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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-62 美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (後日談)

美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (後日談)


大阪から戻って1週間ほどした頃に物部かすみのスマホに相田桃からの着信があった。


  [もしもし、モモ、どうしたの?]


  [かすみ、実はね

  この間の不法侵入者の事なんだけど…]


と言って語ったのが次のような話である。


 住居侵入罪で取り調べを受けていた合田剛(ごうだごう)は、その後処分保留のまま釈放された。そして、釈放されたその日のうちに彼は失踪したという。恐らく夜逃げだろうということで警察も彼の行方を追っていた。そして合田剛の自宅を家宅捜索するために、物件を管理する相田桃の会社に問い合わせがあり、結果彼女と先輩の谷山が警察官と共に合田剛の自宅に向かうことになった。そして同行した警察官が内部を検めていた時、押し入れの中から不可解なものを発見した。相田桃は何かしらの魔術か占いでもやっていたのではと思ったが、警察は当然何も分からないし、ましてやそれが彼の失踪と関係しているとは考えていない。そして更に各部屋や台所、ベランダ、ユニットバスなどを隈なく捜索したところ、ユニットバスの天井の一部が開くようになっていたので、一人の警察官がそこから頭を突っ込んで天井裏を見回した。すると、そこには無惨な姿に変わり果てた合田剛の死体が置かれていた。そして余りに凄惨な状況を目の当たりにした警察官はバランスを崩して倒れ込み、腕を骨折するという重傷を負ってしまった。その後応援に駆け付けた刑事と鑑識でユニットバスの天井裏の現場検証が始まるという騒ぎになった。その間、相田桃と先輩の谷山は、呆然と立ち尽くすも邪魔になるからと自ら部屋の外に出て待機した。尤も、殺害現場に誰でも居たくないだろうことは容易に想像がつくのだが。その後現場責任者に鍵を預けて彼女たちは一旦引き上げたが、会社に戻るや否や、「また事故物件が増えた!」と谷山は相田桃に愚痴ったのだった。そして、その後の経緯は大阪ではニュースになった。ただ残念ながらかすみの居る差間見町には一切報道されていないので分からずじまいだが、どうやら殺されたのは合田剛本人だというのである。ただし状況から見るに、自殺とも他殺とも取れるということで、慎重に捜査が進めらている。


 この話を玲にしたところ、霊体が直接関与しているかどうかという点について、現段階では何とも言えないね、と言うことだった。そもそも玲とかすみが扱う霊体は、基本的には人に物理的な危害を加えることはない。ただし、例外的に異常に霊力が強い場合などは、例えば霊体の手が掴んだ跡が残るとか、首を絞めた跡が残るなどの事例はあるようだ。そして合田剛は、口と鼻に何かを巻き、耳にも何かを詰め込み、更に両目を自分の右手人差し指と中指で突き刺した状態で死んでいたという。これは見方によっては、何かが自分の中に入り込むのを防ぐための措置ともとれるし、逆に体の中から何かが出て行くことを妨げる措置ともとれる。勿論過剰な措置であったために命を落とすことになったのだが。ただしそれ以上に気になるのが、背中とお尻がくっ付くような不自然な状態で折り曲げられていたことだろう。これらの点に関しては、相田桃の先輩の谷山が骨折した警察官を見舞いに行ったときに、ここだけの話ということで聞いたのだと言うことなので、目撃者当人と警察内での情報共有から信憑性が高いと判断される。そうなると、もし今回のケースが人的な行為であれば、そこに何ら疑いをはさむ余地はない。ただの異常な殺人か死体損壊と言うことで片付く。ところが、もしこれが霊体の仕業であれば、霊体が殺人を犯したか、死体を損壊したことになる。しかも、何れの場合も物理的な手段によって。そこまでの霊体が果たして存在するのかは、玲には全く未知なことである。ただし、以前扱った丑の刻参りでもそうだが、呪い返しで確かに悪霊と言うか怨霊が現れたのは彼らも目撃しており、そのような怨霊が物理的な攻撃を絶対に()()()とは言い切れない。では、合田剛は一体何を恐れ、何に襲われたのか?恐らくかすみが襲われた霊体と何かしら関係があることは分かるのだが、問題はその霊体がどのように召喚されたかである。あるいは召喚ではなく呼び出されたのか?


 実は玲は、合田剛の押し入れにあった燃え滓を大阪から戻って直ぐに調べたが、彼の知識では到底結果が得られなかった。そこで、こういう事はプロに聞こうと言うことで、県警捜査一課の立花に、玲が知人から相談を受けたと嘘を言いながら、どこかでこう言う物を鑑定できるところを紹介して欲しいと頼んだ。そして、警察でもお世話になるある大学の研究室を紹介してもらい、玲は県警の立花の紹介でと言うことでお願いして鑑定してもらったのだ。その結果は、人の体液、正確には精液と言うことだった。そうすると、恐らく合田剛本人の精液を召喚に使ったのだろう。ただ、玲としては精液と黒魔術か何かの召喚儀式がどのように関係するかの知識がないため、これ以上は進展しなかったのだった。


 さて玲とかすみは、そこの儀式で使われていた術式にも興味があり、早速大阪から戻った日にタチアナにメールで写真を転送していた。その結果、彼女も直接見たことは無いものの、もしかしたらそれに詳しい人は紹介できるかも、と言うことで後日、玲とかすみはその人物に会いにベトナムの首都ハノイから北東に車で1時間程の所にあり中国との国境にも近いアン・ビンと言う小さな町に転移した。このアン・ビンと言う町は、竹林と古びた石畳の道が残り、旧仏教寺院がいくつも点在しており、ベトナム戦争時代には避難村として知られ、今もその静けさを保っている町である。そしてタチアナが紹介した人物、ホアン・ヴァン・コアと言う名前のベトナム人が、その町で雑貨店を経営している。実は彼はサモナルドのロムリア出身者であった。ただし、タチアナのように金色の髪に金色の瞳ではなく(ましてやオッドアイでもなく)、見た目はどちらかというと、ケンタリア時代のカーンフェルトに似た感じであろうか。聞いたところでは、彼は召喚術師ではなく、召喚術の歴史を研究していたという。そして何かしらの実験に巻き込まれてタチアナと同じく地球に転移して来たということだが、そんな彼をなぜタチアナは紹介したのか?実はホアン・ヴァン・コアは趣味で地球の呪術を研究しているそうで、そのうちの幾つかはタチアナの居たロムリアの召喚術式に近い物があったりすることをタチアナに報告していたのである。この事は、裏を返せば、ロムリアから転移した何者かが地球において自分の持つ召喚術式を元に呪術を広めたのではないかと推測される。何れにしても、タチアナ達召喚術師からすると迷惑な話である。そこで、タチアナ達ロムリアの召喚術師は、この呪術を広めた人物を追跡しているのであるが、なかなかに尻尾を掴めないまま今日に至る。そう言う縁で、タチアナはホアン・ヴァン・コアを紹介したのであった。そして彼からは驚くべき言葉が発せられた。


  「カーンフェルトさん。この写真にあるのは、

   典型的な召喚術式です。

   ただし、あなたや、セラスティナさんが

   知っているものよりも少し古い術式です」


と言って、彼が保管している資料から一枚の図を差し出した。


  「これは昔私がロムリアで読んだ

   文献に掲載されていた術式を、

   私が思い出しながら描いたものです。

   今は、と言うかセラスティナさんの居る時代では

   存在しませんが、元はアニュラス型と

   ベンダグラム型は一つだったことがあります。

   それがこの写真にある術式なのです」


つまり、玲とかすみが見た黒魔術か何かの術式は実はセラスティナが居たロムリアの時代よりも少し古い頃の術式だという。しかも、その頃はアニュラスとペンタグラムが一緒だったということだ。と言うことは、その時代の術式を誰か転移者かあるいは転生者が地球に持ち込んだということは可能性としては大いにあるということだろうか。逆に地球の黒魔術がサモナルドに持ち込まれて、それが召喚術の原型になったということは考えられないのだろうか?この点をホアン・ヴァン・コアに尋ねたところ


  「カーンフェルトさん。それはないです」


と即座に否定された。彼が言うには、地球の術式では生贄が必須だが、サモナルドの召喚術で未だかつて生贄を必要とした術式が見つかっていないからだと言う。更に、契約召喚で契約者の体毛、体液、血液等を使うことはあるが、それ自体も生贄とは異なる、と言う点も指摘した。勿論、自分の調査が足りない可能性は否定できないとの断りを入れたうえで、


  「過去の文献を調べても生贄と言う言葉は無いですし、

   そもそもロムリアに生贄に相当する文化

   そのものが存在してませんから」


と更に否定したのである。確かに、カーンの居たサモナルドでも、召喚術で生贄を使うという話を聞いたことは無いし文献も見たことは無い。そうすると、古いサモナルドの召喚術が地球にもたらされ、その後黒魔術として定着したと考える方が自然である。もしそうだとして、では地球の黒魔術で召喚されるのは霊体だけなのか、霊体以外も召喚できるのか?この点についてホアン・ヴァン・コアに尋ねたが、残念ながらその答えは分からないと言う。恐らく黒魔術の生贄の性質に依存するのだろうが、それを知る術は今の所持ち合わせていない。ただ、


  「生贄の代わりとなる術式が分かれば、

   我々が使う召喚術になるんですね?」


  「断言はできませんが、

   その可能性はあります。それと…」


蝋燭(ろうそく)の配置、あれは恐らく召喚術のタイプを示すもののように感じると、ホアン・ヴァン・コアは言うのだ。玲も恐らくそうだろうと睨んでいる。例えば蝋燭ではない他の何かをペンタグラム型の頂点に配置すると、違うモノを召喚することが可能になりそうである。こうして考えると、余りにも黒魔術の術式が召喚術に酷似するため、地球にも独自の進化を成し遂げた召喚術がどこかに存在すると思うのであった。そしてその独自に進化した召喚術を、合田剛はどこからか手に入れて怨霊を召喚したということであろう。だとすると、そのカギは彼の部屋に残されていたPCにありそうだと睨んだ玲だか、その後合田剛の居た部屋に転移して確認したところ、残念ながら彼のPCは警察に証拠品として押収されていたのであった。

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