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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-69 M&M心霊ファイル5: 近衛亜寿沙のケース (後編)

M&M心霊ファイル5: 近衛亜寿沙のケース (後編)


東洛とうらく総合大学の心霊サークルで集団ヒステリーを引き起こした謎の心霊ビデオ[心霊怪動画蒐]。その心霊ビデオを制作・販売しているビデオ制作会社による取材が行われる当日、最神玲と物部かすみはM&Mの制服に身を包んで、再び東洛総合大学の心霊サークルの部室にやって来た。待ち合わせ時間は午後2時となっていたので、その少し前に到着した。ちなみに今回も前回同様、ここへ直接転移して来た。そして、玲とかすみは、かすみの何時もの謎の儀式をせず、そのまま部室に入って行った。室内には、既にビデオ制作会社のスタッフが来ており、更になぜか心霊サークルのほぼ全員がそこに集まっていた。かすみは、「こんな狭いところによく入れたな、こいつら」とぼやく位にほぼ一杯一杯な状況である。それから、玲とかすみは、ビデオ制作会社のスタッフとそれぞれ自己紹介することになった。


  「私、映像制作会社ジーエックスで

   ディレクターをしております山崎と申します。

   そして…」


  「上本ハンナです。よろしくお願いします」


と言ってその場で名刺交換がなされた。ちなみに、インタビュアーはハーフ系の女性タレントの上本(うえもと)ハンナであるが、実は心霊サークルの男性部員は、全員彼女目当てに集まっていたのだった。取材後に彼女からサインをもらう部員を目の当たりにしたかすみは、一言「アホかこいつら、一体何しに来とるんじゃ」とお冠になったことは想像に難くない。さて、取材は本来かすみと近衛亜寿沙の二人で対応するのが映像的にはベストなのだが、かすみがポロっと変な事を言わない保証がないため、玲と近衛亜寿沙の2人が取材を受けることになった。一応その前に、彼らは基本的に顔出しと所属に関してはNGとしてもらった。玲とかすみとしては、M&Mの名前を出してもらう方が宣伝になると思われるが、残念ながら彼らはそこまで熱心に営業をしている訳ではない。なぜなら今の所、彼らの中では [神社の仕事]>[M&Mの仕事]と言う関係があるためだ。そして、個人の名前については漢字の方を変更してもらうことでOKとした。近衛亜寿沙についてはモザイク処理がされないままの姿でビデオに収録されているが、今の姿とはかなり印象が異なるため、ビデオに関しては問題にしないということになり、そして取材が始まった。なお、取材は会議用テーブルを挟んで片側に玲と近衛亜寿沙、テーブルを挟んだ反対側の玲の正面に上本ハンナと撮影も担当する山崎が座って行われた。


  「最後の映像に映っていた女性があなたですか?」


と言って、上本ハンナはまず近衛亜寿沙に話を振った。近衛亜寿沙は無言で頷く。その後撮影された日時と場所の確認が行われ、その時に何が起きたのかについての質問に移った。そこで例の映像のように、途中で彼が居なくなり、どこを探しても返事がなく不安になったので、警察に連絡して捜索してもらったことを話した。そして更に、


  「彼も私も、そのときはビデオとかスマホでの

   映像とかは全く撮ってなかったんです。

   ですから、どうしてあんな映像が

   撮れたのかが分からなくて」


と話しを切り出した。そこで玲が、


  「すいません、あの最後の映像は

   どこからか送られてきたんですよね?

   勿論、どこの誰とかまでは詮索しませんが、

   送り主の住所とかはありませんでしたか?」


と上本ハンナではなく、ディレクターの山崎に向けて質問した。すると、


  「えー、実は最神さんとのメールの

   やり取りでも聞かれてたので、

   こちらも念のために確認したんですよ。

   そしたらですね…」


と言って山崎が語ったのは、封筒には手書きで制作会社の名前と住所が記載されていたが、差出人は何も書かれていなかった。ちなみに消印は都内だったという。ただし、そういう差出人不明の映像は結構投稿されることがあり、しかも意外と使えるものがあったりするのでそのまま採用することは多々あるということだ。実はこういう映像では、投稿者に謝礼を支払うのだが、差出人不明の場合は支払う必要がないため、制作会社としては美味しい映像なのだという。今回もそんな感じで送られてきて、ただしメディアはメモリーカードだったという。ちなみに、玲はデータの日付は何時なのかについても事前にメールで問い合わせていたが、データが記録された日は、まさに近衛亜寿沙と三上裕樹が問題のトンネルに行った日付であった。しかも時間は、近衛亜寿沙が三上裕樹を見失ったまさにその時刻と同じであった。この事実を聞いたかすみは、思わず「あっ」と叫びそうになり、慌てて口を手で押さえる仕草をしたのだが、上本ハンナがかすみに向きかける時に、玲が山崎にもう一つ質問を挟んだ。


  「あと、あの映像の背後に流れている音楽

   と言うか話声みたいなものですが、

   あれって山崎さんたちが後から

   加えたものなのでしょうか?

   それとも、その映像データに

   含まれていたのでしょうか?」


これに対して山崎は、


  「ナレーションは確かに後から加えますし、

   効果音も入れることはあります。

   でもあの映像の背後にあるような、

   何かくぐもった声とかについては、

   こちらは何もしてません」


と断言した。そうすると、やはり誰かが意図的にあの召喚術を映像に組み込んだのだろう。そのとき、上本ハンナが玲に対し


  「最神さん、あの音声か何かですが、

   あれって何なのかご存じなのでしょうか?」


と尋ねたので、


  「あの音声の正体については、多分、説明するよりも

   見た方が早いと思うんですが..」


と言って、玲は何時もの霊視グラスを2つカバンの中から(召喚して)取り出し、彼らの前にそれを差し出した。上本ハンナは最初、玲が何をしているのかが理解できなかったが、玲が取り出した奇妙な眼鏡を見た途端、「あ、これって、もしかして心霊眼鏡じゃないですか?」と思わず目を丸くし、身を乗り出しながら玲に問いかけてきた。あー、確かあの時のユーチューバーも心霊眼鏡が噂になっているとか言ってたけど、出任せではなかったんだ、と思った玲は「これは僕らが開発した物で、正確には霊視グラスと僕らは呼んでいます」と言って山崎と上本ハンナに手渡した。ちなみに、霊視グラスについては、実は心霊系ユーチューバー界隈で一時期話題になったことがあるのだが、情報の出所が怪しかったりして山崎は眉唾物とみていたのだ。それが目の前に現れたため、山崎と上本ハンナは疑心暗鬼になりつつも面白い映像が取れればOKと言う立場から、玲の言葉に従うようにした。そして玲は、大画面テレビに問題の映像を映してもらうように心霊サークルのメンバーにお願いした。問題の映像がテレビに映し出されて暫くしてから玲は


  「ちなみに、ビデオに映るかどうかは

   分かりませんが...」


と言い終わらないうちに、玲の背後に召喚された霊体が現れたのだ。それを霊視グラスで見ていた上本ハンナは「キャー」と叫び声をあげ、山崎も「な、何ですか、あ、あれは?」としどろもどろになりながら玲に尋ねた。


  「僕の背後に霊体が現れたと思うんですが、

   先ほどの映像に流れていた話し声と言うか

   歌と言うか、あれはこの霊体を降霊する

   呪文みたいなものなんですよ。

   ちなみに、僕は除霊することが出来るので、

   この霊体もですね...」


と言い終わらない内にお見送りした。ところで出現した霊体がなぜ玲や他の人達を襲わなかったのか?それは玲がインタビュー前にこの部屋全体に降霊召喚門を予め設置しておいたためである。何れこの映像を流すことになるのは分かっていたので、予防措置として設置したのだ。これによって、その場に出現した霊体は身動きが取れず、そのまま霊界に戻された、と言うことであった。そして、玲は


  「山崎さんには申し訳ないですが、

   このビデオは回収した方が良いかと思います。

   そうしないと被害が広がる危険性がありますから。

   あるいは、最後の部分の音声をカットするとか、

   そうすれば霊体が出現することはないですから、

   どちらかで対応することをお勧めします」


勿論、僕に販売停止とかする権限はないんで、と付け加えた。



 こうして取材は何とか無事終了となったが、上本ハンナは玲に「私の体のどこかに霊体が憑いてることはないですか?」としつこく近寄って聞くので、かすみが思わず間に割って入って対応することになったりした。そして玲はと言うと、ディレクターの山崎から


  「すいません、最神さん、一つお願いがあるんですが」


と言ってある提案をされた。それは心霊ビデオにつきもののお祓いに関しての相談である。特にビデオ素材や依頼者に稀に霊が憑りつくようなのでそれをお祓いして欲しいと提案されたのだが、玲はその申し出を断った。理由は単純で


  「申し訳ありませんが、山崎さん。

   僕とかすみは除霊と降霊は出来ますが、

   お祓いは出来ないんです」


と言うことである。山崎はまさか断られるとは思っていなかったようで、「え、勿論お祓いの費用はちゃんとお支払いします」と食い下がったが、玲もかすみもお祓いと降霊、除霊は別物と考えており、明らかに霊体が憑りついているのであれば、それを有料で除霊しますよ、と丁寧に説明してようやく納得してもらえた。ちなみに、玲の説明で降霊と言う言葉が出たのを聞き逃さなかった上本ハンナは、「降霊術が出来るんですか?」と興味津々の様子で尋ねてきた。そこで、玲は「何かしら霊と所縁の品があれば、有料ですが降霊できますよ。ただし、霊体というか魂が転生してなければですが」と言って、すかさず横からかすみが「降霊の場合は5万円頂戴してます。あ、ちなみに、除霊の場合は10万円です」と営業スマイルで説明を加えた。どうもかすみは、上本ハンナが玲に接近するのを警戒しているようだ。


 とりあえず取材は終わったので、ディレクターの山崎と上本ハンナは、そのまま東京に帰って行った。彼らが部室から去ったのと同時に、そこに居合わせた男子部員は蜘蛛の子を散らすが如くどこかに消えていった。すかさずかすみは、「全く、あいつらは何しに来てたんだ!」と更にご立腹になったのは言うまでもない。そして、この時の取材の様子は、部員の一人が録画しており、後日新入生の勧誘で使われたことは言うまでもない。



 さて、取材を受けてから数時間後、玲とかすみは美土路神社の自宅に転移で戻って来た。早速自宅のリビングで寛ぎたいところだが、玲もかすみも今日の取材で特に真新しい情報は得られなかったことで少し落胆していた。だが、全く何も無かったかというとそうではなく、問題の映像を収めたメモリーカードがビデオ制作会社に()()()で宛名が記された封筒に入れて郵送されてきたということは、間違いなく誰か(しかも日本人か?)が関与していることを示唆している。これは、前回かすみが扱ったケースとは全く異なる点である。そして、最後に映ったあの足元、円空、彼が何かしら関わっていそうな気がどうしてもしてしまう。だが、彼に尋ねたとしても、恐らく「自分は生者がどこに居るのかはわかるので、それで見に来ました」と言い逃れるだろう。それ故に、何か決定的な証拠でもない限りは話を聞くのは難しいと踏んでいる。それから、恐らくこれはもしかしたら最大の成果なのかもしれないが、あの映像が撮影された場所は例の降霊転移門が設置されたところであり、その映像に召喚術を組み込んで霊体を降霊させるということは、これらには何かしら関係があるのではないかという点である。もしこれらが繋がったとしたら、そこには一体何が現れるのか、何が起きるのか、玲もかすみもその答えは分からないが、少なくとも彼らに対して大きな影響を及ぼすことは間違いなさそうであった。


      ~~~~~~~~~~~~~~~


 最神玲と近衛亜寿沙とのインタビューを終えて東京の事務所に戻ったディレクターの山崎とタレントの上本ハンナは、早速今日撮影した素材をチェックすることにした。思いがけず霊体が現れたときにはどうなるかと冷や冷やしたが、玲が除霊したお陰なのか霊体は消えて無くなった。もしあれがマジックではなく本当に幽霊であれば、彼らはかなりの掘り出し物だぞ、と何やら皮算用をし出す山崎であった。そんなことを考えつつ、自分のパソコンにデータを取り込みながらモニター越しにその時の映像をチェックしていた山崎は、


  「おー、映ってるよ、ハンナちゃん。ほら、見て見て」


と言って上本ハンナを呼び寄せた。上本ハンナは「へー、確かに何か映ってますね。でも、逆に嘘くさく感じませんか?」と疑問を呈した。確かにこのままだと「やらせ」とか「創作、CG」と言われそうな気がしなくもないのだった。それ位に鮮明に若い男性の霊体が映されていた。そこで、山崎は画素数を下げたりコントラストを調整したりして、それらしい雰囲気に仕上げたのだった。ただ、


  「なー、ハンナちゃん、これってさ、

   あの映像を見ると出てくるんだろ?

   それを何かさ、売り文句と言うか

   そんなのにしようと思うけど、どう思う?」


  「いやー、でも何時でも出てこられると、

   流石に気持ち悪いですよ。

   それを売り文句にはちょっと引きますね」


それもそうだな、と言うことでこの話はここで終わった。その後彼らは暫し雑談をしていたが、上本ハンナが


  「そう言えば、最神さんと物部さんの

   衣装というか制服でしょうかね、

   あれってロムリアですよ」


と山崎に話した。「ん、それがどうしたの」と言う顔でキョトンとする山崎だが、上本ハンナはモデルもやっており、ファッションについても色々と勉強していたので、実は彼らに会った時に直ぐに分かったのだという。


  「全身ロムリアの衣装だと、数十万は下りませんよ。

   なのに、除霊や降霊の費用が数万て、

   おかしくないですか?」


確かにブランド物に身を包んで除霊やお祓いで数十万円を要求するような霊能者を何人も知っている山崎からすると、玲とかすみの提示した費用は安過ぎるのである。実は彼らはセレブなのかと思われるが雰囲気からするとそんな感じはない。では彼らは一体何者なのか?これはひょっとして、面白い企画が出来そうだと、また皮算用を始めた山崎であった。いやいや、そんなことを考えるよりももっと大事なことが。それは、発売されたばかりのDVDをどのように扱うべきか?これに関しては彼らに決定権はない。そこで、ジーエックスの社長兼プロデューサーである鬼之口辰馬(きのくちたつま)に本件に関する対応を聞くことにした。その結果はある意味予想通りと言うべきか、現状維持、と言うことだった。理由も単純で、映像が流れる前に警告を出している訳で、それを承知で映像を見るのだから自己責任だろう、ということだった。


 ところがその後、問題のDVDを見た人達からの問い合わせが急増し、加えて心霊系ユーチューバー達も騒ぎ出したりしたため、上層部もこの事態を重く受け止めるに至り、止む無く商品の回収と販売休止とすることにした。最終的には、玲が言っていたように、最後の部分の音声をカットすることで回避できることは分かったので、そのように編集し直して再出荷された。なお、一部不心得な者がパソコンに何らかの方法でデータとして保存したり、あるいは直接テレビに移された映像をビデオで撮ったりしてそれを動画投稿サイトにアップしていたことがあった。だが、この素材を見たところで何かが起きるということはなく、結果販売会社が広めた噂ではないかということで沈静化していったのであった。ただ、玲が出した霊視グラス、あれはその後色んなところで模造品などが出て問題になったのだが、それはまた別の話。


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