地球転生編 2-11 タチアナの回想1
タチアナの回想1
「へー、久しぶりの転移者のご来店かな?」
私は今、フランスのパリにある自宅のダイニングで、ダイニングテーブルに置いてあるノートパソコンの画面を少し興奮しながら見ている。そこには、私が立ち上げた異世界転移者のためのウェブサイト、サモンズパラダイス(通称サモパラ)の管理者用ページが映し出されており、そこに表示された新たな転移者からのメッセージを読んでいるだけなんだけど。ただ、表示されている内容は至ってシンプル、[登録希望]の表示の下に名前と出身国と連絡先のメールアドレスのみ。それ以外はない。本当にシンプル。ではなぜ、こんなシンプルな画面に興奮しているのか。それは、久し振りにこのサイトへ正しくアクセスできた人が現れたから。と言うのは、このサイト、サモンズパラダイス、通称サモパラ、は読める人が限定される特殊なサイト。何が特殊かというと、別に裏サイトとかダークウェブの怪しい代物ではなく、私の故郷であるサモナルドの言語で書かれているため。つまり、その言語が読めないと、先へは進めない。えっ、スマホの翻訳機能があれば問題ないって?じゃあ、やってみて。恐らく無理だから。と言うのは、ここに書かれている言語は地球上のどの言語とも異なるから。そう、私は、地球の人達からすると所謂宇宙人か異世界人ということになるんだよね。それで、新たに登録申請をしてきた人は、所謂宇宙人か異世界人ということ。これって、簡単かつ便利なフィルター何だよね。さて、申請者のアドレスは…
「うーん、このアドレスは日本かな?
ということは今回の転移者は
日本にいるということか。結構珍しいかな」
と独り言を呟きました。それくらい、ちょっとレアな状況です。なぜかって?それは、私達の見た目は、地球で言うところの西洋人と言うタイプ?なんだよね。勿論、転移した場所が日本だとかインドだとか、そういうことは多々あったりするけど、大抵はそこから他の国へ移住して、落ち着いてからこのサイトに行きつくみたいな状況がほとんどだったのよ。それはなぜかと言うと、言葉の壁があるため。正確には文法かな。サモナルド語は地球で言う所の私が日常で使っているフランス語や英語と似たような文法になるし、私からするとフランス語の発音も実はそんなに苦も無く習得できるの。逆に地球人がサモナルド語を話すにはかなり苦労するだろうけどね。それでね、大抵は言葉が理解しやすい国に移住するんだけど、でも今回の希望者は、日本人の名前っぽいのよね。レイ・モカミとかって。まぁ、その辺は何か事情があるだろうから特に詮索しないけど、それよりもこれ。出身国の項目。こんな国知らないんだけど。ケンタリア?うーん、分からん。アルファベット表記されているから、実は私もよく知る国名と言うことも有るけど、それでも似たような名前の国は知らないのよね。私の居たサモナルドでは、ロムリアが最も栄えた巨大都市国家。勿論、それ以外の国はあったけど、殆どの国のことは当時のロムリア人なら大抵知っていることだし。それでも、ケンタリアと言う国名には全く記憶がないのよね。とりあえず、連絡付きそうな何人かに聞いてみようっと。
それにしても、このサイト、意外と役に立っているよね。それもこれも、チーター様のお陰。彼(または彼女?)には直接会ったことは無いんだけど、彼(または彼女)が言うにはインターネットで検索エンジン関係のメンテナンスを行ってますと言ってたけど、多分ハッカーよね、恐らくは。でも、なんでそんなお方が私に連絡したのか?まあ確かに、私の職業、ファッションデザイナーと言う仕事が関係しているんだけどね。自分で言うのも何だけど、結構フランスのテレビや雑誌やネットの動画などで紹介されていたりするのよね。まあ、ファッションに関しては、そもそもロムリアに住んでいた頃からおしゃれには気を使う方だったし、たまの休みの日にはロムリアという巨大都市で服やアクセサリーのウィンドウショッピングを楽しんだりしてたけどね。だからかな、ごく自然にこの業界に進んだのは。勿論成功までにはかなりの時間はかかったけど、今はやって良かったと思ってる。あっ、それで、なぜチーターとか呼ばれるハッカーさんとの伝手が出来たのか?それは、本当に偶然と言うか、そんなところかな。要するに、チーターも私と同じ世界からの転移者であったこと。それで、私の場合、別に転移者だ、と宣言している訳ではないけど、どうやら私の特徴的な「目」を隠すことなく堂々と公表していたことが大きいみたい。私の目、それはサモナルド人特有の目、つまり虹彩が金色を帯びていることに加えて、更に召喚術師であればオッドアイになる傾向を持つけど、私はその特徴的な目、金色の右目とエメラルドグリーン左目、を隠すことなく人前に出たりメディアに露出していたの。勿論、普通の一般人からするとこのような特徴は容易に好き嫌いの対象になりやすいけど、偶々私の職業のおかげなのか、よく奇抜なファッションにメイクとかヘアスタイルをしたりするけど、その印象がこの特徴的な目をファッションの一部だろうと誤認させるていたんだろうな、と今では思うわけ。で、そうそう、そう言う経緯があって(あと推測だけど、恐らくチーターは私自身を知っていると思う)、チーターからコンタクトがありまして、で、私ももしかしたらチーターみたいな同朋が他にもこちらに来ているんじゃないかなと思って、それでチーターに手伝ってもらいながら、このサモパラを立ち上げたのよね。でもこれの立ち上げも結構大変で、とにかく、サモナルド語をキーボード経由で入力することは今もって不可能なわけ。ちなみに、チーターに聞いたけど、速攻無理ですと返事が来た始末。そうすると、結局は音声入力に頼るしかなく、チーターにサモナルド語で音声入力した言葉を何かしら記号化して検索にかけることが出来るようにしてもらうことで、漸くこのサモパラのホームページにアクセス可能になったんですね。大変でした。
さて、このサイトへの現在までの登録者数は43名になります。ただし、そのうちの10名程は不慮の事故で亡くなったか、はたまた偶然にも元の世界に帰還したかなどで連絡が途絶えております。まあ、それでも、何年か毎に数名程度の新規登録希望があったので、何かしら定期的な転移が発生しているのではないかと疑ったのですが、残念ながらそれを確認する手立てはない状態。もうお手上げです。そして、今回のレイ・モカミからの連絡は、本当に久し振りということになりました。正直、今度会うのが楽しみです。
そうそう、サモパラでは、不定期だけど、同郷者同士の集いを開催していまして、お互いの近況報告などを行っています。今回は久し振りの新規参加者出現ということで、張り切って日本のレイ・モカミさんの地元に集まることとなったんです。なんで態々日本の一地方都市の東洛市に集まれるのかというと、実はサイト登録者のほぼ全員が転移術を使えまして、勿論全員ではなく一部の人は私特性のアーティファクトを使いますが、それでもどこにでも転移することが可能なんです。と言うことで、どの国の地方都市であっても、それこそチベットのお寺とか、南極点でも、転移することで簡単に集まることは可能です。何て便利な能力でしょうね、この転移は。
あっ、でも、私もビックリしたわ、レイ君転移術が使えないんだって。嘘でしょう。あれだけの変態的に膨大な召喚エネルギーがあるのに、何で転移出来ないの、って思ったのよね(ちなみに、彼の膨大なエネルギー量に気づいたのは私だけみたいです)。でも、どうやら、彼の国では転移そのものが失われた技術、所謂ロストテクノロジーというものだったようで、だから誰も出来ないんです、と言ってたけど。何れにしても、もう少し彼の国のことについて真剣に調べる必要がありそうね。まさかとは思うけど、これってもしかして、こちらの世界の小説とか映画で偶に題材にされる平行世界とかパラレルワールドとか、そんな所からの転移者なんじゃないかと疑ったりしたんだよね。ダメだ、今考えても埒が明かないから、一旦他の事に集中しようっと。
そう言えば、食事しながら話していた時、レイ君のガールフレンド、その子が降霊召喚術師に目覚めたとか言ってたけど、地球人が召喚術師の能力を持つというのは、正直聞いたことは無いのよね。まぁ、レイ君も相当な能力を持つ召喚術師だし、その彼が言うんだから嘘とか間違いではないだろうけど、でも興味はあるな。そうだ、近いうちに新作の発表会と来年のコレクションの打ち合わせで東京に行くから、その時に二人と会ってみるのも良いかもね。うん、そうしよう。




