地球転生編 2-59 美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (前編)
美少女降霊術師の心霊事件簿3: 事故物件編 (前編)
新年になって松の内が過ぎた冬のある日の夜。物部かすみは自室で勉強をしていた。何やら資格でも取ってどこかの企業への再就職を目論んでいるのか?と思われるが残念ながらそうではなく、最神玲から渡されたテキストを使った創成召喚術の勉強であった。かすみの召喚術師としての力量は、1年前とは違ってかなり増しており、玲ことカーンフェルトが言うには、彼の故郷のケンタリアでも中堅召喚術師のレベルにはある、というお墨付きをもらっている。それに気をよくしたかすみは、さらに上を目指すべく勉強しているのだ。と言っても、難しい術式を学ぶのではなく、召喚術で使用される言語の習得、これが最優先課題として与えられていた。ちなみに、召喚術で使用される言語は、地球で言う所のルーン文字に似た感じである。それらを組み合わせて召喚の言葉を作り、それを召喚門に書き込んで召喚する。ただし、召喚門に書き込むときに、直接文字として書き込むことも出来るし、声を発して書き込むこともできる、その点では玲がパソコンで検索していた時に多用した音声入力機能に近いものがある。そして現状のかすみはと言うと、実は玲に教えてもらったショートカットキー機能、あれを多用しているため、本質的な言語体系が実は疎かになっていた。そして、召喚術師としてより高見を目指したいかすみとしては、何としても召喚術で使用される言語を習得すべく日々勉強に励んでいるのであった。ちなみに、かすみがここまで勉強にのめり込むのは大学への受験勉強以来と思われる方もおられるだろうが、実は彼女は大学には推薦入試で合格したため受験勉強はほとんどしていない。と言うことは、今かすみが猛勉強している姿は生まれてから無かったことになる。それくらい、今のかすみには、この召喚術が重要なポジションを占めていたのだった。
そんな勉強熱心なかすみのノートパソコンに1通のメールが届いた。普段の彼女はほぼスマホのLINEが主たる通信手段となっており、ごく稀にスマホのメールを使う程度である。況してやパソコンのメールは、ほぼ業者からのDMが殆どなので、普段はメールが来ても完全にスルーしていた。そして余程溜まってきたら一気に捨てる、ということを繰り返していた。この日も特に気にすることなくスルーする心算だったが、画面右下に現れるメッセージボックスを見た時、おや?と思った。そこには彼女の幼馴染である相田桃と書かれていたからだ。そこで、メールソフトを立ち上げてそのメールを読むと、
[相田桃です
かすみ、元気にしてる。ところで、
あなたにお願いがあって会社からメールしています。
うちの会社は大阪で不動産業を営んでいる
中規模の会社ですが、会社の扱う物件に心理的瑕疵物件
俗に言う事故物件があります。
そして今回かすみにお願いしたいのが、
その事故物件の一つで1週間程滞在してもらいたいのと
もし幽霊が出た場合は除霊をお願いしたいのです。
なお、詳細はメールか電話でも構いませんので、
ご連絡頂けると助かります。
株式会社 ○○不動産 営業部営業2課
電話(直通)070-XXXX-XXXX
E mail: momo.aida@....]
かすみが時計を見ると、午後9時を少し回ったところ。え、今午後9時だぞ。モモの奴、まだ会社にいるのか?残業し過ぎじゃないの、もしかしてブラックな所か?と友達思いのかすみは相田桃を心配して色々と想像するのだった。そこで
[かすみです
こらー、桃、仕事し過ぎだぞ。
こんな時間まで残業していたら
絶対体壊すから、気を付けないとダメだよ。
それと、その事故物件の話は何時でも良いので
連絡頂戴ね。何なら、LINEでもいいよ。]
と相田桃に送った。すると、かすみのスマホから着信を知らせるメロディーが流れたので、かすみはスマホを取ってスピーカーモードにした。
[もしもしかすみ、メール有難うね。今大丈夫?]
[うん、大丈夫だけど、モモ、
あんたさこんな時間まで仕事か?
まじで、体壊すからしっかり休んでよね]
[有難うかすみ。心配してくれて。
ところでさ、メールの件なんだけど…]
と言って相田桃がかすみに依頼したい内容は次のようなことであった。
問題の事故物件は大阪市内にある賃貸マンションの一室である。間取りは2LDKで築年数は10年程の中古マンション。その部屋には1年程前まで若い夫婦と子供が住んでいたが、何らかの事情で無理心中があったという。その事件以後、その部屋は心理的瑕疵物件扱いとなったため、家賃は周囲の相場よりも半分近くになってしまった。ただ、都心でかつ最寄り駅まで歩いて数分の好立地であり、しかも家賃の安さから新婚夫婦が興味を持ったりするものの、やはり無理心中が遭った物件と言うことで敬遠され、現在まで全く借り手がつかない状態なのだ。このままではこの部屋だけでなくその周囲の部屋でも敬遠される可能性が高まったため、何とかしてこの部屋に住んでもらう人を探して事故物件のレッテルを外したい、要するにルームロンダリングしたい、と言うのが相田桃というか会社の希望なのだとか。そこで会社では、1週間滞在できたら10万円払うという触れ込みでアルバイトを募集した。すると何組かの応募があり実際にその部屋に住んでもらったのだが、全ての応募者がほぼ1~2日で諦めて逃げ出してしまった。こうなると、絶対に何か出るのだろうと誰もが思う訳で、以後滞在費を20万円、30万円に値上げしてアルバイトを募集したのだが、やはり全応募者は長くて3日までで諦めてしまったと言う。そこで今は50万円にて再募集を行っているのだと言うが、あそこは確実にやばいという噂が広まっているようで、誰からも応募が来ないのだ。
そこで相田桃が知人に霊能者がいるからお願いしてみるとなって、かすみに連絡が来たということだった。そんなことを電話で説明されたかすみだが、霊が出ること自体は特に問題なく、それで1週間大坂に滞在して50万円貰えるのはかなり美味しいと踏んでいる。ただ、ここで直ぐ飛びつく程お人好しではないので、一旦玲と相談すると言って電話を切った。今の時間はまだ午後10時前なので、玲は多分起きていると思い、玲の部屋に行って今の話をすることにした。
「へー、なかなか美味しい話じゃないの、かすみ。
しかも、実家のある方面だから
気が楽なんじゃない?」
「まあね、ただ、1週間滞在する必要があるから、
ここの仕事をどうするか、となるけどね」
「まあ、どうせ、かすみは行く気満々なんだろ。
いいよ、行ってきたら。
こちらは多分問題ないでしょう。
あるいは、何かあれば転移で戻って
来てもらってもいい訳だしね」
彼らには奥の手である転移が使えるので、どこに行っても直ぐに戻って来られるのだ。しかもかすみも、彼女の誕生日にレベルアップしたおかげで、美土路神社と大阪を往復するに十分な召喚エネルギーを持っている。と言うことで、この案件の対応にはかすみが向かうことになった。そうと決まれば、早速相田桃にこちらはOKですとの連絡を入れて、後は細かな日程調整をした。その結果、今週末の土曜日から翌週の金曜日までの滞在と決まった。




