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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-9 最神玲、卒業研究に奔走する

最神玲、卒業研究に奔走する


夏休みも中盤に入った頃、最神玲は卒業論文で必要な資料を探したり、物部かすみの手伝いをしたりそれなりに忙しい日々を送っていた。ところで、かすみの手伝いとは何か? と思われるが、実は少々特殊な事情が絡んだ手伝いである。玲とかすみは同じゼミに所属しており、そのゼミは民間伝承を研究するという、かすみ曰く何の役に立つか分からないマイナーな世界、でもある。そんな中で、最神玲は5月の大型連休中に交通事故に遭い、一時は危篤状態にまで陥ったが、無事生還。そしてリハビリを経て夏休み前に復帰するも記憶喪失のため、勉学に支障を来す始末。そのため、ゼミを主宰する教授と玲とかすみの三者で相談して、かすみと玲の共同研究で進めてみてはとの提案を受け、それに従って今に至っている。とはいっても、十中八九どころか十中十、玲は役に立たず、やっぱりかすみにおんぶに抱っこ状態となるものと誰もが予想したのである。ところが、意外と玲はかすみの足を引っ張るどころか大活躍することになり、更には民間伝承に関する新事実を幾つも発見するに至るのである。そこには、玲ことカーンの持つ特殊能力である召喚術と民間伝承との相性の良さによるものと言うべきだろう。もう少し具体的に説明すると、玲とかすみは降霊召喚術が使えるが、例えばある伝承が伝わる地域のある寺に埋葬されている人物の墓で降霊召喚を行うと、稀に当人の魂を呼び出すことに成功する事があった。そして当人の魂に事の真相を語ってもらうと、実は伝えられている内容が伝言ゲームで不正確に伝わってしまったとか、伝わっている意味とは全く逆の意味を持っていた、などの新事実が「当事者」から語られるのである。つまり、どんなに優れた偉大なる研究者でも絶対に辿り着けない新事実がどんどん明らかになるのだが、そうなるとそれをどのように証明するかが大問題となる。だが、幸か不幸か、玲とかすみの研究目的は、その分野での研究を志す研究者になりたいのではなく、単に大学を卒業するのに必要な単位が欲しいだけなので、当事者が語られたことを、さも自分達の意見のように置き換えても、玲とかすみには大きな影響はないのである(ただし実際に学術誌に投稿するようになるとかなり問題ではあるが)。



 そして、8月下旬のある日の朝。この日は、かすみと夏休み中に現地調査を3カ所行う計画のうち、最後の3カ所目に関する打ち合わせをする日であった。ところで、この日のかすみは、見るからに笑顔が満開になる程の上機嫌さと今日も頑張るぞと言うワクワク感を両立させた状態で、玲の下宿にやって来た。まず、なぜかすみはこんなにも上機嫌なのかと言うと、昨日かすみの元に内定通知が届き、漸く就活が一段落したためである。今まで何十社とESを出しても書類選考で落とされていた日々が遂に終わったという安堵感とこれで将来も安泰かという安心感。これがこの日のかすみの上機嫌さに現れていた。ちなみに、かすみが内定をもらった会社は、その地方では優良企業として有名な主に半導体関係の装置を製造する社員数数百名程の中企業であり、父親の伝手で決まったいわゆる縁故採用である。ところで、物部かすみとはそもそも何者なのか? 実は彼女は、関西方面のある地方都市で不動産関係の会社を経営する一族の一人娘であり、お嬢様なのである。そんな上機嫌なお嬢様であるかすみは、もう一つのワクワク感を満たすために、今日も朝から玲の下宿にやってきた。では、何がかすみをそんなにワクワクさせるのか?それは、降霊召喚の訓練をすることである。実は、ほぼ毎日のように玲の下宿に遊びに来ては、卒論の準備で忙しくする玲を横目に日々降霊召喚の訓練に励んでいたのであった(ごく偶に卒論の手伝いもするが)。かすみも自宅で練習すればいいものを、万が一召喚エネルギーが暴走したり枯渇したら大変ということで、ほぼ毎日ここにきて訓練に明け暮れている。玲もこの光景にはもう慣れてしまい、自分は自分のすべきことに集中できるようになっていた。


 ただ残念ながら、今日の玲には何時もの余裕はない。今日中に3カ所目の現地調査のスケジュールを立てておきたいと散々かすみには伝えてあったのだが、部屋に入って早々にかすみは降霊召喚の練習をし出したため、ついにこの日、玲はかすみに文句を言うことに。ちなみに、カーンが転生した日から今日この時まで、玲はかすみに文句を言ったことは無かったのである。


  「かすみ、いい加減にして、

   こっちのことを手伝ってよ!」


玲は渾身の力を込めてかすみに抗議するのだが、暖簾に腕押しというか、馬の耳に念仏というか、かすみには全く堪えていない模様。挙句の果てに「そんなの、あとあと」と邪険にされる始末。あーっ、玲の気弱さが仇となったのである。結局、朝から夕方まで、時に休憩を挟みながら、かすみは召喚術の訓練をしていたのであるが、流石に召喚エネルギーが少なくなるに及び、やっと手を休めた。


  「よく、そんなに飽きずに続けられるね?」


と少し嫌味を込める玲。


  「えー、飽きるも何も、玲が用意したあれ、

   結構難しいし、慣れるのに大変なんよ」


かすみが言う「あれ」とは、降霊召喚術師見習が使う練習用の霊魂のこと。本物の魂を使うにはかなりのリスクがあるため、降霊召喚術師は本物ではないダミーの魂を使うんだ、と言う話を昔サリから聞いたのを思い出し、かすみが降霊召喚術師に目覚めて暫く経ったある日、これを使った召喚をかすみに教えたのであるが、それがかすみにど嵌りした次第。それ以来、ほぼ毎日、玲の下宿でこのダミーの魂の出し入れに勤しんでいるのである。ちなみに、ダミーとはいっても、簡単な自我があるので、降霊召喚した後のやり取りなども模擬できるなど、意外と優れた練習道具なのである。


 漸く、夕方になってかすみの手が空いたので、早速本題の現地調査に関する打ち合わせを進めることに。今回向かうところは、△△県の山間部で伝えられているある妖怪伝説に関する調査。前回、前々回と少し趣が変わり、今回は妖怪関係だという。いい大人が妖怪って思うだろうが、研究の主体はそこではなく、そもそも妖怪伝説が起きた切っ掛けが何かとか、どういう背景でそうなったのかとか、そんな非現実的な事象に対する合理的な解釈を行うのが目的だとか。かすみなら、子供の頃に見た小さい目玉の親父が出てくるアニメとか昔ばなしとかで見聞きしたりしてそこそこ妖怪には馴染みはあるようだが、カーンにとっては、幽霊にしろ妖怪にしろ全く馴染みのない概念。そのため、何をどうやって研究するんだという、そもそもそこから?という難題にぶち当たっているのである。そこで、多少なりとも事情を知りそうなかすみが本来主体的に動いて欲しいのだが、当の本人は別のことに夢中だった。


 さて、何とかかすみと打ち合わせをした結果、今度の週末に2泊3日程の予定で現地調査を行う、と言うことが急遽決まった。そして、ここで問題になるのが現地への移動手段となる。△△県までは鉄道での移動となり、最寄り駅から現地まではレンタカーでの移動となるが、ここでかすみ大明神が一肌脱ぐとのこと。かすみは、何れは親の不動産会社で働くことがあるので、外回り営業に必須の移動手段である車の扱いは出来るようになっている。つまり運転免許を持っているのである。ただし、俗にいうペーパードライバー。殆ど運転したことが無いため、実はかなり緊張しているのだが、玲の前でその緊張感を絶対に顔に出さないのがかすみ。なんとなく、玲に弱みを握られることが嫌なんだとか、変なところで意地を張るかすみである。と言うことで、何れにしても移動手段が確保できたので、後は宿泊施設の予約のみ。早速玲は自分のパソコンから検索を掛けて幾つか宿泊施設を見つけた(この検索作業は玲が何とか頑張ってやり切った)。ところが、どの宿泊施設も僅かにツインルームだけ空いており、シングルは全て満室、というかそもそもシングルの数が少な過ぎるのである。と言うのは、鉄道で向かう最寄り駅のその地域は有名な温泉街として知られており、街としてはホテルよりも旅館が圧倒的に多いため、部屋のバランスからしてシングルは圧倒的に少なくなる。しかも夏休みの最終盤とは言え、週末ともなると大概どこの宿泊施設も空室は少なくなる。と言うことで、かすみにツインしかないけどどうしようと相談する玲だが、当然速攻で却下! ではなく、いいんじゃない、との返事。へぇ、同室で宜しいでしょうか、かすみ様?玲の事信用しているから大丈夫、との返事ですが、何だろう、男としては何か複雑な心境の玲であった。でも、かすみのお父さんとお母さん、誓ってかすみに何かしようとは思いませんので、どうぞご安心ください。じゃあ、あとは、現地での行動予定を決めておいて、何とか準備は出来たかと少しホッとする玲であった。



 そして今、玲とかすみは、かすみが運転するレンタカーの中にいる。制限速度で運転するかすみは、後方から別の車に煽られそうになると、歩道側に寄せて停車し、後続車を先に行かせることに。こんなことを続けていたため、予定よりも1時間遅れて、何とか現地に到着。


  「あー、もう、運転するだけで疲れた。

   もうここから動きたくなーい。

   玲、何か移動に楽な乗り物だしてよー!」


となぜか半べそをかくかすみ。そんなのある訳ないし、あったとしても誰かが操縦するなり運転しないと意味が無いよと諭すのだが、


  「今の時代、自動運転機能くらい

   つけるのは当然よ!」


などと無茶な要求することに。まぁ、こういう時のかすみは暫く放置するのが一番、ということを学習済みの玲であった。


 さて、こんな状態のかすみの尻を叩いて何とか聞き込み調査に向かうことになって、近所の特に年配の方々にこの地方で語られている妖怪談について話を聞きに行ったり、地元の寺社を紹介してもらって、宮司や住職に話を聞いたりして、とりあえず順調に調査は進んだのである。ちなみに、玲ことカーンは3回の現地調査を通じて初めて寺や神社に参拝をすることになり、何か新鮮な気持ちを味わうのであるが、後日「あれが神聖とかいう感じなのかな」などと自身の初体験に思いを馳せたりした。また、これはカーンの召喚術師としての職業が強く影響することだが、神社の御神体に降霊召喚かけたらどうなるんだろうと、神仏を信仰する者からすると不敬とか不遜といったことを呑気に考えたりしていた。



 一通りインタビューをしたり写真を撮ったりして、そろそろ宿に戻ろうと駐車場に戻った時、ふと自分達の乗って来た車の陰から4人の若い男たちが現れた。とりあえず、「こんばんは」と声を掛けて車に乗ろうとした時、一人の男がかすみの腕を掴んだ


  「ちょっと、何するの。話してくれへん」


  「ねー、俺たちこれから遊びに行くんだけど、

   どう、一緒に来ない?」


  「はぁ? 何言ってんの。アホとちゃう」


おいおい、彼女威勢がいいね、とか何とか仲間内で煽ってたりする。とりあえず、玲はかすみの方に向かって、その男からかすみを開放しようと手を伸ばしたとき、玲はいきなり後ろに引っ張られ振り向き様に顔面を殴られてしまう。それを見て他の連中も玲の所にやってきて、殴る蹴るの暴行を繰り返す。ただ、玲も(うずくま)って顔と急所をガードしているのであるが、実はこの防御術はケンタリアの召喚術師養成学院時代にラーゲルの取り巻き連中から身を守るために身に着けた防御法であった。まさか、これがここでも役に立つとは、と後で玲はそう振り返るのであるが、この時はそんなことを考えている余裕は一切なく、ただ条件反射的に防御態勢に入っただけなのであった。


  「なぁ、彼女、こんな弱っちいのよりも、

   俺たちの方が断然いい思いさせてやるよ」


放せー、ボケーとかすみの怒鳴り声が響くが、この駐車場やその周囲には他に誰もおらず、いや、遠くから見てるだけで敢えて近寄らないようにしている雰囲気があった。くそ、世界が違っても、どうしてもこう言う糞みたいな連中は出てきやがる、とその理不尽さに怒りで震える玲ではなく、この場合カーンフェルトであった。ケンタリア時代のカーンは体力ゼロが自慢で、なるべく平和的な解決を希望する性格であったが、理不尽な暴力に対してまで平和解決を望む程、馬鹿でも愚かでもお人好しでもない。そして、この時のカーンは、鼻と口から血を流す程に殴られ蹴られた自分に対する暴力への怒りよりもかすみへ危害が加えられることに対し、何よりも怒りを覚えたのである。そして、遂に伝家の宝刀が抜かれた。


  「召喚!」


何の予兆もなくただ一言そう叫ぶと、そこには白猫のにくたまが現れた。しかも12体のにくたま軍団が召喚されたのであった。そして、それぞれのにくたまは既に状況を理解しており、3体ずつ4グループに分かれて、1グループ1人の悪漢に対処することとなった。まず、玲を執拗に足蹴にしている男の軸足の脹脛(ふくらはぎ)にガブッと一噛みした。脹脛を(かじ)られた男は一瞬何が起きたのか分からず、自分の足元に目線を映したとき、下から別のにくたまがジャンプして、男の顔に思いっきり爪を立てて引掻いて顔中血だらけ状態にする。突然の攻撃と激痛から男は反射的に白猫たちを振り払おうと暴れるが、3匹目のにくたまは、待ってましたとばかりに、痛みで(うずくま)ろうとしゃがみ込んだ男の股間にガブリと一噛み。この一撃で男は、ギャーと大声を発して後方にもんどり打った後、完全に失神することになった。残りの男たちも、ほぼ同時に同じような攻撃を受けて、最後は股間にガブリとされて、全員血だらけ、口から泡を吹いての失神状態となった。そして、男たちの周りでは、にくたま軍団がニャーニャーと勝利の雄叫びを上げていた。


 結局、玲とかすみを襲った4人の悪漢は、駐車場でピクリとも動けずそのまま失神。玲は何とか起き上がってかすみの元に向かうが、かすみがかなり精神的なショックを受けたのか体を小刻みに震わせていたので、車の中で落ち着かせることに。そして、玲は後のことを考えて、110番通報して警察に連絡をし、暫くかすみの手を握って落ち着かせつつ隣で玲も休んでいると、遠くでパトカーのサイレンが鳴るのを耳にした。やがて、駐車場に数台のパトカーが到着し、数人の警察官が倒れている連中の様子を確認しつつ、玲とかすみのいる車の所に来て事情聴取を行おうとするが、玲もかなりの負傷を負っているので、事情聴取は後回しとなり救急車の出動要請を行った。その間、警官たちは多くの猫たちの鳴き声を耳にするが、状況から見て襲った男たちは猫に引掻かれたり、噛まれたりして失神したのだろうと一応の結論は得た模様。だが、念のため、どこかに目撃者がいるはず、と言うことで近辺の聞き込みに回っていたとき、偶々動画を撮っていた中年男性がいたということで、玲たちの居る所に同行してもらって一緒にそれを確認することに。そんなの撮っている暇があるなら警察に連絡しろよ、と玲は半ば怒りを覚えるも、敢えて口にはせず黙って動画を確認。うん、召喚の瞬間は移っておらず、猫たちが不明瞭ながらも暴れている様子は確認できたので、警察もこれで納得するだろうと玲は安堵した。そして、にくたまの召喚を解除して、召喚に繋がる証拠を全て隠滅することにした。


 その後、少し遅れて救急車も到着して、一先ず玲とかすみは1台の救急車に同乗して病院に直行。病院にて玲は怪我の治療を受けるも骨折等はなく比較的軽傷で済んでいるので簡単な処置の後に解放された。一方のかすみは、特に外傷はないのでそのままホテルに直行しもらうことになったが、精神的なショックが尾を引いているので、玲も同行してかすみをホテルの部屋に連れて行くことにした。その後、玲だけは警察署で簡単な事情聴取を受けて、結局午後11時頃に開放されたのである。そう言えば、今日は昼から何も食べてないな、などと考える余裕が生まれたので、近くのコンビニに寄って、かすみの分も含めておにぎり4個とお茶2本を買ってホテルに向かうことに。部屋に入ったところで、部屋の電気が消えているので、玲はそのまま明かりを付けずベッドに向かう。


  「かすみ、大丈夫?」


と声を掛けると、暫くして暗闇の中から「うん」、と言う返事がかすみから返って来た。どうやら、ずっとベッドに横たわりながらも起きていたようだ。大変な目に遭ったから、そうそう寝れるものではないのかな、と思案するも、どうやらそれだけではなさそうなかすみであった。眠れないの?と聞くと、そうではないとの返答。どうやら、何か考え事をしていた感じだが、玲にはそれを知る由もない。そうだ、僕はお腹空いたんでこれ食べるけど、かすみもどう?と勧めるが、遠慮しておくということで、玲は買ってきたおにぎりを食べて腹ごしらえをした。流石に顔やお腹の筋肉を動かすと、殴られた後遺症か、少し痛むものの、それ以上に空腹には勝てないので、結局おにぎりを2個完食。それから、玲は傷口に触れないようにシャワーを浴びて少しリラックスしたところで、今日の成果をまとめる作業をすることに。こんな大事件の後に、常人ならアドレナリンが出過ぎて変な興奮状態に陥ってしまい、何も手を付けられない状態になるものである。ところが、こういう時でも転生前のカーンの習性というか、養成学院で習う緊急事態に対する対処法の教練が影響しているのか、どんな緊急事態が発生しても平常心を保つように心がける習慣が出来ていた。そのため、こんな状況でも、成果のまとめはその日のうちに終えておくことにしているのであった。そして、午前1時を回って漸く終わって大きく伸びをした時に、もう既に寝たと思っていたかすみが突然声を掛けてきた。


  「ねえ、玲、私ね、あの時あなたが

   咄嗟ににくちゃんを召喚したじゃない。

   あれを見て、どうして自分は何もできないのか、

   と実はかなりショックを受けたのよね。

   結構自分も召喚力あるじゃん、

   と自画自賛してたんだけど、

   いざ自分がピンチの時に何もできなかった。

   ・・・あれじゃあ、召喚術師失格だよね」


と涙ぐみながら話すかすみ。どう声を掛けていいのか迷う玲ではあったが、必要なのは自分の声をかすみに伝えること。そう思って


  「それは違うよ。

   召喚術師に合格だとか失格はないよ。

   僕は偶々ああいう場面に慣れていたから、

   直ぐに動けただけ。

   要するに経験があるからに過ぎない。

   ただそれだけなんだ」


と言って、自分が過去にどんなことをされてきたかを話すことに。かすみは、大変だったねとか、かわいそうとか同情してくれたけど、そんな時に助けてくれる友達が居たんだということを玲はかすみに伝えた。そう、結局自分は助けてくれる仲間に恵まれたんだということ。そしてかすみには自分がそうありたいということを伝えたのである。


  「その助けてくれた人はどんな人なの?」


  「その人は僕と同い年の女性。

   凄く明るく陽気な人で、

   皆の人気者だったんだ。

   僕も彼女の助けがあったから、

   辛いと思う学院生活を

   続けることが出来たんだけどね」


  「そうなんだ、その人あなたの事を

   とっても大事に思っているんじゃないかな。

   そうじゃないと、

   そこまでしないと思うんだよね」


何とも思いがけない言葉がかすみの口から漏れ出た。でも、サリの性格からすると何となくそんな感じを受けてしまう。


  「ねぇ、私強くなれるかな。

   強くなって、あなたを守る存在になれるかな?」


  「守る守られるではなく、何て言うか、うーん

   ・・・そうだ、ほら、何かのドラマだったっけ、

   よく仲間同士背中を預けるとかと

   言ってるじゃない。

   そんな感じの、お互いに背中を預けられるような

   関係になればいいんじゃないかな。

   それだったら、お互いに信頼してないと

   絶対に成り立たないし、

   今の僕らの関係にはぴったりだと思うけど、

   どうかな」


  「・・・うん、そうだね。その通りかも。

   私、あなたに背中を預けてもらえるようになりたい。

   だから、明日から、もっと気合を入れて

   召喚術の訓練をするので、ご指導お願いします!」


と薄暗い中でベッドの上で深々と頭を下げるかすみであった。その後、何か吹っ切れたのか清々しい気分を纏ってそのまま寝付くかすみであった。何とか元気を取り戻してくれたようで、安心です。お休み、かすみ。


 今回の現地調査は、思いがけないトラブルの影響で、1日早く切り上げることになった。しかし、何とか目的は達成できたので、また次の計画を立てるために帰路につくことにした玲たちであった。

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