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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-22 最神玲と物部かすみの卒業旅行inパリ(前編)

最神玲と物部かすみの卒業旅行inパリ(前編)


2月中旬、最神玲の下宿宛てに1個の小さな小包が届いた。送り主は、タチアナ・エグリスコバ。そう、玲とかすみが待ちに待ったパリ・ファッションウィークへの招待状であった。勿論、招待状だけでなく、彼らのための往復の航空チケットも同封されていた。しかもファーストクラスの航空券という、学生の身分(と言うか資金力)では絶対に買えないチケットである。なお宿泊するホテルに関しては、現地到着までのお楽しみ、と言うメッセージも添えられていた。とにかく玲とかすみは、タチアナからの至れり尽くせりの歓待を受けることになるのである。早速玲は、かすみにLINEでタチアナからの招待状が届いたとのメッセージを送信した。すると、送信してから20分後に玲の部屋の呼び鈴が連打され、有無を言わさずドアが開けられて


  「玲、招待状見せて!!」


と挨拶もなくいきなり本題に入るかすみの姿がそこにあった。興奮するのは分かるが、全く忙しないかすみである。


  「かすみ、別に招待状がどこかに

   逃げたりしないから、

   そんなに慌てることはないよ」


と忠告しても、彼女の耳には届かず。何分、本当に招待されるのか一抹の不安があり、「今日届くかな」とか「まだ届いてない?」とかほぼ毎日のように尋ねてくるかすみであったので、この行動は当然と言えばそうなのだが。それで、招待状と往復の航空券をかすみに見せて、安心させることに。ところが、逆に興奮して


  「えーー、ファ、ファ、ファーストクラスーー!」


と、そこで息絶えたのであった。南無。いや、ビックリして腰を抜かしただけだが、それでもかすみが言うには、パリまで往復でファーストクラスで行くと、一人数百万円はかかるということで、そうなると今の玲の生活の当てにしている交通事故時に受け取った保険金が丸ごと消滅する値段となる。これには、いくら物価に無頓着な玲ことカーンでも、流石に目を白黒させてしまうことに。恐るべし、ファーストクラス。こんな一介の学生がファーストクラスで旅するのは果たして良いのだろうかと疑問に思うのだが、チケットがここに有る以上、どうしようもない。と言うことで玲もかすみも、タチアナの好意に甘える形で前向きに捉えていくことにしたのであった。ただ、そうなると、今度はそれに見合うようなスタイルと言うか自分にしないといけないと思う二人である。まあ、かすみはお嬢様なので、それこそ実家におねだりする手があるだろうが、玲に関してはその当ては全く皆無と言っていいだろう。しかし、玲の場合、と言うかカーンの場合、伝家の宝刀である召喚術がある。これを使えば、服装等に関しては何とかなる自信がある(ケンタリアと違って、召喚術を妨害する処理はされてないため)。ただ、流石にタチアナの手前、召喚した服装で出向くのはかなり気が引けるというか、もしかして私のブランドにもそんなことしているの?と疑われてしまう恐れがある。なので、結局は、学生らしくカジュアルだがそれなりに高級品っぽいのを買い揃えて持っていくことにしたのだった。


 さて、いよいよ出発当日を迎えた3月初旬のある日。今回は、東京の羽田空港からの直行便でパリに向かうため、一旦品川駅まで新幹線で行き、そこから乗り換えて羽田空港に向かうこととなった。流石の玲も電車移動には少しは慣れたので、以前の様に燥ぐ(はしゃ)ことは無く大人しく乗っていたのであった。そして、無事羽田空港に到着して、航空会社のカウンターでのチェックインと空港のセキュリティチェックを経て後は搭乗を待つだけとなった。ところで、彼らの手荷物はと言うと、かすみは自分が中に入れそうなくらい大きなスーツケースを1つ預けたのに対し、玲は機内持ち込み用に作られている小さなキャリーケースのみだったので、そのまま持ち込むことにした。勿論、海外出張に慣れたビジネスマンであれば、キャリーケースだけで1週間や10日間の海外出張には問題ないであろうが、海外旅行をしたことのない玲は論外。と言うことで、出発前にかすみは、「1週間の海外旅行なのに、何でそんだけしかないの」と玲に問い質したところ、玲は「必要なら転移して取りに帰ればいいんじゃない」だとさ。流石にかすみも心底呆れてしまうが、そんなかすみにはお構いなし。ちなみに、転移先にマーカーを設置しておけば簡単に転移して戻ることは可能だが、玲が言うには、かすみの部屋にも設置済みだとのこと。これにはかすみも驚きを通り越して


  「何で、私の家に勝手にマーカー設置するのよ!

   許した覚えはないぞー」


と玲に食って掛かる始末。まあ、勝手に他人に入られるのは誰でも嫌なのだが、そんな気持ちを知ってか知らずか、玲は「気にすんな、必要があったら利用してくれていいから」などと呑気に答えた。という訳で、結局玲の手荷物は精々2泊程度になったのだった。



 さて、搭乗までに少し時間があるが、ファーストクラスの場合専用のラウンジを使用できるため、彼らは少し緊張しつつ、ラウンジで待機することにした。


  「玲、ここって、何か嫌な緊張とかしない?」


  「ん?かすみ、何か気になるのかい?」


どうもかすみは、この場の雰囲気に飲まれてしまったようである。それと言うのも、彼らの周りには、それと言って分かるような人たち、所謂上流階級と呼べそうな人たちがラウンジにて出発待ちをしていたからである。それこそ、テレビで見たことのある芸能人とか経済界の大物とかがラウンジで待機しているのを見ると、何かしら自分たちが場違いと言うか、異世界に紛れ込んだのではと錯覚してしまうのであった。尤も、こういう場合、意外と玲ことカーンは神経が図太いというか、落ち着き払って佇むことが出来る。それは、ケンタリアで、15歳で召喚術技術研究所の研究員として着任した時、自分の周りは全て経験豊かな大人たちばかりであった環境に育ったことが一因となっているであろう。それと、仮に今回の招待が有名デザイナーからの招待であり自分の実力では決してないと分かっていても、そういう機会に恵まれるような運を引き寄せる力が自分にはあるんだという自信が、周囲からの圧に対して有効に作用しているのではないだろうか。何れにしても、今のかすみにとっては、玲の堂々とした振る舞いは、自分に安心感を与えてくれるものなのであった。そんな感じで少し落ち着きを取り戻したかすみであるが、やがて搭乗手続きを開始したというアナウンスが始まると、また少し緊張して来たのであった。


  「あっ、いよいよ搭乗して出発するのね」


ちなみに、玲はそもそも飛行機で空を飛ぶこと自体が初体験のため、かすみとは違う緊張をしていたのである。もしかして自分は、ケンタリアで初めて空を飛ぶ体験をする人になるのかな、などと想像したりするのであった。



 さて、羽田からパリのシャルル・ド・ゴール空港へは直行便で15時間弱となるが、ファーストクラスで移動するため、長時間のフライトでも快適そのものである。疲れたらシートを倒してフルフラットにして体を休めるし、機内食も有名店が監修する豪華料理(ただし事前申請が必要のため、玲とかすみはフレンチのフルコースを選択)とまさに贅を極めた旅行であった。なお、飛行機初体験の玲は、離陸時の機体の加速感と浮揚感に妙な感じを受けたものの、それ以降は地上にいる状態と何ら変わらないと感じたことで、今はシートに寛ぎながらほぼ動画を見るか、召喚リストにストックしている書籍を読むなどで時間を潰している。一方のかすみは、出発前の緊張感が嘘のようになくなり、超リラックスモード。CAさんに持って来てもらった飲み物を飲みながら動画を見ていたかと思うと、隣の玲にちょっかいを出したり、やりたい放題であった。まあ、何時ものかすみに戻って、玲もホッとしているのであるが。


 そんな状態でリラックスしているかすみの傍に、一人の男性が近づいてきた。どうやら、通路を挟んだ反対側の乗客らしく、トイレから戻って来る時にかすみに声を掛けたようである。


  「こんにちは。お嬢さん。

   少しお話しても宜しいですか?」


  「?」


キョトンとするかすみ。はて、お嬢さんって自分の事を言っているのかな?


  「わ、私の事ですか?

   えっ、えっと、何かやっちゃいましたか」


突然お嬢さんと呼ばれたりして、少し動揺気味のかすみである。実はこの様子を隣席の玲は本を読む振りをして横眼で眺めているのであるが、かすみの動揺に、なぜか笑いを抑えるのに必死になっている。いやー、かすみのあんな動揺してシドロモドロになるのはなかなかお目にかかれないぞ、などと呟きながら。


  「ゴメンね、急に声かけちゃって。

   僕、レニー隆也とい名前でモデルをやっててね、

   今回はパリコレからの招待で向こうに行くんだ。

   それでね、どう、良かったら僕の出る

   ファッションショーに来てみないかい。

   なんなら、パリの街も色々と案内してあげるけど」


要するにかすみに対するナンパであった。しかし、レニー何とかという30代半ばの俗にいうハーフ系モデルは、玲はおろか、かすみも全く存じ上げない名前であったが、とりありえずそんな事を1ミリたりとも口にすることなく、無難な会話を進めるかすみであった。


  「あー、そうなんですか、

   あっ、えーっと、私は物部かすみと言います。

   実は私たちも初めてファッションショーに

   招待されまして、それでパリに行くんですよ。

   ちなみに、どちらのファッションショーで

   モデルをされるんですか?」


  「僕はメイ・サカモトというブランドの

   専属モデルみたいな者なんだけどね」


  「すいません、私余りブランドのこととか

   詳しくないので分からないんですが、

   でも、凄いんですね、

   パリのファッションショーの

   ステージに立つんですよね。

   あっ、ご、ゴメンなさい、詳しく知らなくて、

   何か失礼なこと言ってしまって」


  「あー、良いよ、気にしないから。

   ところで、かすみさんはどちらから招待されたの?」


  「私と隣にいる彼は、

   ロムリアのタチアナさんからの招待なんです」


その時、周りの空気に変化が生じた。あれ、何か変なこと言った?


  「えっ、タチアナってロムリア代表の

   タチアナ・エグリスコバのこと?」


  「はい、そうですよ。あっ、ちなみに、

   私たちはステージに立つことは無いですけど、

   ははは。

   あっ、隣の彼がタチアナさんと友人なんです。

   それで今回彼女から招待されて向かうんですよ」


その時、突然かすみの前の席の乗客が通路に出て来てかすみに対し


  「話の途中に失礼。

   今、ロムリアのタチアナ・エグリスコバの

   名前が聞こえたんだが、

   君たちはロムリアの関係者か何かなのかね」


いいえ、単にタチアナさんの友達です、と答えるかすみであるが、当然その顔には怪訝な表情が。何だ、このおっさんは。


  「もしかして君達何か騙されたんじゃないのかね。

   ロムリアのファッションショーは

   ヨーロッパの皇族やハリウッドの有名俳優や

   世界的に著名な歌手など、

   極限られた方達しか招待されないんだよ。

   それが、単に友達だからと言う理由で

   招待なんて前代未聞だよ、全く」


となぜか怒り出すのである。玲達にファッション業界の事情なんて知る由もないが、どうやらロムリアブランドのファッションショーには、皇族や世界的な著名人などの極限られた者しか招待されない、何やら得体の知れないプレミア感が存在するようである。そんな激レアな招待状をポッと出の大学生風情が持つことに違和感を感じるのは、ファッション業界に精通する人達からするとある意味当然かもしれない。が、かすみの言うところの、このおっさんの発言には流石のかすみもカチンと来たようで、隣の玲に対し


  「ねえ、玲、招待状持ってるよね。

   見せてあげたら」


とつっけんどんに要求する始末。玲も隣でのかすみのやり取りを黙って見ていた手前、知らぬ存ぜぬもできないので、ハンガーに釣るしてある何時もの肩掛けカバンの中から、ロムリアの封筒に収められた招待状を取り出しかすみに渡した。


  「こちらが、タチアナさんからの招待状です。

   どうぞ、ご覧になってください」


と慇懃に言って、件のおっさんに招待状を渡した。それを見たおっさんは、驚きの余り唖然として目を見開くのであった。


  「ほ、ほ、本物だ。それと、ここに書かれている名前、

   レイ・モカミとカスミ・モノベは

   君らの名前なんだね?」


そうですよ、と胸を張って自慢げに話すかすみである。そして、ダメ押しとばかりに、タチアナが玲の下宿に訪ねて来た時にスマホで3人を写した自撮り写真を見せたのであった。


  「不快な思いをさせて大変申し訳ありません、

   物部さん。私は」


とかすみに対し直角になるくらいに頭を下げて謝罪して、一旦自分の座席に名刺を取りに戻って


  「ワールド・クローズという衣料品関係の

   総合商社の代表取締役をしております、

   若林成政(しげまさ)と申します」


とかすみに名刺を渡して名前を告げた。流石のかすみも、父親とほぼ同年代の社長が名刺を差し出すときは立ち上がって受け取りまたシートに座りなおすのであるが、その名刺を一目見たかすみは、あっ、ここにES出したんだよね、と過去の苦い記憶を呼び覚ました。そして、若林社長は、今回もパリには商談で向かうとのことであったが、ロムリアだけは扱いたくても全く伝手が無く、手探り状態なんだとか。そこで今回のパリ行きでも、通常の商談と並行してロムリアとの商談の伝手を探す目的もあったが、まさかこんなところに、とんでもないコネがあるとは、と驚きを隠せないのであった。そこで、かすみに幾らでも出すから紹介してほしいと頼むのであるが、流石にかすみも自分の一存では決められないので、またもや玲に託すことに。


  「すいません、タチアナさんとは

   隣の彼を通じて私も知り合ったんです。

   なので、私がどうこうとは出来ないんですよ。

   なので、彼を通じてお願いするしか

   ないとは思いますが」


おいおい、こっちにふるなよ、と心の中で叫び出す玲である。全く、かすみは何か色々と引き寄せてくるよな(かすみなら、ここで「ブラックホールかよ」という突っ込みが入るだろうが)と愚痴りたくなるが、一応かすみに助け船を出すことにした。


  「僕も彼女とは同郷人というか、

   それで親しくさせて頂いているだけですので、

   どこまでできるか正直分かりませんので、

   その点はご容赦ください」


と玲も慇懃に伝えた。それでも構わないのでお願いします、と再度頭を下げて若林は自分の座席に戻った。


 ところで、最初にかすみに声を掛けた、ではなくナンパしていたモデルのレニー隆也であるが、おっさんこと若林の勢いに圧倒されて最初は黙って成り行きを見守っていたが、心の中では、「この子達、もしかしたら金の卵だったりするのか。それなら、俺の将来の活躍にとっても、何とかして彼らと伝手を確保しておいた方がいいぞ」などと勝手に妄想しだし、結局かすみには、「また、あとでね、かすみ」と気安く名前を呼んで自分の席に戻った。


 さてフライト中のこんなプチカオスな状況も一段落して、機内食を堪能した玲とかすみは、その後雑談をしてから眠りに着いたのであった。

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