地球転生編 2-61 美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (後編)
美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (後編)
翌朝になり、LINEで事前に報告しておいたが、念のため直接最神玲に報告しようと思い、物部かすみは急ぎ美土路神社にある自宅に転移して行った。
「玲、起きてる」
と言って、玲の部屋をノックすると
「あー、おはよう、かすみ。どうしたの?
向こうで何かあったの?」
と寝起き姿でかすみに問いかける玲である。まだLINEは見てなかったようなので、そのまま玲の部屋に入って、昨晩の事を玲に話した。
「そっか、でも、降霊召喚門を設置してから
寝たのは大正解だったね。
何事も用心に越したことは無いからね。
まあ、この自宅に関しては、僕もいるし、
毎晩にくたまにパトロールをお願いしているから、
セキュリティに関しては問題ないけど。ただね」
と言って玲は腕組みしながら考え事をし始める。「何か気になるの?」、とかすみが尋ねると
「そのかすみを襲った怨霊ね、
それってそこに居ついていた霊ではないんだよね?」
「元々居ついていたのは
そこで心中した3人の親子だけだったんだ」
と説明するかすみであるが、玲は
「ちょっと分からないけど、一つ思ったのが、
もしその元からいた霊体と怨霊が同居していた場合、
必ずと言うかその元の霊体は何かしら怨霊の影響を
受けると思うんだよね。
例えば、かすみ達が部屋に入った瞬間に
襲い掛かるとかさ」
「でもそのようなことは無く、
ただ揺蕩っていただけだったけどね」
「そうなると、あと考えられるのは、
その怨霊は後から誰かに召喚された、
と言うことなんだけど…」
あー、大分前に遭った丑の刻参りとかの呪いの儀式が関係しているのかな、と疑問に思いながら玲に尋ねる。丑の刻参りはターゲット限定だけど、それ以外の可能性は否定できないな、と答える玲である。その後かすみは、玲と一緒に朝食を取り、着替えを持って、大阪の事故物件マンションに転移していった。
その後、2日目、3日目の晩は特に何も起きずに過ごしてきたかすみである。4日目の火曜日は、楽しみにしていたテーマパーク、かすみが言う所のユニバに一人で遊びに行くことにしていた。玲はこの時間は仕事だな、と思い浮かべながらかすみは一人ユニバのアトラクションを満喫するのであった。ただ、周りを見ると平日とは言え、カップルや外国人家族が大半であり、一人で楽しんでいるのはもしかして私だけ、と何やら少し不安を感じたりもしたのである。「何かあの子、訳ありなの?」とか噂されてるのではないかと想像すると、かすみは途端にここに来たことを後悔しだした。まあ、また今度玲と一緒に来ればいいか、と何やら思い直し、さて折角だから人のことは気にせず楽しもう、と前向きに捉えて、再びアトラクションを楽しみだすのであった。
その日はユニバでリフレッシュしたおかげで、気力体力共に充実したかすみである。そして事故物件部屋に戻ってから、念のためにビデオカメラの映像を確認していたところ、「はあ?」と素っ頓狂な声を出した。そこには、かすみが寝泊まりする事故物件部屋に一人の男が映し出されていたからである。年齢は40歳前後か、肩まで伸ばした黒髪と眼鏡姿から何となくオタクっぽい印象を受けたかすみだが、それよりもどうやってこの部屋に入って来たのか?いや、それよりも、もしかして私夜中にこいつの訪問を受けてたの?と考えただけで恐怖に駆られて身震いするのである。だがそれはないか、と思い直し安堵したりする。なぜかすみは安堵したのかというと、寝る前に必ず玄関の戸締りにはドアチェーンをするのを忘れないからである。これは東洛市に住んでいた頃からの習慣であり、彼女の父親からも、「一番の防犯効果はドアチェーンを掛けておくこと、これに尽きるぞかすみ」と教えられていたからだ。これを掛けておけば、仮に玄関を開けて侵入しようとしても扉が開き切らないため侵入できないし、その間警察に電話する時間は稼げるので、一人暮らしの時は必ずそうしていたのだ。この習慣のお陰で、今回は難を逃れたということのようだ。だが、「じゃあ、一体こいつはどこから鍵を入手したんだ?」となるので、早速不動産屋に電話したのだが繋がらない。仕方ない、モモにLINEしておくか、と言うことでこの件について相田桃にLINEしたのだった。ちなみに、火曜日はその不動産屋は定休日となっていたので電話は繋がらないのだが、相田桃からは直ぐにLINEで返事が届き、これからそっちに向かうというメッセージが添えられていた。30分程待っていると、ピンポーン、とチャイムが鳴ったので、カメラ付きインターホンで確認してみると、そこには相田桃が立っていた。早速中に招き入れて、問題のビデオを見てもらった。すると、
「あ、この人、確かこの部屋の宿泊バイトに
参加していた人だと思うよ。
この何と言うか、オタクっぽい感じ、
忘れられなかったからね」
そうか、それで合い鍵を作って侵入して来たんだな、と言うことで侵入方法は分かった。だが、
「じゃあさ、モモ、この人って結局
リタイアしたんでしょ。
それなのに、この部屋の鍵を持つって
どういうことなんだろうね」
「うん、確かね、1日目でリタイアとか
何とか言ってたね。
あ、あとね、この部屋は絶対何かいるから
誰も住まわせない方が良いよ、
と言うようなことを言ってたかな」
まあ、確かに何かいたのは事実だが、それならば「誰も住まわせない方が良いよ」ではなく「早くお祓いしてもらった方が良いよ」じゃないだうろか?なぜ住まわせない方が良いよなのか、その意味するところがよく分からないのだが、念のため相田桃にここのとろの正確な話を思い出してもらっても、やはりそう言っていたと断言した。もし確認したいなら、確かビデオを回してたからそれで確認できるよ、と言われた。どうやら、後で自分は1週間居たんだとか訳の分からない脅迫をしてくる可能性があったので、証拠としてビデオを回していたのだそうだ。恐らく、そんなことが過去に遭ったのだろうと、容易に推測されるのであるが。
とりあえず、状況は分かったので、相田桃にはこの人物が今どこにいるのかを探してもらうことにして、場合によっては警察に連絡して不法侵入で調べてもらうと言い残して、彼女は帰宅した。それから、かすみは、寝る準備をして寝ようとした時、「ガシャーン」と何かが倒れる音が部屋中に響いた。びっくりして音がした方向を見ると、今日ユニバで買ったお土産の缶入りチョコがフローリングの床に落ちたのが見て取れた。何気なくお土産を寝袋の上に置いて、そのことを忘れて寝袋に足を突っ込んだために転がってコットから落下してしまったのだった。「あちゃー、やっちゃった、下の階に響いているだろうな」と思い、明日にでも謝りに行くか、と思い直してそのまま寝ようした、その時、
「えー、また、あれか。何なんこいつ」
と言い終えぬうちに、「召喚」と叫んで霊界に送った。そう、初日の晩にかすみを襲った怨霊である。そういえば、この間もそこから湧いて出たような感じがするけど、と思って、怨霊が立っていた場所を調べてみた。すると、何やら円を描くような液体の蒸発痕を確認したのである。
「これって、何かの儀式痕かな、
それともうちらみたいな召喚門かな?」
これだけでは分からないので、一度玲に聞いてみるか、と言ってその場から転移で自宅に向かった。玲はまだ起きていたので、事情を説明して二人で事後物件部屋に戻って来たのである。そして、
「うーん、何だろうね。
確かに何かしらの儀式の痕っぽいけど、
これだけでは分かんないな。うん?」
と言って、玲は床に俯せになってその蒸発痕の臭いを嗅ぎ出した。かすみも一緒に俯せになって臭いを嗅いでみた。
「何か独特の臭いがするね、これ。と言うことは…」
と言い終わらぬうちににくたまを1匹召喚した。そして、
「にくたま、この臭いの出所が恐らく
この近所にあると思うので、
それを探してもらえるかい?」
了解です、と言ってにくたまは先ずは部屋の中を調べ、その後玄関を開けてもらって外に飛び出していった。暫くすると、少しだけ開けておいた玄関扉の隙間からにくたまが入って来て、玲にこう告げた。
「ご主人様、この臭いの元は、
この下の部屋からありました」
これには、かすみも「えー、まじ、真下の人?」と叫ぶのであった。灯台下暗しではないが、まさか階下の住人がこれを仕掛けたのか?そうすると、動機は何なんだとなるのだが、今そんな事考えても意味が無いので、一先ず今晩どうするかである。玲に聞くと、
「多分だけど、この儀式は1回だけ
有効なのではと思うんだよね。
だから、初日に召喚して失敗したんで、
時間をおいてまた撒きにきた、
と見るのが妥当な気がするね」
確かにそれだと辻褄が合いそうなので、そうであれば今日は警戒する必要はないということになる。そして、
「うん、またやって来るよ、きっとね。
その時に捕まえたらいいと思うよ」
と言うことで、かすみは玲にお礼を言って、玲が転移で帰るのを見送った。
その日の晩は玲が言ったように何も現れず、かすみもゆっくり休むことが出来た。そして気持ちの良い朝を迎えてコットに腰掛けながら伸びをしていたかすみの目に留まったのが、ビデオカメラ。あっ、昨日慌てて玲を転移で連れて来たけど、それってビデオに写ってるよね、やばいぞ、と言うことで早速ビデオをチェックした。すると、運よくと言うか何というか、昨晩相田桃とビデオをチェックしていた時、その後で録画モードにするのを忘れていたのであった。危なかったー、と一瞬冷やりとしたが直ぐに安堵するかすみ。それから一度外に出てコンビニで朝食用のサンドイッチとコーヒーを買って戻って来た時、相田桃から連絡が入った。
[モモ、おはよう。
何か早くから電話くれてるけど、どうしたん?]
[かすみ、おはよう。昨日の件が気になったんで、
今会社にいてね、かすみのビデオに映っていた男、
そいつを調べてるんだけど、分かったよ]
と言うことで相田桃から教えてもらったのは、名前が合田剛という冗談とも取れるような名前であった。ただし、現住所は大阪ではないようで相田桃が検索したところ、該当する住所は存在しないとのことだった。つまり名前も住所も出鱈目と言う可能性のある男なのだ。
[後ね、ビデオを確認したら、
やっぱりその男言ってたよ
『誰も住まわせない方が良いよ』ってね]
となると、やはりこの男がクロと言うことになる。かすみは相田桃にお礼を言って電話を切った。それから、ビデオを録画モードにセットして玄関に向けて設置し、部屋を片付けて、廊下にある物を召喚してから外に出た。恐らくその男、合田剛は下の階に住んでおり、かすみが外出した隙を狙って再び侵入するだろうとみている。ただし、直ぐに動くことはなさそうと思い、相田桃に再度連絡して、これから彼女の会社に出向き、今後の対応を協議することにしたのだった。相田桃と合流して1時間程したころに、かすみはトイレの個室に入り、そこで転移門を設置して事故物件部屋をサーチしてみた。すると、「おー、かかってる、かかってる」と、何やら魚でも捕れたように陽気に呟いた。それから、かすみは一度家に戻るけど、何やら嫌な予感がするので、相田桃と谷山に一緒に来て欲しいとお願いして同行してもらうことにした。果たして、
「え、鍵が開いてるけど、何で?ちゃんと閉めたのに」
とかすみはわざとらしく大袈裟に振る舞った。そして、少しずつ玄関扉を開けて中に入った途端「キャー」とこれもわざとらしく大声で叫んだ。その声を聞きつけて谷山が中に入って目にしたのは、廊下の真ん中あたりで足を抑えて悶え苦しむ合田剛の姿であった。咄嗟に谷山は、
「相田君、警察に電話して。
不法侵入者ありということで」
と相田桃に指示を飛ばした。ただ、谷山はなぜ合田剛が足を抑えて悶えているのか理解できずにいた。実はこれは、かすみが出掛ける前にトラップを召喚して設置していて、それを合田剛が踏んだために起きた状況なのだが、かすみが玄関から入った時に召喚を解除したので、痕跡は一切残されていない。
「合田さんですね。あなた、
どうしてこの部屋に居るんですか?」
と谷山は問い質すも、苦痛でなのか全く答えようとしない合田である。
「分かりました。黙秘するならそれでも良いですけど、
もうじき警察が来ますから後はそちらに任せますね」
と言った途端、警察の言葉に反応したのか、「違う、違うんだ、誤解だ」などと訳の分からないことを言い出し始めた。そして10分程すると、警察官2名がやって来て、谷山が警察官に事情を説明した後、合田剛を住居侵入罪の現行犯で逮捕して連行して行った。一応谷山は、警察署で事情説明を行うと言うことで、彼らと同行することになり、今はかすみと相田桃だけとなった。
「かすみ、大丈夫?とんだ目に遭ったね」
「まあ、何とかね。意外とこういう事に
慣れて来てるから、今は大丈夫なんだけど」
と言って、相田桃を安心させようとしていた。勿論これはかすみの本心でもある。尤も1年前の彼女なら、途端にパニクっていただろうと容易に推測される。
合田剛の襲撃事件の後は何事もなく、かすみは無事に事故物件1週間宿泊チャレンジ生活を終えることが出来た。そして、部屋の片づけとビデオカメラを回収し、寝袋その他は全て召喚解除した。それから相田桃の会社に寄って、ビデオカメラを渡して中身を確認してもらい、無事バイト料の50万円と除霊費用の10万円を手にすることが出来た。勿論この金はかすみではなくM&Mの収入となるのであるが。そして相田桃の先輩の谷山からは、その後の経緯を聞くことが出来た。合田剛は本名であるが、住所はかすみの暮らしていた部屋の直ぐ真下の702号室であったという。そして不法侵入した動機だが、やはりというか、あのマンションは床が薄いため、上階の生活音や足音が響くのである。そのため事ある毎に上階へ苦情を言いに行っていたという。ところがある日上の階で無理心中が起き、それ以降誰も入居しなくなったので、これで平穏が訪れたと安心していたらしい。ところが、不動産屋がルームロンダリングをするために人を雇って住まわせることを始めた途端、また昔のような生活音に悩まされる日々を送ることになり、それを阻止するために嫌がらせをしに部屋に侵入していたということだった。ちなみに、合田剛も応募して直ぐに諦めたのは、やはり合い鍵を作るためだったという。以上が侵入した動機です、と谷山はかすみに話した。だがこの話、肝心のことが抜けているのをかすみは当然気づいていた。それは合田剛がどのようにしてあの怨霊を召喚していたのか、である。当然、警察がそのようなことを根掘り葉掘り相手に尋ねることは絶対ない訳なので、かすみとしてはこれ以上確認のしようがないのだが、これに関しては玲と相談することにした。さて、かすみは相田桃と谷山に挨拶をしてから事務所を後にした。そしてトイレに入ってそこから美土路神社の自宅に転移して行った。
かすみが大阪から転移で戻って来た日の真夜中。玲とかすみは、合田剛の暮らしていた部屋に佇んでいる。彼らは、直接転移してここに来たのだが、合田剛はまだ警察に拘留中なので戻って来るには数日かかると踏んで、早いうちに調査すべくやって来たのである。
「ねえ、玲、何かあるのかな」
とかすみは、囁き声でに玲に問いかけた。あっ、ちょっと待って、と玲も囁き声で返事してから、にくたまを召喚した。にくたまは、前回嗅いだ臭いを分かっているので、それがこの部屋のどこにあるのかを探してもらうことにした。すると、
「ご主人様、ここにあります」
と言って右腕で示したのは、6畳間の押し入れ。そこで玲は押し入れのふすまを開けると、
「ん、何だこれ?」
と思わずそんな声を漏らした。押し入れの下段にあったのは、かすみであればもしかしたら分かるかもしれない、所謂黒魔術の儀式痕である。血で描いたサークルとその内部に血で描いた五芒星があり、その頂点部分に蝋燭が置かれ、五芒星の真ん中には何かを燃やした燃え滓が残されていた。恐らく、これが怨霊を呼び寄せる儀式の正体なのであろう。
「玲、これって降霊術みたいなものでしょう?」
「うーん、どうかな。少なくとも僕の知る術式に
該当するものは全くないね。
一応写真に撮って、後でタチアナさんにも
見てもらうかな」
と言って、玲はスマホで写真を撮った。
「後はこの燃え滓だけど…」
と言って臭いを嗅いだところ、
「あー、やっぱり、かすみの部屋に残されていた
液体と同じ匂いだ。これが何なのか分かると、
対策とか出来そうだけどね」
と言いながら、とりあえずその燃え滓を転移で玲の部屋に送ることにした。そして、
「後はこれらの情報をどこから取得したかだね。
あるとすればインターネットだろうけど、
流石に僕はハッカーじゃないから、
ここのPCには入れないな」
かすみも右に同じため、残念ながらその調査は諦めることにした。これ以上は何も見つかりそうもないので、彼らは自宅に転移して戻って行った。
無事にバイトをやり終えて少なくい収入をゲットしたかすみであるが、かすみのスマホに相田桃からのLINEがきた。内容は、[無事に心理的瑕疵の解除が出来たので普通に賃貸契約を進めれます ありがとう]であった。まあ、彼女もこれで会社で顔が利くようになるのかなとか、もしかして事故物件専属になったりして、などと想像したりするのだが、これはその後現実となった。そして、その都度相田桃はかすみにお願いすることになるのである。まあ、かすみとしては霊体が居ても居なくても、1週間暮らせば数十万の収入が見込めるので断る理由はないのだが。




