地球転生編 2-8 物部かすみ、召喚術師になる
物部かすみ、召喚術師になる
「まず、僕が事故に遭う前の
記憶が無いのは本当のこと。
ただし、記憶を失っているのではなく、
そもそも最神玲の記憶を僕は知らないんだ。
つまり、僕は彼とは別の人間ということ」
ここは、玲の下宿の居間。そこで玲と向かい会って座っている私。そして、彼から衝撃の告白が。と言っても結婚してくださいとか、僕と別れてくれとかの方がまだましに思えてくる位の衝撃が。まさかとは思って揶揄い半分で尋ねたけど、本人の口から衝撃的な事実が語られると、私は目と口が全開する始末。
「そして、僕の本当の名前はカーンフェルト。
で、この地球とは異なる惑星から来た人間、
というか、君らの言葉では宇宙人かな」
何か、途方もない話になったことでパニックを起こしかけてます、私。でも何とか気力を保って話の続きを聞くことにしないと。
「僕の生まれた惑星はサモナルドという所で、
そこでは召喚術というものがあるんだ。
そして僕はその召喚術を操る召喚術師を
仕事にしている。
そうだね、言うよりも見た方が早いかな」
そういって、いきなり居間のテーブルの上に小さな2つの重なった円が出て来て、何やら呪文らしきものが浮かび上がったと思ったら、その中に白猫が出てきたときには、あれ、私ってどこかで眠りこけて夢でも見てるんかな、と現実逃避する始末になっておりました。でも、何か無意識に猫に触れた時、その感触が余りにもリアルだったんで、それで何とか現実に戻ることができました。
「これで分かってもらえたと思うけど。
あっ、ちなみに、あそこにあった召喚門は
僕が作ったものではないんで、
そこは念のために言っておくけど」
そして、自分がサモナルドで行っていた実験中の事故で死亡して、こちらの世界に転生してきたことを玲は淡々と話すんだけど、私はと言うと白猫を撫でながら黙って聞くしかなく、どう反応していいのか分かりません。そう辛かったんだねとか、大変だったんだねとか、言うのは簡単だけど、それって何か他人事、自分には関係ない話に対する感想でしかなくて、それは今の玲にかける言葉ではないと思ったんだ。だから、玲が話し終わるまで、黙って聞くことにしておりました(正直な話、色々と突っ込みたかったんだけどね)。
「そっか、そういうことがあったんだね。
玲、いやカーンさん、
正直に話してくれて有難うございます」
私は心の底から彼の正直さに感謝しました。
「あ、いいよ、玲で。もう慣れて来たしね」
と言って少し緊張を和らげようとする気持ち、以前の玲にもあったんだよね、と少し昔を思い出し、涙ぐみそうになりました。でもそれ以上に、話の内容が内容だけに、まだ頭の中の整理がつかない状況でもあります。そして、どうしても聞いておきたいことを口に出すことに。
「ところで、玲、この先どうするの?
やはり、元の世界に戻りたい?」
それは分からないんだって。そもそも死んだ人間が元の世界に戻れるのか、もし可能だとして戻る方法があるのか、カーンさんには全く想像が及ばないそうです。一点を見つめたまま何か苦しそうにそう答えるのが精一杯なようで、何か気の毒な事聞いちゃったかな。
「ねえ、すぐ戻るのでなければ、
さっきの技、私にも教えてくれる?
何か、すっごい便利そうじゃない!」
何とかこの重い空気を払拭しようと、ちょっと明るくそんなことを聞いちゃいました。おかげで、玲も何か安堵したようで、少し落ち着きを取り戻したようです。でも、玲が言うには、何か、召喚の書?みたいなものが必要なんだって。それって、アニメとかで出てくる魔導書とか魔術書みたいなものかな? とりあえず、それが無いと話にならないと笑われたので、ちょっとムキになってやってやることにしました。かすみ様を舐めるなよ、玲。
「わー、おーー、何か出て来た。
これがそうなの?」
私の目の前に、玲が先程見せてくれた召喚の書と同じものが現れました。これって、私、以外と素質あるんじゃね?などと心中で自画自賛していると、玲の口からも、「へー、かすみ、召喚術師としての素質があるんだね」だって。何やその「へー」は。
「召喚の書が出せるのであれば、
素質は十分あるよ。おめでとう。
では次に、一番簡単な召喚をしようか」
と言うことで、いきなり召喚の本番です。すいません、私まだ心の準備が。と言おうとしたところで、玲が召喚術に関する簡単な説明をしてくれました。彼が言うには、召喚術には、契約、創成、降霊の3種類があること、召喚方法は、召喚門の作成(アニュラス型とペンタグラム型の門を作るらしい)→召喚の宣言(契約か創成か降霊かを宣言するらしい)→召喚呪文の記述(召喚する対象を明示するらしい)→召喚、というプロセスからなること、契約召喚は契約対象が必要なのに対し創成召喚は自分で作り出すことが出来ること、降霊召喚は霊を霊界から呼び出したり霊界に送り返す特殊な召喚であることを説明してくれた。不思議なことに、私、何とかついて行けたわ。で、早速、本格的な召喚と言うことで、私だったら、私を守ってくれる騎士とか、あるいは魔法使いの映画に出てくる梟とか、あ、あのアニメに出てたモビルスーツ何かもかっこいいよね、そんなのを召喚したいな、と希望を言ったのですが、思いっきりジト目で見られました。何でも、まず最初は、彼の世界にある召喚術師養成学院の初等科の子供たちが最初に覚える召喚術をするんだって。何を召喚するのと聞くと、それは石の召喚だって。はあ?なんで石?それとも特別な石? 彼が言うには、なぜ石なのかと言うと、それはどこにでもあり、子供にでも簡単に思い浮かべられるからだそうです。それと、真面目な顔してかなり重要な指摘がありました。それは召喚エネルギーと言うもの。要するに魔法の世界で出てくるマナみたいな物のようです。そのエネルギーが無いと召喚出来ないし、騎士とかを召喚するにはそれなりのエネルギーが必要だそうで、現状の私のエネルギーでは、見た感じ無理と即答されました。えー、私って、そんなに非力なん? と言うことで、取りあえず気を取り直して、
「では、先ずは召喚門を作成してみようか。
一番簡単なアニュラス型がいいかな」
と言って、見本を見せてくれました。要するに指で二つ円を描くだけ。簡単。でも、すごーく気になることが。
「玲先生、これ指で書くんですか?
何か魔導士とかが持つ杖とか
そういうものは無いんですか?」
ありません、と即答。ただし、補助的に使う道具はあるそうですが、今の私には扱えないからこれもダメでした。あー、どうせなら、ハリー何とかみたいに杖を振ってカッコよく召喚したかったな。うう、何か少しだけモチベーションが下がった気が。とりあえず、気を取り直して、二つの円を描いてみました。すると私の目の前にそれが現れたのです。あー、これは感動的。
「次に召喚タイプを宣言するね。
まずは石なので、創成召喚になるけど、
自分で召喚門の中に記述するか、
僕が言う通りの発音で記述するか、
どっちがいい?」
まだ書く方が楽そうなので、そっちで。じゃあ、と言って玲がお手本を見せてくれたので、それを真似て指で書いてみました。うん、全く同じ!
「あれ?」
ん、どうしたんだい、玲? 何か間違ってた?
「あー、そうか、そういうことか!」
えっ、何突然大声出して、ビックリするじゃないの。何か問題でもあったの、と聞いたところ、驚きの回答が。
「ごめん、かすみ。君は召喚無理だわ」
えーっ、何をいまさらそんなこと言うの。散々期待させて、持ち上げて持ち上げて、最後は思いっきり落下、みたいな悲惨な状況です。今まで妄想で積み重ねて来た私の希望を返せ!
「いやいや、そうじゃなく、
ごめん、言葉が足らなかった。
かすみは、創成召喚や契約召喚と言う、
物を召喚することは出来ないんだ。
その代わり、降霊召喚なら多分いけるはず」
降霊召喚って、要するに霊界とコンタクトを取って霊を呼び出すやつだったっけ? てか、要するに霊媒師ってこと? うーん、とりあえず期待値が半分ほど回復したけど、すっごい損した気分なのは何だろう。
「降霊召喚術師って、実は僕の居た世界でも
人数は凄く少ないんだ。
実際、僕の居た国では、
国全体で召喚術師が約5千人。
そのうち降霊召喚術師は100人いるかいないか、
それくらいレアな存在なんだよ」
ほー、と言うことは、もし私が降霊召喚術師なら、かなりのレアキャラなんですね。これもありかも。また少し期待値が上昇。うふふふ。
「一応、降霊召喚術師について
簡単に説明すると、...」
と言って玲が説明し出したのが、降霊召喚術師は霊界から霊魂を呼び出すのが 主な仕事なんだって。例えば亡くなった身内と話をしたいとか、犯罪捜査で犯人を特定するとか、過去の偉人と対話するとか、そういうことをするのが殆どらしい。何か地味な仕事だなと思ったが、実は降霊召喚術師しかできない唯一最大の特技があって、それは死んだ人を蘇生させることだって。それって凄くない!と期待しました。でも、玲は創成に関してはエキスパートだけど、降霊召喚は全くできないと言うし、逆に降霊召喚術師も、契約や創成召喚は出来ないんだって。なぜ両立できないのかについては、今もって謎のままらしい。うーん、何かモヤモヤするな。
ところで、玲からこの話を聞いたとき、真っ先に「人助け」と言う言葉が浮かびました。確かに創成召喚も人の役に立つ物を召喚できるけど、それ以外に人を害する物も召喚できたりする。でも降霊召喚は、困っている人を助けるというのがメインな印象を受けて、あー、これは私向きだな、と直感しました(よく困り果てている玲を助けたりしていたもんね)。ちなみに、降霊召喚で霊体を召喚した時、その霊体で憎い相手を呪ったり攻撃したりできないのか、と聞いたんですね。すると、仮に召喚術師が攻撃を命じても、実行するかどうかは霊体と対象との関係次第とのこと。従って、仮に霊体と対象との関係が良好で、こちらから強制的に攻撃命令をした場合、霊体は召喚術師を攻撃することも有るそうです。ただしこれはかなり稀な事象だとか。色々と考えさせられますが、そう言えば、また大事な質問が浮かんできました。
「ねぇ、玲、あんた降霊召喚は
出来ないんだよね。
そうすると、私は結局
何も覚えられないということなの?」
折角召喚術師として目覚めたのに、何もできないとなると、また期待値がどん底になります。もう、勘弁して。
「あー、それは大丈夫。
僕は降霊召喚は出来ないけど、
召喚術そのものは分かっているから、
教えることは可能だよ」
あー、それを聞いて一安心。期待値復活!
その後、降霊召喚門の作成と霊体の召喚を行うにあたり、さて誰の魂を召喚しようかと考えました。と言うか、私にとって召喚対象は一人だけ。そう、最神玲本人。でも、流石に体だけ本人の目の前で魂を呼び出すのは気が引けたので、このことは自分の心の中に仕舞っております。でもそうすると、誰を召喚しようか思い浮かびません。私の身内は、幸いにも、皆元気だしね。と言うことで、今のところ召喚したい霊魂はないです、と玲に伝えたところ、
「とりあえず、霊界を見るだけにしておく?」
と言われました。どうやら、霊魂の召喚だけでなく、霊界を直接覗き見ることもできるそうです。これなら試しにはいいかも、ということでやり方を聞くことにしました。でも残念ながら今の私には出来ないようで、霊界を見るには私が霊界に迷い込んだ時に使われた特殊な召喚門、玲が言うには降霊転移門、あれを使わないとダメなんだとか。でも気になるので見せて欲しいとお願いすると、
「へー、これが霊界?
って、この間見たやつそのまんま。
もう少し何か欲しかったな」
もしかしてお花畑や三途の川でも期待したの、などとニコニコしながら玲に揶揄われる始末。くっ、不覚。でも、とりあえず、降霊召喚門のやり方は教えてもらったので、今日はこれまでにしました。あっ、ちなみに、次使うときはショートカットキーみたいなものがあって、それで簡単に呼び出せちゃうんですよね。これは便利。ただ、使い過ぎると召喚エネルギーが不足してしまい、最悪死に至るとのことなので、使い過ぎには注意がって、何かのCMみたい。はぁ、疲れた。とりあえずこの後はサークルの打ち上げがあるので、玲と二人で出かけました。




