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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-68 M&M心霊ファイル5: 近衛亜寿沙のケース (前編)

M&M心霊ファイル5: 近衛亜寿沙のケース (前編)


4月に入って1週間経過した頃、美土路神社の社務所の正面に見える宝物庫の傍では、満開のソメイヨシノが咲き誇っていた。最神玲と物部かすみは、その日も何時も通り社務所にて雑務を熟していた。そんな玲とかすみだが、彼らがこの神社に来てから早くも1年経った。振り返れば、この1年間いろんなことがあったが、でもこうしてまたこの桜を見ている自分がいる。新しい季節、新しい自分。来年の今頃もこの景色を笑って迎えられたらいいな、とそんな風に思いながら何となく玲が「かすみ、もうここに来て1年何だね、何だか早い気がするけど」などとかすみに話しかけた。かすみは「まあ、そうなんだけど、玲、手が休んでるよ」と注意されてしまう。少しはこの余韻に浸らせてよと玲は抗議したくなるが、かすみに逆らうと色々と面倒なので黙って作業に集中した。


 その時、玲のスマホに着信が入った。マナーモードにしているので単にスマホが振動するだけなのだが、発信元を確認すると東洛(とうらく)総合大学心霊サークルの前部長である関健太郎からであった。横にいるかすみに「関君から電話だ」と言ってスピーカーモードにして電話に出た。


  [もしもし、関君、どうしたの?]


  [あ、最神先輩、ご無沙汰してます]


  [久しぶりだね。ところで関君って、大学卒業したよね?

  てことは、サークル絡みではないのかな?]


  [えーとですね、はい大学は卒業しまして、

  今は社会人やってます。

  ただ、サークル絡みではあるんですよ。

  新しい部長が竹内斗真(たけうちとうま)になりまして、

  彼から相談を受けたんですが、

  これは絶対先輩絡みだろうということで、

  電話させてもらってます。

  それで相談受けた内容ですが…]


と言って彼が語ったのは、次のような不可解な話であった。


 3月下旬のある日、今年の新入生のサークル勧誘に向けての作戦会議が、新2年生が中心となって行われていた。そして幾つか企画案が出た中で、最近新しく出た心霊ビデオを上映するのはどうだろうという企画が提案され、先ずは試しに自分らが見てから判断しようということで、即席の上映会が開催されることになった。ちなみに、心霊系ビデオは主にレンタルするか、ネットで視聴できるオンデマンドで済ませる場合が多いのだが、特にお気に入りと言うか歴代の心霊サークル部員がコツコツと集めてきたシリーズ物は、部費で購入するとか個人で購入して寄付するなどして、ビデオラックにコレクションがずらりと並べられていた。部員はそれらを自由に借りて鑑賞できるのである。そして、ある新2年生部員が、心霊サークルのコレクションにもなっている「心霊怪動画蒐」の最新刊が発売されたという情報を受けて、早速部費で購入して部室にある大画面テレビで皆で視聴することになった。


 1時間程して最後の動画に話が移った時、画面に視聴注意の警告メッセージが出て、部員たちは何やら興奮し出した。こう言うのは結構お宝映像だったりするんだよな、などと訳知りなことを言う部員がいたりしてその場は盛り上がったのだが、最後の映像の視聴途中に新2年生の近衛亜寿沙(このえあずさ)が口から泡を吹いて、更に白目をむいて床に倒れてしまった。そして、同じタイミングで複数人の部員が吐き気や頭痛を訴えるに至り、どうやら集団パニックに陥ったらしいのだ。特に近衛亜寿沙の様態の異様さから、一旦上映を中止し、救急車の出動を要請したのであった。そしてその出来事以降、近衛亜寿沙は大学に来なくなり、部員一同心配しているのだという。そこで、玲とかすみにこの集団パニックの原因が何なのか、そして近衛亜寿沙に一体何が起きたのかを調査してほしい、と言う依頼であった。


 関からの電話を切ったとき、かすみは開口一番、


  「全く、あいつら、心霊現象には注意しろよと

   口が酸っぱくなる位に言ってたのに、

   全然人の話を聞いてないなー」


とボロカスに言うのである。まあ、これもかすみの親心というか、彼らを心配してのことなのだが。何れにしても、こちらでは何が起きたのか全く予想がつかないため、週末に東洛総合大学の心霊サークルの部室に向かうことを、玲は関から聞いた現部長の竹内の連絡先に電話で話しておいた。



 そして今、玲とかすみは、何時ものM&Mの制服に身を包んで、心霊サークルの部室の前に来ている。ちなみに今回は、ここへは直接転移して来たのだ。実は大学構内には人が寄り付かない場所とかが結構あり、ここ心霊サークルの部室の裏側は、高い建物に囲まれた日当たりの悪い場所であることから、人通りもなく、かと言って袋小路ではないので、そこに転移してから出てきても怪しまれる心配は殆どない。そしてかすみは、ノックもせずにいきなり


  「邪魔するで」


といつもの挨拶をした。そのとき、部室に居た誰かが


  「邪魔するんやったら、帰ってやー」


と応じたのであった。それに対しかすみは、


  「あいよー」


と言って、一旦外に出て、また部室に入って行った。何だ、この一連の流れるような動作は、と玲は思わず見惚れて拍手を送りたくなった。それよりも、誰がかすみの相手をしたのかが気になったので、かすみと一緒に部室に足を踏み入れた。すると、


  「あ、物部先輩、お疲れ様っす」


と体育会系の挨拶をしたのが、新2年生の仁多牧省吾(にたまきせいご)であった。実は彼はかすみと同じ関西の出身であり、かすみの挨拶はよく知ったネタだったので、自然とそれに反応したのだという。ところが、かすみはその反応がいたくご満悦の様子で、「なかなか、言い返しだったよ、仁多牧君」などと彼を称賛するのだった。玲の心の中は「うーん、何だろう、この人たちは」であろうか。その後彼とかすみは、何やら妙なトークを展開しており、「このボケならツッコミはこうやろな」、「いやいや、先輩、こうとちゃいます」などと、最早玲には未知の世界になっていたのだった。そして漸くかすみが満足したときに、改めて今回の依頼についての確認をし、まずは問題の映像を見ることにした。ところで、部室内には仁多牧と部長の竹内の2人だけだったが、彼らも一緒に鑑賞するということで、4人で見ることにした。



 1時間ほどの視聴をしていよいよ問題の動画が映し出されたとき、かすみは何やら興奮した面持ちで玲の顔を見て、


  「あれって、亜寿沙だよね」


と叫んだ。玲は、目の前に映し出された映像を瞬きせずに凝視したまま、かすみの問いかけに強く頷くだけであった。そう、画面に映し出されていたのは、近衛亜寿沙本人である。正確には、高校時代の彼女と言うべきだろう、今とは雰囲気も違うし髪型が全然違っていたので、もしかしたら本人以外は気づかなかったのかもしれない。それを聞いた竹内と仁多牧は2人揃って「え、マジっすか?」と叫んだ。更に玲とかすみが驚愕した事実、それはその映像を撮っているのは彼女の彼氏であり、玲とかすみが蘇生させた三上裕樹(みかみひろき)であったことだった。だが、


  「彼の傍にはビデオカメラとかは

   落ちてなかったけどな」


と玲はかすみの耳元で呟くのだ。そう、三上裕樹を蘇生させた玲は、彼の傍にリュックはあったが、ビデオカメラは見てなかったのだ。勿論リュックの中については、蘇生させる前に彼の魂が霊界にあるかどうかを確認するためにリュックの中から彼の財布を取り出しのだが、その時にもそんな物は入っていなかったことを覚えている。その後映像は続き、やがて三上裕樹が近衛亜寿沙とは別の方向に向かった時、急に画面が暗くなった。これって


  「恐らく、霊界に迷い込んだ時

   じゃないかと思うよ」


と又も玲はかすみの耳元で呟いた。「え、やっぱりそうなん」とかすみは身震いして答えた。しかしやはり何かが変だと感じる玲である。と言うのは、霊界の中から霊界そのものをビデオに収めることは、彼の経験上不可能だからである。理由は分からないが、そもそも霊視グラスを掛けてないカメラで霊界が見えるとは考え難いし、仮に映ったとしても、こんなにはっきりとは映らないと考えている。この映像はむしろ、彼が見たままの光景ではないかと錯覚してしまうのだ。そして、玲とかすみは更にもう一つの事実に気づいていた。それは、


  「この映像の背後に流れている奇妙な声と言うか音は、

   例の召喚術だな」


と早速玲は見抜いた。そして、映像の終了と共に「召喚」と叫ぶや、彼の周囲に大きな降霊召喚門が展開された。すると、そこには映像内で流れていた召喚術で呼び出された霊体が捕らわれていた。「ふぅー、危なかった」とは玲のため息である。そしてこれは以前かすみが親友の渡辺翼から相談を受けた呪いのビデオ、まさにそれと同じ現象がここにも再現されたのであった。そこで玲は、現れた霊体に対しお見送りで霊界に送り届け、召喚を解除した。そしてビデオは漸く停止した。ところで、ビデオがエンドロールを表示する直前のほんの1秒ほどのコマの中に、玲だけが知るある人物の足元が映されていた。円空である。彼は三上裕樹が倒れたときに傍に居たということか?一体そこで何をしていたのか?とにかく、このビデオはかなり色々な謎を自分たちに提供してくれた。



  「ねえ、玲、これって凄くやばいよね。

   これが垂れ流されたままだと相当危ないと思うけど」


とかすみは深刻な表情で玲に訴えた。玲もかすみの指摘は尤もだと思っている。そこで、


  「このビデオを販売している所に

   連絡した方が良いかもしれないね」


と言うことで、玲は早速ビデオのパッケージに記載されていた電話番号に連絡したが、電話が繋がることはなかった。とは言え、別段繋がらなかったことは決して不自然ではない。と言うのは、彼らが自由に行動できるのは週末だけであり、大抵の企業は週末は休みになる。なので電話が繋がらないこと自体別に問題ではないのだが、玲もかすみもその点を忘れているようで、やはりきちっと社会人を経験しておくべきであろう。それはさておき、玲は同じくパッケージに記載されていたメールアドレスに本件の問題を指摘して送信した。これも返信があるかどうかはあまり期待していなかったが、週明けの月曜日に玲のスマホのメールソフトに返信メールが送られてきた。送信主は、ビデオのクレジットに掲載されていたディレクターの山崎真吾(やまさきしんご)であった。そこで、そのディレクターに今回の件を含めていくつか問題点を指摘して送信したところ、玲に是非会って話を聞きたいというメールが届いた。では今週末土曜日に東洛総合大学の心霊サークルの部室で話をするのはどうでしょうか?と言う旨の返信をして、相手の了解を得た。



 その後、玲とかすみは心霊サークルの部室を出て、大学から歩いて10分程の所にある近衛亜寿沙の住むマンションに向かった。彼女の自宅住所は、昨年の夏合宿でかすみが対応したときの住所を手掛かりにして直ぐに分かった。なお、部長の竹内に聞いたところでは、近衛亜寿沙は既に退院して今は自宅療養中と言っていたので、多分在室していると思われた。そこで、かすみがオートロックパネルで部屋番号を押したところ、返事がなかった。とりあえず2、3度試して漸く「はい、どちら様ですか」との返事があった。かすみが名前とこちらに来た目的を話したところ、「分かりました」ということで彼女の部屋203号室に向かうことにした。


  「お休みの所ゴメンね、亜寿沙」


  「物部先輩、有難うございます。あの件ですよね?」


と言いながら玲とかすみは近衛亜寿沙の部屋に案内された。そこは1ルームタイプの部屋で、簡単なキッチンとユニットバスと10畳ほどの広さの居間兼寝室と言った感じだった。そして近衛亜寿沙は今まで体を休めていたようで、応対に出たときはパジャマの上にカーディガンを羽織った姿だった。こんな状況に来て大丈夫なのかと少し不安になる玲だが、かすみが一緒なので大丈夫だろうと、何やら一人で焦ったり安心したりしていた。そして玲は早速彼女に確認した。


  「近衛さん、あのビデオに写っていたのは

   あなたで間違いないですよね」


「はい」と近衛亜寿沙はきっぱりと返事した。次に


  「彼氏の三上さんは、

   あの時ビデオを回していたのですか?」


この質問に対し、近衛亜寿沙はしばし沈黙する。と言って嘘をつこうと考えている訳ではなく、だがあの状況を見ると、どうしてもビデオを回していたとしか考えられない。なら隠し撮りか、と思わなくないのだが、映像のあの高さは三上裕樹の目線に当ることは確信している。もしそんなところに何かあれば気づくはず。では一体あの映像は何なんだ、そんなことを止めどなく考えていたのだった。そして、


  「最神先輩、物部先輩、

   あの映像は誰が撮影したんでしょうか?」


と、近衛亜寿沙は質問に対する質問と言う形で答えた。そこで、玲が霊界で彼の遺体を見つけたとき、傍には彼のリュックしか落ちておらず、ビデオの類は全くなかったことを彼女に伝えた。そして、玲は近衛亜寿沙とかすみが思いもよらないことを言うのであった。


  「あの映像は、恐らく三上さんの見た記憶

   ではないでしょうか?」


それを聞いたかすみは、驚きの余りその場で目を見開き、そしてそのまま隣で話す玲を凝視した。一方の近衛亜寿沙は、最初玲の言葉の意味が理解できず、座卓の上に置かれた湯飲みをぼんやりと見つめながら話を聞いていたが、その意味するところを理解した途端、はっとして顔を上げて、やはり玲を凝視した。そして心の動揺を隠しきれないかすみが玲に尋ねた。


  「ね、ねえ、玲、人の記憶を映像に出来るの?」


  「それは分からないし、僕も聞いたことがない。

   まあ、知らないだけで、実はどこかの秘密組織

   とかで実用化されてる、

   なんて都市伝説があるかもしれないけど、

   でもそれしか考えられないんだよね、僕には」


と玲は、両手でお手上げポーズをしたのだ。そして、


  「それと、かすみ、映像の最後に

   何か映っていたのに気づいたかい?」


ん、何かあったっけ?と目線を上に向けて考え込むかすみである。


  「そうか、気づいてなかったんだな。

   あそこに人の足元が一瞬だけど映ってたんだ。

   そして僕は、その人物を知っているんだ」


と玲が答えたとき、かすみは直ぐにその人物が誰かが分かったため、それ以上は口にしなくなった。その間近衛亜寿沙は玲とかすみのやり取りを凝視していたが、彼らが何かのことで口をつぐんだ時、言い知れぬ不安感に襲われた。そして、恐る恐る玲とかすみに尋ねた。


  「あ、あのー、せ、先輩方、

   ひ、裕樹は大丈夫なんですよね?」


それに対する玲の回答は明確で、近衛亜寿沙の目をしっかり見つめて、「彼は大丈夫です。その点は安心してください」だった。それを聞いた途端、心の中にあった不安と緊張感が融けてなくなるように感じ、なぜか目から涙が溢れ出してきた。でもその涙は悲しみの涙ではなく、安心感からくる嬉し涙であったのだが。


 一先ず玲とかすみは近衛亜寿沙から聞きたいことを聞き出せたので、このままお(いとま)することにしたが、その前にかすみは


  「今度の土曜日に、例のビデオを制作した会社の人が

   サークルの部室に取材で来るんだけど、

   亜寿沙どうする?」


と近衛亜寿沙を誘ったが、出所とかがどうしても気になるため、自分も同席させてくださいとお願いした。

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