると、


  「・・・」


無言になった。いやいや、何かあるやろ、例えばお花畑が広がっているとか、川があるとか、とまたもや心の中でツッコミを入れていたかすみだが、まさか無言とは。それとも、質問の意図が伝わってなかったのかな、と思い直して、もう一度尋ねた。


  「ネアン様、質問の仕方がよくかなったでしょうか。

   例えば霊界って、よく聞く三途の川とかが

   あるんでしょうか?」


すると、「ある」とだけ答えた。それ以上でも以下でもない。それを聞いた途端、かすみは「ぷっ」と含み笑いを漏らしてしまった。その時、周りからの視線を感じたため、慌てて、「ごめんなさい。緊張していたせいか、咳が出てきちゃいました」と恐縮した体で俯いた。ちなみに、心の中では「やばかったー」だったが。そして落ち着いたところで、「後は、私からは何もありません」と答えた。


 こうして、およそ30分程の霊体との対話が終わって、無事に交霊会は幕を閉じた。女性達は霊媒師アクトを労い、京香が送ってきます、といって霊媒師と一緒に外に出て行った。さて、かすみである。霊媒師が部屋を出た途端、これまで抑え込んでいた物が一気に吐き出され、その場で只管腹を抱えて笑い転げるのだった。そんなかすみの様子を見ていた他の3人は、唯々唖然としてかすみを見つめるだけだった。漸くかすみが落ち着いたところで、


  「ご、ごめんやで、みんな。

   あ、あかん、思い出したらまたアカンわ…」


と言って、再び笑い転げだした。それを見ていた明日香が「かすみ、しっかりしいや!」とかすみを軽く蹴飛ばした。谷田美鈴と村上希美は、手で突っついて楽しんだり、殆どかすみは皆の玩具(おもちゃ)状態であった。そのうち、見送りに行った京香が戻って来たが、部屋の中の異様な雰囲気に、もしかして霊体がかすみに憑りついたのかと思い、その場で息を飲んだ。だが、かすみが笑い転げている様子から、それはないと察したところで、何が起きたのかをかすみを軽く足で突っつく明日香に尋ねた。明日香も訳が分からず、お手上げポーズで答えるしかなく、それでもかすみを足で突っつき続けた。


 漸くかすみが落ち着いたところで、一体かすみに何があったのかを代表して明日香が尋ねた。だがその前に、かすみから、各自の質問に対するネアン(?)の回答についてどう思ったかを尋ねた。すると、


  「まぁ、なんかそんな気はしてたかな〜って

   感じやったね」


とは美鈴の回答。うちも同じかな、と同意したのが希美と京香。明日香は、


  「うーん、まぁ普通?って感じやけど、

   あの雰囲気やとなんとなく

  『そやねんな』って信じそうになるわ」


と告白した。そしてかすみである。かすみが降霊術を出来ることは既にこの場の全員が目にしており、そのため実際にあの霊媒師に霊体が憑りついたのかどうか、まずはそれが気になったようだ。すると、


  「いやいや、霊体の『れ』の字も見えへんかったで」


とストレートに告げた。すると、一同何故か無言で頷いた。みんなもそう感じてたんだ、と思うと、また何やら笑えてきそうになったので、ここはじっと我慢した。そして、京香には、あの霊媒師は一体どうやって知り合ったのかを尋ねた。確か店の常連とか言っていたけど、それにしては自ら霊媒師です、と言ったりするかなと疑問を口にしたのだが、やはりと言うか、


  「うん、かすみの言う通りでな、

   最初は普通に店来てご飯食べて

   酒呑んでただけやってん。そのうち誰かが

  『あ、霊媒師のアクトさんですか?』って声かけてな、

   それであ〜、この人霊能力者かなんかなんやって

   思ったんよ」


と言うことのようだ。恐らく声を掛けた人間はアクトの仲間だろうと予想した。それにまんまと引っかかったのが京香であった。と言うことをかすみは、皆に語った。すると、京香も含めて「やっぱな〜、ニセモンっぽかったよな〜」となった。まあ、1万円は今の自分らからすると大金ではないし、今後の戒めにと言うことで、その授業料を払ったと思ったらいいんじゃない、とかすみは伝えた。だが、それでは彼女たちが可哀想なので、かすみはサプライズを行うことにした。それは、彼女たちに実際に霊界を見てもらうということである。もしここに玲が居たら、安易に霊界に触れるなと間違いなくかすみを叱りつけただろう。だがかすみとしては、少しでも正しい霊界の姿を知って欲しいのと、しかしある程度は恐れて欲しいのと、そんな気持ちがあったのは事実だろう。そこで、少し離れた所に降霊転移門を設置した。それから彼女たちに霊視グラスを手渡してかけてもらった。すると、


  「え、な、な、なにアレ!?

   なんか変な形した門みたいなんあるんやけど!」


これはこの世とあの世を隔てる門だよ、とかすみは説明した。そして、


  「ここから覗いたら、

   向こう側が霊界になってんねん」


と言いながら自分で首だけ突っ込んだ。それを横から見ていた美鈴は、


  「ちょ、ちょっと、か、かすみ、く、首ないやん!!」


と叫び出した。慌てて他の子も美鈴の傍に来てかすみの方を見ると確かにかすみの首が無い。それからかすみが首を引っ込めると元通りになった。まるで手品を見ているかのようである。皆も見て見たら、とかすみに誘われて、恐る恐る近寄って覗き込んだ一同。そして直ぐに頭を引っ込めて元の世界に戻るや否や


  「か、かすみ…あ、あそこが霊界なん?

   音もせぇへんし、霧でなんも見えへんけど…」


  「うん、そやで。あ、気ぃつけなあかんのが、

   そこ入ったらもう戻られへんねん。

   ただ、ここに置いたこの門を向こうでも

   設置できたら帰ってこれんねんけど、

   それできんのは、うちと相棒だけやからね」


と脅されたため、一同は降霊転移門から一歩後ずさりした。そのとき希美が、戻って来れないとどうなるのかかすみに尋ねた。すると


  「普通の人やと、多分半日くらいで

   死んでまうらしいわ。

   うちはまぁ、1週間くらいやったら

   平気やけどな」


とかすみに言われた途端、一同更に後ずさりした。それからかすみは降霊転移門を解除して、霊視グラスを回収した。そして少し落ち着いたところで、明日香がかすみに対し、


  「かすみ、あんたホンマ変わったな。

   なんか別人みたいやで」


と言うのに合わせて、一同、うんうんと頷いた。うーん、確かに霊界に迷い込んでから、自分の中の何かが変化したのかもしれないが、でも今の自分も高校時代の自分も全く変わってないと思うのだった。尤も、中身が別人は一人知っているのだが、それは彼女達には当然言わない。そうか、中身がおっさんの玲と一緒だからかな、などと一人心の中で楽しむかすみであった。そして、先程の交霊会の話に戻ると、


  「結局な、交霊会で呼び出されたっぽい霊体って、

   ここみたいな霊界のこと知らんから、

   なんも答えられへんかったんやろね。

   てか、多分事前に調べてた内容と

   全然ちゃう質問来たから、

   パニクってもうてたんちゃう?」


と推測したが、恐らく間違ってはいないだろう。余談だが、この交霊会以降、京香の店に霊媒師タクトが訪れることはなくなったという。恐らく、自分は霊媒師と(うそぶ)いて、方々でこういった偽の交霊会を催して金をとる、そんなことばかりしていたのだろう。まあ、かすみとしては、1万円で余興を楽しんだ、と言う感覚なので別に悪い気はしなかったのだった。


 さて、十分に夜も更けてきたところで、彼女たちはレンタルルーム前で別れて、それぞれの実家に帰って行った。かすみは帰る風を装って、暗闇の中、自宅のある美土路神社に転移していった。

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