地球転生編 2-36 最神玲と物部かすみ、おっさんと再開する(後編)
最神玲と物部かすみ、おっさんと再開する(後編)
さて、若林成政との食事をする当日を迎えた。実はこの日に至るまで、玲とかすみの周りでは色々なことがあったのだが、それも何とか解決できたので、今日この日を二人共楽しみにしていたのであった。ところで、二人共どのようにして移動するのか?玲の何時もの転移を使うことも考えられるのだが、今回はその必要はない。と言うのは、若林が直接彼らの所に迎えに来るというのである。さて、食事会は夕食と決まり、目的地の温泉旅館[仙寿苑]まではかすみの記憶によると(かなり怪しいが)ここから車で1時間ちょっとらしい。そこで美土路神社へは午後4時位に迎えに上がりますとの連絡を貰っていた。
午後4時になったので、玲とかすみは一緒に下の駐車場に行くことにした。ちなみに、美土路神社には10台程は駐車可能な専用駐車場が、田所宮司の住まいの道を挟んだ向かい側に用意されている。そして、石段を降りたところで、駐車場に数台の黒塗りの乗用車が駐車されているのを二人は目にした。あれ、今日ってそんなに参拝者って居たっけ?と二人は同時に首を傾げるのであったが、玲とかすみが駐車場に現れると、そのうちの1台の車から見知った紳士、若林成政が姿を現したのである。
「あっ、若林さん、もう到着されていたんですか。
遅くなりまして大変申し訳ありません」
「いえいえ、最神さん、物部さん、
我々も今到着したところですから」
と挨拶している間に、駐車場に止まっていた黒塗りの乗用車から10数名の人達が姿を現したのである。えっ、この方達は、もしかして若林さんの部下の方達ですか?
「最神さん、物部さん、
この者たちはワールド・クローズの社員でして、
全員これからロムリア関係の業務に
専念することになります」
と言われて、彼らは玲とかすみに、それぞれ名刺を差し出すのであった。あっ、僕ら名刺とか作ってなかったな、とかすみとアイコンタクトする玲である。頂いた名刺を見ると、常務取締役を筆頭にいわゆる中間管理職以上の者達がここに来ていた。あれ、この人若林成幸とあるけど、何となく若林さんに似てるな、と思ったら「申し遅れました、彼は私の愚息です」と若林から紹介された。実は息子の若林成幸とは、暫く後にまた関わることになるのだが、この時の玲とかすみにはそんなことは知る由もないのである。全員から名刺をもらった玲とかすみだが、玲は彼ら彼女らの下に更に部下がつくのか、うーん、凄い組織なんだなー、と変なところで感心するのであった。
さて、一通り挨拶が終わったところで、玲、かすみ、若林は同じ車で目的地に向かうことになった。車中では、今の玲とかすみの生活や仕事について面白おかしく談笑しながら過ごしていた。そして、今日の目的地である仙寿苑に到着した。一同、車から降りて来て玄関ホールに集まった時、
「今日は皆さんこちらに泊まられるんですよね?」
と、当然よね、と言う感じでかすみが若林に尋ねたのだが
「はい、彼らは今日はここに泊まりますよ。
ただ、私はこの後東京に戻ります」
えー、マジですか、明日は日曜日だからゆっくりできる思うんですが、とは玲の心の声。恐らくかすみも同じだろう、その表情から察するに。大きな組織になると、社長は土日でも休むことがないのかなと、思う玲であった。
「そうすると、何か僕らの都合に合わせてもらって、
大変申し訳ないというか、恐縮してしまいます」
と若林に対して頭を下げる玲と、それにつられて一緒に頭を下げるかすみであるが、若林は
「いいえ、最神さんと物部さん、
私の方から無理をお願いしてお誘いしたのですから、
そんなに畏まらないでください」
と逆に若林に頭を下げられるのであった。何れにしても、玄関先で頭を下げ合うのも何なんで、と若林からの提案で、皆は食事会場に向かうのであった。ちなみに、食事をする部屋は、玲とかすみと若林(社長)だけが個室で、残りの社員は大広間での宴会となった。なぜこのような変則的な対応になったのかというと、元々は社長の若林だけが玲とかすみと食事をすることになっていたのだが、社長だけに行かせる訳にはいかないなどの意見が出てしまい、結局同行は許可するが、食事は自分と彼らだけにする、という折衷案で了解を得たのである。そんな説明を玲とかすみは受けながら、個室に案内されたのである。
「うわー、何か凄い豪華ね、この部屋」
その部屋は、和洋折衷な感じではあるが、上手く調和を施すように作られていた。部屋全体としては和室であり、広さは20畳程、床の間には初夏を思わせる青楓を描いた掛け軸が飾られ、その手前には青磁の花器に1輪の杜若が添えられており、床の間全体に初夏の風景が浮かび上がってくる。そして、部屋の中央には和室に付きものの座卓ではなく、黒漆塗りの光沢の鮮やかな洋テーブルと、座面を錦であしらった同じ黒漆塗りの椅子が4脚、部屋の雰囲気を壊すことなく見事に調和して配されていた。そして今は開け放たれている個室を仕切る障子の向こう側に、縁側と小さな池を持つ坪庭が目に入る。丁度今は午後6時で、日没までは少し時間があるが、庭を囲む築地壁が作る影がいい塩梅の印影を醸し出している。
さて、座席であるが、玲とかすみは下座に着こうとしたのだが、若林に止められてしまい、いやいや、私が下座にとか…結局、床の間の前の上座には玲、その隣にかすみ、そして玲の正面に若林と決まったのである。そして、いよいよ食事となったのである。今回は、ここ仙寿苑自慢の会席料理となった。かすみも、昔ここにきて会席料理を食べたことがあって、凄く美味しかったことを記憶していることを皆に伝えた。そのとき、若林がかすみにここに泊まられたのか、と尋ねたので
「いいえ、私は差間見町の神薙家に泊まってました」
と答えた。すると、ほー、そうでしたか、と言う若林の返事。何かご存じのなのかとかすみが尋ねると、若林は大学で郷土史を専攻していて、その調査で差間見の美土路にやってきたことがあったとのこと。その時に神薙家で色々と過去の資料を見せて頂いたことがある、という昔の話を披露したのであった。それを聞いた玲とかすみは、
「実は僕らも、東洛総合大学の卒論で
民間伝承の研究をしてまして」
と言うことを話して、暫しその話で盛り上がった。その後、新たに配膳された色鮮やかなの和食器に載せられた料理に舌鼓をうちながら、フランスに行く経緯を話し出したのである。そのとき、玲が
「隣のかすみですが、最初若林さんに声かけられた時、
『なんなん、このおっさん』などと呼んでましたよ」
とかすみのおっさん発言を暴露したのである。これには、かすみも、
「もう、玲、余計な事いわないでよ!」
と顔を赤くして怒るのであるが、当の若林は、「おっさんですか、確かにそうですよ、ははは」と笑い飛ばしてくれた。そして、
「しかし、ロムリア代表のタチアナ氏と
どうやってお知り合いになったんですか?」
と尋ねて来たので、
「実は、タチアナさんの秘書をされているゲラルドと
言う方がおられるんですが、
彼日本語がペラペラなんです。
と言うのは、一時期日本に住んでいたことがありまして、
その時に彼とは仲良くなったんです。
そして、彼がフランスに戻ってロムリアに就職して
タチアナさんの秘書になった時に紹介してもらった、
というところです」
何とも筋の通った話であるが、実はこのシナリオはタチアナが作ったものであった。まさか同じ星からやって来た同郷の異星人ですとは絶対に言えない訳で、尤もらしいシナリオを玲とかすみは考えていた時に、タチアナからこんなのはどう、と紹介されたのがこのシナリオであった。勿論、ゲラルドには了承を得ている。
「はあ、私からしたら、
何とも凄い幸運と言うしかないですがね、
ははは」
それはそうだろう、と玲も感じるのである。タチアナというよりは、セラスティナに会えたというのは、カーンにとっては何事にも代えられない幸運であった。その後は、少しパリでの話などをして、最後のデザートが出てきたときに、玲とかすみの今の仕事について尋ねて来た。
「僕とかすみは、実は就職がうまくいかなくて、
それでどうしようかと考えていた時、
かすみのお母さんから美土路神社で
手伝いを探しているけど、
と言う話をもらいまして、
まあそんな縁で今ここに居るんですよ」
と玲が語りだした。そして、自分が実は交通事故で今も記憶を無くしており、かすみは何十社かにESを出したけど駄目だったので、今こうして次に向けて色々やってます、みたいに話した。かすみも、ワールド・クローズにもES出したんですけど、落とされました、と冗談っぽく話したら、
「え、それは申し訳ない。でも物部さんさえよければ、
うちで働いてもらいたいんだが、どうだろうか?」
と何やら真剣な表情で頭を下げながら問いかけられたので、かすみも「いえいえ、今のままで大丈夫です」と答えたのであった。ちなみに、タチアナさんからもお誘いを受けたのですが、そちらも断ってますので、と笑いながらかすみは答えたので、タチアナ直々の誘いをなぜ断るんだ?と不思議な顔をする若林であった。そこで、玲とかすみが今行っている仕事について、若林に話すのである。
「うーん、俄かには信じられないというか、
正直、私もそう言うのは信じない方なんでね。
あっ、でも、君達の仕事にケチをつけるとか
ではないんで、そこは誤解しないでください」
「若林さん、僕らは別に気にしてませんから。
むしろ、多くの方は皆若林さんと
同じリアクションされますから。
でも、それは結局見たことないから、
見えないからというだけであって、
実は見えると状況が違ってくるんですよ」
と言って若林の前に差し出したのが、何時もの霊視グラス(かすみ命名で確定)である。
「この眼鏡は特殊でして、左目のレンズがある方をだけは
霊体を見ることが出来るんですよ。
まあ、騙されたと思ってつけて見てください」
と言われて、若林は訝しみつつ眼鏡をかけたのである。そして、少しその辺を見てみたら、と言おうした時、若林か坪庭のある場所をかっと目を見開いて呆然と立ち尽くすのであった。あー、見えたのね、とは玲とかすみの意見である。実は玲もかすみも、この部屋に入った時から坪庭の右奥に佇む老婆と思しき霊体を目撃していたのだが、別段彼らに悪さする訳ではないことは分かっていたので、そのままにしていたのであった。
「若林さん、そこの庭の右奥に和服というか
浴衣姿の老婆が佇んでますよね」
は、は、はい、と余りの驚きで言葉がなかなか出てこない若林であった。そして続けて
「すいません、驚かせてしまいまして。
実は僕らがここに入って来た時から居たんですが、
まあ、何か悪さするわけではないので、
そのままにしていたんですよ。
これが手品とか眼鏡に何か細工があるのか、
とか思われるようでしたら、
近くに寄って確かめてもらっても大丈夫ですよ。
ちなみに、その細いフレームに通信装置とか仕込むのは
今の技術でも不可能ですし、
ましてやレンズ自体に仕込むのも無理なんですけどね」
と、さも日常の平凡な会話をするかの如く淡々と話す玲である。そして、若林は意を決して、だが恐る恐るその霊体に近づくのである。玲、大丈夫なの?と心配するかすみであるが、ここに降霊召喚術師が2名いるんで全く問題ないよとかすみを安心させるのであった。若林は、霊体に右手で触るが全く何の感触もなく、ただ左目のレンズ越しには、霊体を素通りする右手をしっかり捉えていたのである。また、その状態から首を左右に振ってみたりするが、元の位置に戻って再び正面を見ると、そこにはまだ老婆の霊体が居ることを確認したのであった。そして、漸く個室に戻って来たのだが、その額には極度の緊張からか大粒の汗が浮き出ていた。
「あれは、本当に霊体なんですね?
そして、お二方はあの霊体を除霊されるんでしょうか?」
と霊視グラスをテーブルに置きながら尋ねる若林である。除霊と言うよりも、霊界に送り届けるの方が正確かと思います、とはかすみの発言。かすみ、なかなかいい表現だね、と玲は感想を漏らした。
「じゃあ、かすみ、
あの霊体を霊界に送り届けてもらえる?」
と言って、かすみは立ち上がり縁側にでて降霊召喚術を始めた。そこで慌てて、若林は再び霊視グラスを掛けて、その様子を見ているのであった。そして、「召喚!」と呟いた時に、霊体は門の中に吸い込まれていった。
「い、今のは、何だったんですか?
何か門のようなものが見えましたが」
と驚きを隠せないままにかすみに尋ねる若林であった。あれは、この世と霊界を繋ぐ門で、自分たちはその門を開閉することが出来るんですよ、とかすみは説明したのである。すると、
「今とは逆に霊界からこちらに霊を呼び出す
ことも出来るんですか?
例えば、恐山のイタコでしたっけ、
あの方々みたいに呼び出した霊魂を
自分に憑依させて言葉を話すとか」
と何か興味が湧いて来たのか、再び質問をしてきたのである。それに対して、玲は
「例えば自分に近しい人の霊体を
呼び出すことは出来ますが、
それを例えば我々に憑依させることはしません。
それよりも、霊体と直接会話できるように
その手助けをするという方が解釈としては
正しいかと思います」
普通にイタコのように霊体を呼び出した場合、霊体と依頼者の間で直接会話をする事はできない。一方、降霊召喚術の場合、降霊召喚門を地面に設置して召喚するとその召喚門内に霊体が留まっている限りにおいてだけ、霊体と直接会話することが出来るのである。ただし、その霊体が霊界に留まっている場合に限られるが。と言うようなことを掻い摘んで若林に説明したのだ。
「最神さん、物部さん、実は…」
と言って語りだしたのは、若林が最近一人の親友を事故で亡くしたが、その親友とは過去に色々あってここ10年程音信不通になっていた、そして彼にどうしても謝りたいのだとか。
「若林さん、その御友人の遺品とか所縁の品物とか
持ってますか?」
「残念ながら何も持ってませんが、
写真とかではどうでしょうか?」
と言って、スーツの内ポケットから札入れを取り出し、中から一枚の写真を取り出した。それは10年以上前に撮られた若林と友人のスナップ写真であった。
「うーん、ちょっと分かりませんが、
もしそのご友人の方がこの写真に
何かしら思い入れがあるのであれば、
大丈夫かもしれません。
ただ、そのご友人の魂が霊界に既になく、
別の人生に転生したりしていると、
呼び出すことは出来ませんが、
その点は宜しいでしょうか?」
はい、と力強く返事をする若林である。では、これから降霊を行いますが、宜しいでしょうか?と玲が尋ねた時、えっ、今からですか、と驚きを隠せない若林であった。何の心の準備もなくいきなり今と言われると誰でもそういう反応になるよな、とかすみは隣で見ていて思うのだが、果たして。
「は、はい、今からでも大丈夫です。お願いします」
と言うことで、では、またそのグラスを着用してください、と玲に言われて霊視グラスをかけるのである。そして丁度この部屋の隣が控えの間になっているので、そこで降霊召喚門を畳の上に設置して、そこに写真を添えて、名前を術式に組み込んで、いざ召喚となったのである。すると、
「あっ、まだ転生はされてなかったみたいですね。
こちらが若林さんが会いたかった友人だと思いますが、
若林さん、問いかけてみてください」
と玲に言われて、驚きに目を見開いた状態の若林が、口をパクパクさせながら、しどろもどろで話し出すのであった。
「い、い、い、一郎、一郎か?」
「・・・お、ま、え、し、げ、ま、さ、か」
「一郎、すまん…」
:
:
およそ10分程の対話であったが、涙と鼻水で顔がグチャグチャになった若林は親友の一郎と対話できたことで、何か憑き物が落ちように晴れやかな表情をしていたのであった。そして玲は、テーブルの上に置かれていた新しいおしぼりを若林に渡して、召喚門を解除したのである。そして
「若林さん、無事対面できたようで良かったですね。
それにあなたの思いも彼に伝わったようでしたし」
と労わるように伝えるのであった。かすみも、若林と一郎の対面を通じて、何か感じるものがあったのか、目に涙を浮かべてハンカチで涙を拭いていたのであった。
若林が漸く落ち着きを取り戻したとろこで、部屋にノックがあった。玲が「どうぞ」と声を掛けると、若林の秘書が現れて「社長、そろそろ時間ですが」と告げたのであった。もう直ぐ午後の9時になろうとしていたのであった。そこで、3人は急ぎ帰り支度をして仙寿苑の玄関ホールに向かうのであった。玄関ホールには既に随行の社員が待機していたが、若林から「今日は皆ゆっくりしていってくれ。また週明けに会社で会おう」と声を掛けたのである。彼らからしたらちょっとした社長からのプレゼントなのだろう、皆声をそろえて「有難うございます」とお礼を述べていた。
「若林さん、僕らはここからタクシーで帰りますから
大丈夫ですよ」
と玲はそう告げるのだが、若林は自宅まで送りますと言うし、宿泊する社員からも「私達でお送りします」と申し出を受けるが、玲もかすみも転移で帰る予定なので、そこは丁重にお断りした。
「では、最神さん、物部さん、今日は有難うございました。
本当は私がもてなすはずでしたのに、
何かお二人にもてなされたようで、申し訳ないです」
と言って頭を下げるので、こちらも
「そんな、気を使わないでください、若林さん。
僕らも楽しいひと時を過ごせて、大変有り難かったです。
どうも有り難うございました」
と玲とかすみも深々と頭を下げてお礼を言うのであった。
こうして、彼らの食事会は終了し、玲とかすみは手を振って若林を見送ったのであった。
「すいません、僕ら少し酔いを醒ましたいので、
ここらを散歩してからタクシーで帰ります」
と宿泊される社員に告げて、そのまま仙寿苑の外をぶらつくのであった。そして、暗闇に差し掛かったところで
「さて、かすみ、帰ろうか」
と言いながら、門を展開しようとしていた玲に対し
「ねえ、玲、私にやらせて」
とかすみが言うのであった。え、かすみ、転移できるの?と思われる方もおられるだろうが、実は1週間前にかすみは玲から転移術を学んだのであった。そして、それを今ここで使いたいと言うのである。
「えー、大丈夫、かすみ?変なところに転移させないでね」
と冷ややかに言う玲であるが、そんなことにもめげず、かすみは「設置」と叫んで空間中に転移門を呼び出したのである。
「おー、立派な転移門だけど、大丈夫?」
と少し不安になる玲だが、転移先をサーチモードて確認しながら
「ちゃんと、座標もOK、
場所もOKと全て確認しております」
と敬礼するかすみであった。では、
「転移大丈夫ですよね、かすみ」
といって転移門を潜った玲であったが、その直後に「あー、かすみー!」という玲の悲鳴が。ただ残念ながら転移門に入っていないかすみの耳には届かず。そして、何も知らないかすみも転移門を潜った時に、「うわー、やっちゃったかー」との叫びが。かすみの転移門は、確かに玲とかすみの住む住宅にあったのだが、転移されたのが家の屋根であった。要するに平面座標は合っていたのだが、高さ情報が間違っていた、ということであった。まあ、屋根の上であったのは幸いである。これが地面の中であったら、悲惨な状況になっていたことは想像に難くないのである。




