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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-66 最神玲とタチアナの召喚術談議(最終回)

最神玲とタチアナの召喚術談議(最終回)


ファッションブランドロムリアの代表を務めるタチアナ・エグリスコバから、今年の8月に引退するとの発表が3月初めにあった。そしてタチアナの引退=ロムアリへの帰還が今年の8月に決まったことで、最神玲はある決断をすることにした。そこで3月下旬、その決断を伝えるために、タチアナにはフランスの別荘での待ち合わせをお願いして、玲と物部かすみはタチアナの別荘に転移して、そこでタチアナと落ち合ってからこう話を切り出した。


  「タチアナさん、僕と契約召喚しませんか?」


何やらタチアナにプロポーズか?と思わせるような台詞が玲の口から出たのだが、玲の傍に居るかすみは、「はあ?」と一瞬玲は何を言ったか理解できずに固まったものの、何やらプロポーズの言葉っぽいことを言ったんじゃないかと思った途端「私と言う者がいるのに!」と腹が立ってきて、だがタチアナの手前事を荒立てる訳にもいかないので、肘で玲の脇腹を強く突いた。そしてタチアナは、こちらもプロポーズの言葉と勘違いしそうになり、最初は顔を赤らめて言葉を失ったものの、契約召喚の言葉で我に返り、プロポーズではないのかと少し落胆する素振りを見せて俯いてしまった。要するに玲の言葉は、ここにいる女性には正しく伝わっていなかったのであった。そんな状況を知ってか知らずか、玲は淡々と言葉を続けたのである。


  「と言うのは、もし上手く契約召喚できて、

   僕がロムリアに行くことができた場合、

   地球に残ることになる人達のロムリアの友人や

   家族にメッセージなり、何ならビデオレターを

   手渡したり出来ると思うんですよ。

   そうすれば、地球に残った人たちも

   少しは安心というか、心残りが軽減される

   かなと思うんですけど、駄目でしょうか?」


勿論、僕自身も一度ロムリアがどんなところか見てみたいですしね、と照れ笑いしながら玲は彼女たちに説明した。実際はロムリアに行きたいのが7割、残り3割はメッセンジャーになる、の方が彼の心境としては正しいであろうか。それはさておき、そんな思いを玲から告げられたタチアナは、俯いたまま目に涙を浮かべ、やがてその涙は地面に向かって零れ落ちていった。そして、泣き顔のままのタチアナは、鼻声になりながらも


  「有難う、レイ君。私の同胞を気に掛けてくれて。

   地球に残る彼らもきっとあなたのその申し出に対して

   心からの感謝を贈ることでしょうね。分かりました。

   あなたの申し出を受けましょう」


「有難う、カスミさん」と言ってかすみから手渡されたハンカチで涙を拭いて、早速契約召喚の準備を始めた。ちなみに、玲もかすみも、本格的な契約召喚は未体験であるため、ここはタチアナの指示に従うことにした。


  「まず契約召喚だけど、

   レイ君もカスミさんも初めてなのよね?

   そうすると、初体験かー。いいなー」


と何やら変な方向に向かおうとしているタチアナである。それに対し、玲とかすみは困惑の表情を浮かべながら、黙って佇んでいる。そして


  「ははは、何か変な事を想像してませんか、

   お2人さん!」


と言われて、急に顔を赤くするかすみである。一方の玲は「ん、何のこと?」とキョトンとするだけだった。


  「さて、契約召喚では相手を服従させる契約と

   対等な契約の2種類があるのは知ってるわよね。

   服従させる契約は、まあ言葉通り、

   相手を無理強いさせられるの。

   一方の対等な契約は、

   もし相手を無理強いさせようものなら、

   その時点で召喚対象者は契約を解除できるのよ。

   その点はレイ君は知ってるわよね?」


勿論、玲ことカーンフェルトは、それが契約召喚の基礎であるため、十分に理解している。かすみは、「ふむふむ、そうなんだ」と言う感じでタチアナの説明に聞き入っている。


  「今回は、レイ君とは対等な契約にするから、

   そのための術式を召喚門に記述するけど、

   レイ君と契約する場合、

   レイ君の持ち物が必要なのよ。

   何か頂けないかしら?」


と言うことで、玲は予め用意していた自分の髪の毛の束をタチアナに渡した。


  「じゃあ、これで契約召喚してみるね」


と言って、タチアナは玲達から少し離れた庭園の外れの樹林近くに一旦転移してから、彼女の傍にアニュラス型の契約召喚門を設置して玲を契約召喚した。が、何も起きない。術式が間違っているのかと確認するも、何も問題はない。だとすると一体何が原因で玲を召喚出来ないのか?確かに召喚術師の倫理として、人を契約召喚することはタブー視されている。ただし例外として、召喚対象者の同意を得た場合のみ契約召喚は許されるのだが、勿論そこには厳密な規定とかは存在しない。要するに相手の同意さえあれば問題ないはずなのだ。とろこがここで、タチアナでさえ気づかない大きな問題があった。それは召喚術師と契約召喚した場合にどうなるのか、と言うことである。もう少し分かり易く言うと、契約召喚で召喚術師を召喚できるのかどうか。残念ながら、カーンの居たケンタリアも、タチアナことセラスティナが居たロムリアも、この点については何も分かっていなかった。実はセラスティナがロムリアに帰還してから知ったことであるが、彼女の師である大召喚術師エンペラールは、セラスティナが行方不明になった時、セラスティナの持ち物を使った契約召喚を行っていたのだ。ところが、何度やっても成功せず、契約の品を変えて色々と試しても召喚出来なかったのである。どうやら、召喚術師の契約召喚には何かが足りないのか、今の術式では駄目なのか、あるいはエンペラールでさえ知らなかったことだが、遠い異世界に居る召喚術師を契約召喚で元の世界に戻すことがそもそも出来ないのか、何れにしてもこの問題はいまだ解決に至っていなかった。


 一旦、タチアナは玲とかすみの所に転移してきて、この問題点を指摘したのだった。玲は何やらぶつぶつ独り言を呟きながら思案していたが、ふとタチアナの顔を見てから、手にナイフを召喚して、それで自分の指先を少し傷つけた。そして流れ出てくる血液を持っていたハンカチでふき取って、タチアナに「これを使ってはどうでしょうか?」と渡したのだった。タチアナも、玲がいきなり行ったことに驚いたものの、それなら行けそうかも、という期待感が現れて、ハンカチを受け取ると直ぐに先ほどの場所に転移して契約召喚を行った。だが、


  「レイ君、やはり駄目だったわ。

   なぜなのかしら?」


と困り果てた表情をしながら玲とかすみの所に戻って来てそう告げた。これは一筋縄ではいかない問題だぞ、と玲は一人興奮するのであった。こういう難問にぶち当たった時の玲ことカーンは、持てる召喚術の知識を総動員して恐ろしいほどの想像力を働かせながら問題解決に向かうのである。そして、一つの可能性に行きついた。その間約10分。ちなみに、この玲の試行作業中、タチアナもかすみもただ黙って玲を見つめ続けていた。そして、タチアナを見つめて


  「タチアナさん、降霊転移門を使った

   契約召喚を試してみましょう」


と言う、驚くべき提案が玲からされたのだった。単にバレル型を使った契約召喚ではなく、降霊転移門で契約召喚するとは、考えもしなかった発想を思いつくこの男に、思わず息を呑んで見つめていた。


  「分かったわ、やってみましょう」


と言って三度(みたび)転移で移動してから、今度はバレル型の降霊転移門を設置し、契約召喚の術式と玲のハンカチを召喚門に置いた。すると、なぜか突然玲が大声で叫び出したのだった。タチアナは凄く気になったので、一旦術式を解除して玲の所に転移した。そして玲の口から何とも奇妙な言葉が吐かれた。


  「タチアナさんが降霊転移門を設置してから

   僕のハンカチを召喚門に置いた途端、

   なぜか知らないんですが、

   僕の体がプルプル震え出したんです」


物は試しだということで、玲の近くで降霊転移門を設置し、そこで契約召喚の準備を整えたとき、確かに玲の体が小刻みに震えているのが目でも確認できた。かすみは最初何が起きたかわからずただ玲の動きを眺めていただけだが、タチアナへの説明を聞いて、改めてその状況を自分の目で見たとき、何か面白そうなことが起きてるぞと思い、やたらと玲の体を触りだしたのだった。「ちょっと、かすみ、止めてよ。(くすぐ)ったい」とかすみに抗議する玲だが、かすみはそんな抗議に耳を貸すようなお人好しではない。そんな2人を眺めながら、コロコロと声を出して笑うタチアナであるが、しかし何が起きたのかと冷静になって考え出した。とりあえず、召喚を解除して、玲をもとの状態に戻したのだが、かすみは「あー、面白かった」と何やら満足してしまった。それよりも、かすみに良いように弄られてぐったりしてその場に座り込んだ玲は


  「タチアナさん、これって契約召喚時に

   特有な現象なんでしょうか?」


とタチアナに尋ねるが、タチアナもこんな状況は見たことも聞いたこともないと、玲に答えた。となると、


  「もしかしたら、契約召喚する時の

   合図に使えたりしませんかね?」


  「うん、確かにそれはいい考えよ、レイ君。

   それよりも、まずは降霊転移門で

   契約召喚出来るか試さないと」


とタチアナは言って、4度目の転移を行い、そこから降霊転移門による契約召喚の準備を整え、最後に「召喚」と叫んだ。すると、


  「あー、レイ君。いらっしゃーい」


と言って、その場に召喚された玲を抱きしめるタチアナであった。そんな状況を遠くから見ていたかすみは、「あ、玲のやつ、何やってんだよ!」と怒りモードになるも、またタチアナから冷やかされたら堪らないので、何とか冷静になる様に心を落ち着けた。



 さて、無事に召喚術師の召喚に目途がついたことで、後はタチアナが帰還した後に、果たして玲が無事にロムリアに召喚されるかだが、これだけはぶっつけ本番となってしまう。玲はその点は初めから覚悟をしていたので、タチアナにもそのように伝えておいた。しかし、あのプルプルは一体何なのか気になるのだが、念のため降霊転移門による契約召喚で玲が最初に用意した自身の髪の毛、あれでも転移可能かどうか試したが、残念ながら召喚は出来なかった。恐らく霊界を経由する召喚のためなのか、霊魂の最も近くに存在するのが血液だからなのか、今ある情報だけでは何も分からないが、少なくとも血液であれば無事に召喚できることだけは分かったので、これは大きな成果と言えよう。そして血液を使った時の震え、あれはもしかして、


  「先程の僕の震えだけど、

   恐らく魂が振動しているのかと

   思ったりしましたけど、

   血液に対してだけ反応するところを見ると

   そんな気がしますね」


とにかく、玲がロムリアに行く手立てが確保されたことで、後はどのタイミングでタチアナが玲を召喚するのかについて、詳細な打ち合わせがこの後行われた。その結果、タチアナが転移してから地球時間で1年後、サモナルド時間では半年後に玲の血液による契約召喚を行うことになった。なお、これだけの時間があれば、タチアナはロムリアでの仕事復帰に向けた調整が十分可能であるし、玲も地球に残されたロムリアの人達からメッセージを集めるのに十分な時間となることで、このスケジュールで決めた。それと、召喚の1日前に一度召喚準備をすることとし、玲はプルプルを感じたら、その24時間後には召喚が始まるということを肝に銘じた。そしてこの計画は、タチアナが帰還する当日にタチアナの口から地球への残留者達に話してもらうことにした。


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