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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-51 秋祭り(前編)

秋祭り(前編)


美土路(みとろ)神社では、9月の末に[美土路戦勝際]と言う祭りが開催される。これは戦国時代にこの一帯を治めていた美土(みと)一族が、戦で勝利したことを記念して開催されたと言い伝えられている伝統の祭りである。ちなみに、この祭りでは何が行われるのかと言うと、例えば戦装束を身に纏って合戦の真似事をすることはなく、何かしら男衆が裸になって騒ぎ立てるでもなく、単に神輿を担いで練り歩くだけという標準的な祭りが行われるのだ。ただ、この街の人達にとっては、年に一回町中の人が神社に集まって飲んで騒ぐというのを楽しみにしており、今年もどのような日程でどう進めるかを決める会合が7月から美土路神社の社務所の集会室で始まった。そこには、当然神社の雑務一切を司る最神玲と物部かすみも手伝いで参加していた。ちなみに、この祭りは美土路神社の氏子が中心になって進められており、氏子総代は代々神薙(かんなぎ)家の当主が務めていた。だが、神薙家当主が毎回会合に出席することは無く、大体は初回だけ挨拶してそのまま退出するのであった。そして、以後の会合に神薙家当主は出席せず、氏子副総代が会合を主導していく。


 さて初回会合のあるこの日、午後7時から社務所の集会室で初会合が行われるため、玲とかすみは午後から時間を見ては集会室の掃除を行い、あとはお茶と茶菓子を用意するという作業を会合が始まるまでに無事に終えた。7時少し前から少しずつ会合の参加者が集まりだすので、その都度挨拶と茶を用意して振る舞ったりする作業を行った。そして最後に氏子総代を務める神薙家当主の神薙宗座衛門(そうざえもん)が登場するに至り、ここに今年の美土路戦勝際は始まったのであった。そして宗座衛門が社務所でかすみを見つけると、


  「おー、かすみちゃん、元気にやっているかい?」


と声を掛けて来た。そこでかすみも


  「今晩はおじさん。私は全然元気ですよ。

   叔父さんも元気そうですね」


などと世間話をし始めた。それから、玲を指さして、


  「おじさん、こちらはうちが世話している玲です」


  「あ、初めまして、最神玲と言います、

   って、かすみ、誰がお世話されているんだ?」


とかすみに指摘しても、明後日の方を向いて知らん顔をする始末。全く、どこまでいい子ぶるのかとかすみを睨む玲であった。そんな二人を眺めていた宗座衛門は、「ははは」と笑いながら「最神さん、かすみのこと宜しくね」と(ねぎら)った。あー、この人はちゃんと分かっているな、と安堵する玲である。


 さて初日の会合は具体的に何か進める訳ではなく、大体は顔合わせが中心になる。そして、宗座衛門から会合の参加者にかすみと玲を紹介してもらい、以後皆さんのお世話をすることになりますので宜しくお願いします、と玲が代表して挨拶をして会合は終わった。



 ところで美土路神社で開催される美土路戦勝際は、ごく普通に神輿を担いで町内を練り歩く、その様な祭りである。いや、正確には神輿を山車に載せて練り歩くが正解だろう。ではなぜ、神輿を態々山車に載せるのかだが、実はここにこの祭りにおける大きな問題が関係する。それは神社の石段をどうやって登り降りするのか?である。仮に山車のまま石段を登り降りするにしても、もはや人力では不可能である。そこで山車を神社の麓のどこかに設置し、神輿だけを石段の登り降りさせることにしたのであった。そして美土路戦勝際のある意味での見どころとなるのが、この神輿の石段登りと石段降りであった。


 これに関して代々神薙家に伝えられてきた話だが、元は敵将の首を台に載せて、それを石段を登って神社の本殿に捧げたことが始まりとされている。その後、首を台に載せることは流石に出来なくなったため、代わりに台の上に首に似せた物を載せるようになり、その後今の神輿になったと伝えられている。なお、美土路戦勝際で使われる神輿であるが、形状的には神輿の屋根に鳳凰が飾られ、朱色の飾紐で彩られ、正面に鳥居を配した見た目は正に神輿というものである。そして本来の神輿は、神社に祭られている神霊が鎮まる場所として機能する。ところが美土路神社の神輿は少し特殊で、神輿本体に扉があり、内部には何も安置されていない。そのため、祭り当日に神霊が神輿に鎮まることはないのである。では何が鎮まるのか?それは先にも述べたように、敵将の首に相当する物を神輿の内部に収めるのである。今の時代は、素焼きの壺が神輿に収められ、それを神社に奉納し、最後は首が朽ちる様子を表現するために素焼きの壺を割る、というのが美土路戦勝際の締めである。そして素焼きの壺は氏子総代である神薙家が用意するため、美土路神社を出発した神輿はそのまま直接神薙家に向かい、敵将の首を受け取るという儀式を行って首に相当する壺を神輿に安置する。そして、神輿を山車に載せて町内を練り歩くのである。ちなみに、数十年前の昔は神輿だけで練り歩いていたのだが、神輿のままだと安定性に問題があり、遂には神輿内に収められた壺が倒れて割れるという大事件が発生した。そこで後日氏子連中が集まって協議した結果、山車に載せて練り歩く方法が採用されたのだ。


 ところでこの特殊な仕様の神輿であるが、これがプラスチックで出来ていれば石段の登り降りは楽である。ところが、神輿の重量は標準的な重さである500kg近くあるため、力自慢の男衆30人程が担いで慎重に石段の登り降りをしないといけない。特に、石段を登る時は神輿の内部に壺が安置されているため、それをやる方は当然のことながら緊張感は尋常ではないし神経を大いにすり減らしてしまう。だが、無事やり切った時には担ぎ手の間に達成感と連帯感が生まれるのだという。そしてこの達成感を共有した者達の間には、必然的に仲間意識が生まれて、その後各自が仕事をするうえで色々と役に立つのだそうだ。一方、見る方の観客だが、こちらも神輿の挙動を手に汗握って見守っており、無事石段を降り切った、あるいは登り切ったときには、極度の緊張から解放された安堵から盛大な拍手が起きるのだという。


 さて、このような一体感を生む美土路戦勝際であるが、ある日の会合に出席していたある参加者から、玲に神輿の担ぎ手をやってみないか、との誘いがあった。最神玲であればそこそこ筋肉もあるので神輿の担ぎ手をするには問題ないのだが、中身のカーンフェルトは元々筋肉ゼロを自虐にするような人物である。そのためこの誘いに二の足を踏むのだが、折角の機会なのでと思い直し、担ぎ手に参加する事を決めた。ただし、彼は神社の雑務や当日の差配をしなくてはならないため、参加に制限がつくことは了解してもらった。そして、会合が終わると早速かすみが玲に近づいてきて


  「ねえ、玲、大丈夫なん、あんた?

   今は全然筋トレとかしてないよね」


  「うーん、分かんない。まあ、何とかなると思うよ」


  「なんちゅう楽観的と言うか、アホなんかあんたは!」


となぜかニコニコしながら玲を罵るかすみである。何か面白いことがありそうな予感をかすみは抱いたようだ。



 さて、美土路戦勝際本番まで後1週間と迫った頃、玲もかすみも祭りの準備で忙しい日々を送るようになった。ただし、警備や屋台の管理とかは全て氏子衆が行うため、玲とかすみは神社内の飾りつけなどが主な仕事となる。ちなみに、この頃になると日頃は閑散としている神社の境内も少しずつ参拝客が訪れて賑やかになってくる。


 そして迎えた祭り当日。朝から境内は祭りの法被(はっぴ)を身に纏った大勢の人で賑やかである。玲もかすみも、境内がこんなに賑やかになるのを今まで目にしたことが無く、かすみに至っては「この人たち、どこから湧いて来たん?」などと失礼極まる発言をしたりしていた。そして普段開くことのない宝物殿と言う名の神輿格納庫であるが、そこには頭には白い鉢巻、上半身は白い()()()を巻き、下は白い半ダコと呼ばれる膝上までの股引(ももひき)、そして足元は白の地下足袋を身に纏った担ぎ手集団が(たむろ)していた。勿論、玲も今日は担ぎ手の一人になるためこの装束に身を包んでいた。実は朝から担ぎ手のこの衣装の準備をするために玲は四苦八苦していた。と言うのも、カーンの住んでいたケンタリアでも祭りはあるのだが、このような衣装を身に纏って神輿を担いだりすることは一切なく、そういう点で今回の祭りは初体験なのである。ただ、この独特な衣装のうち、パンツ代わりの半ダコは何とか自分で対応できるのだが、胴回りに巻くさらしは一人では無理なので、結局かすみに手伝ってもらって何とか様になるようになった。すると


  「玲、こっち向いて」


カシャ、とかすみはスマホで写真を撮ったのだった。


  「おいおい、かすみ、誰が許可したのかな?

   肖像権の侵害になるぞ」


と抗議する玲だが、かすみは「これをタチアナさんに送るの」と言って、送信してしまった。最近ではかすみはタチアナさんとLINEではない別のチャットアプリを使って、偶にやり取りしているという。すると、


  「はや!もう返事来た。ははは」


と言ってかすみはタチアナからのメッセージを玲に見せた。そこには[Oh Cute♡]と添えられていた。あちゃー変な写真を何でタチアナさんに送るんだ、と玲はかすみに猛抗議するが、かすみは全く意に介さない。


  「それよりも、早く境内に行った方が良くないかい?」


と言って、さっさと玲を家から追い出してしまった。


 さて、玲も担ぎ手集団に挨拶することにした。


  「初めまして、美土路神社の手伝いをしてます

   最神玲と申します。宜しくお願いします」


そして、歳は50代半ば位の山崎と名乗る担ぎ手の纏め役を務める人物が


  「最神さん、宜しくね。

   緊張しなくても大丈夫だからね」


と声を掛けてくれた。おかげで少しだけ気持ちが楽になった玲である。また、担ぎ手集団に見知った顔が居た。彼は以前かすみを訪ねに家にやって来たかすみの幼馴染の神田和利であった。


  「神田さん、ご無沙汰してます」


  「あ、最神さんでしたっけ。

   すいません、俺昔から名前覚えるのが苦手でして、

   はは」


と前回会った時とはかなり印象が変わった神田和利である。文字通り憑き物が落ちたので気持ちがスッキリしたのかと思ったりしたが。そして彼と先程まで話し込んんでいたのが


  「最神さん、彼が前回来れなかった

   かすみの幼馴染のヒロです」


  「初めまして、大江山博人(おおえやまひろと)です」


どうも、最神玲ですと挨拶を交わした。大江山博人は少しぽっちゃりした、何となくオタク系っぽい感じの青年であった。そして、彼らもまた、担ぎ手として参加するのだった。


 ところで、美土路神社の石段は、石段の奥行きは人一人がなんとか立てるサイズはあるが、民家の階段かと思うくらいの結構な勾配を持つ。そんな石段に対し重さ500kgの神輿をどのようにして登り降りするのか?それは、担ぎ棒を石段と平行にし、石段下側は担ぎ棒を肩に担ぐように蟹歩きとなり、石段上側は担ぎ棒を手に持つ感じで対応するのである。この場合危険度は石段下側なのだが、意外と力が必要なのは石段上側になる。そのため、玲はそんなに力が無いと自己申告したのだが、下側で担ぐ側は各自の身長を揃える必要があるため、結果石段の上側の担当となった。なお、この石段は、朝のうちに玲とかすみは掃き清めておいたので、いまは落ち葉もゴミもなく綺麗になっている。玲はそんな石段を降りて鳥居の先に繋がる道路を見渡すと、道の両側には露店が立ち並び始めて、いよいよ祭りの雰囲気が出て来たのを実感するのであった。


 朝の8時になると、いよいよ祭りの開始となる。先ずは田所宮司が祝詞を挙げて祭りの成功を祈願する。その後黒紋付羽織袴を身に纏った神薙宗座衛門が氏子総代として挨拶をし、担ぎ手一同が一斉に声を挙げて気合を入れる。そして神輿を担ぎいざ出陣。ちなみに、神輿の担ぎ手は2グループに分かれており、神社境内から石段を降りてそのまま神薙家に向かう先組が30名、石段を登って境内に安置する後組が30名となっている。なお、町内の練り歩きは先組も含めて交代で行われる。こうして負担を軽くしながら公平に扱われるのであった。そして、玲であるが、彼は先組の所属となり、進行方向左後ろ側を担当した。そしてそんな玲の姿をかすみは写真と動画に収めていった。


 さて玲は、最初にして最大の難関である石段降りを迎えていた。まず神輿の右側を石段方向に向けてそのまま全員で移動する。そして一段一段リーダーの掛け声を元に、「ヨッシャー」と気合を入れながら降りて行く。途中玲は担ぎ棒を支える腕に力が入らなくなってよろめくところがあったが、周りの皆の気迫に飲まれて、「ヨッシャー」と気合を入れた。そして最後の一段を降り切ったところで、全員で「ヨッシャー」と気炎をあげたのだった。この時の達成感は、玲の生涯で忘れられないものとなった。その後は、再び神輿を担ぎあげて、次の目的地である神薙家へ向かった。



 神輿の巡行は何事もなく無事に終わり、あとは最後の難関である石段登りを残すのみとなった。この石段登りを行うのは後組のメンバー30人である。登るも降りるも大変さは同じだが、登る方は更に神輿内部に壺が安置されている。そのため、壺を落とさないような慎重さがさらに要求されるため、肉体だけでなく精神的にもかなりの苦痛を強いられるのだ。そして石段の真ん中あたりまで進んできたそのとき、神輿の左前側の石段登りでは石段下側を担当する一部の担ぎ手が石段に足を引っ掛けたのか、バランスを崩してしまった。その拍子に神輿が前方に傾いたかと思ったその時、


  「あー!!」


という叫び声が応援に回っている玲のいる先組から一斉に発せられた。と同時に、神輿の扉が開いて、中に安置されている壺が転がり出て来たのである。


  「おい、やばいぞー、誰かー!」


という絶叫が木霊する中、近くに待機していた応援組の一人が何とかキャッチした。が手元にうまく収まらず、壺はそのまま石段横の下草の中に転がり落ちて行った。その瞬間、その場は凍り付いたように一気に静まり返った。誰もが壺が割れたと確信した時、担ぎ手の纏め役の山崎が直ちに現場に駆け寄って壺を確認した。すると


  「おーい、壺は無事だ。何も割れとらんぞー!」


と大声で叫んだのである。これを聞いた担ぎ手と観客全員は、飛び上がらんばかりに「よかったー」と喜び合った。そして、あるベテランの担ぎ手からは「そう言えば、今年の美土路神社は何時もと少し感じが違うんだよな」と語っていたが、勿論玲には思い当たることがある。加えて、壺が落ちそうになった時、本当はそのまま落下して割れるはずだったのが、見事なサポートで回避させた人物を見ていたのだ。そんな玲が一人誰にともなく呟く。


  「ご神体さん、何か楽しそうだったな」


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