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召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?  作者: 島ノ松月
地球転生編第二部

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地球転生編 2-4 最神玲、霊界を探索する

最神玲、霊界を探索する


カーンフェルトは、この日、彼の居た時代の降霊召喚術師の誰も経験したことのない霊界に足を踏み入れるという快挙を成し遂げたのであった。そして、その名はサモナルドの召喚術の歴史に刻まれてもおかしくない偉業なのであるが、残念ながら、全てサモナルドに戻れればの話である。さて、誰がどのような目的で設置したか不明な召喚門。そこを通り抜けて足を踏み入れたカーンの最初の印象はと言うと、濃い霧に覆われた音のない世界、これに尽きる。そう、自分の周りに何があるのか全く見えない(精々1,2m先までがやっと見える程度)。それどころか、周りの音が全く聞き取れない世界。サモナルドで体験する、まるで深い雪で地面が覆われて周囲が異常なほどに静まり返った時のような、あの耳が詰まったような感覚。そんな中を闇雲に進むのは余りにも無謀な行為であるが、もはやカーンにはそんな冷静な判断が出来る程の余裕は失われていた。まさにパニック状態。「かすみ! かすみ!」と物部かすみの名を呼び続けるも、決してその声は彼女に届くことが無いことは頭の中では分かっているが、冷静さを欠いた彼の口からはその言葉が延々と吐き出される。



 一体どれ位の時間が過ぎたのか全く見当がつかない中、感覚的には1時間以上歩き続けているように感じるカーン。実は霊界では時間の概念が存在しないため、1時間も1年も意味はないのだが。しかし今のカーンには、そんなこと知る由もない。


  「ん? 誰?かすみ?」


とまた声に出すカーンだが、今度はその声に答える別の声が聞こえて来た。


  「お待ちしておりました、

   カーンフェルト様」


  「えっ、えっ、だ、誰ですか?」


不意に自分の名前を呼ばれたことで、少し動揺するカーン。その声は耳に届いている訳ではなく、どうやら頭の中に直接語り掛けられている模様。それでも、何となく声のした方向を振り返ると、そこには一人の僧侶が。


  「私は円空(えんくう)と申します。

   以後お見知りおきを」


と自己紹介する円空。外見は、頭をしっかりと剃髪した日本のどこにでも居そうなお寺のお坊さん。ただし、僧侶が纏う袈裟は、色あせてどこか古びた印象を持つ。それに、手には数珠らしきものが見当たらない。


  「円空さんですか。改めて、最神玲でもあり、

   今はカーンフェルトか、です」


改めて円空に挨拶するカーン。でも、霊界に自分以外の人を見かけるとは。ただ


  「円空さんはここの住人ですか?」


はい、と返事があったので、やはり霊界人=死人ということか。いや、そんなことよりも、大事なことが!


  「すいません、ここに僕以外の人間、

   というか生者の女性がいると思うんですが。

   どこにいるか分かりますか?」


ええ、物部かすみさんですね、と即答され、驚くと同時にやはりここにいたのかと安堵するカーン。


  「ご案内しますので、

   私に付いてきてください」


と言うことで、円空の案内で物部かすみのいるところに向かうカーン。途中、どうしても興味があるので質問することに。


  「ここは霊界ですよね? もしそうなら、

   ここは死者の魂だけがくるところ。

   本来なら僕自身も来ることは出来ませんが、

   なぜか来てしまっています。

   円空さんも死者と言うことみたいですが、

   なぜそのような形でおられるのでしょうか?」


話せば長くなるので、もしまたお会いすることがあればその時にでも、とやんわりと断れるものの、こちらを見る彼の眼は、何やら不穏と言うか妖しい気配が漂う。こんな世界にいること自体ただ事ではないのは承知しているので、それ以上聞くこともなく、ただ円空の後をついて歩くことにする。暫く進むと、円空が足を止めてこちらを振り向き


  「あちらに、お探しの方が倒れております」


と言って、円空が僕を先に通すために脇に逸れた時、少し先で倒れている人影を見つける。オレンジ色のパーカーにデニムのパンツという出発時に身に着けていたそのままの恰好の物部かすみを発見。急いで彼女を抱き起すも、何の反応も見られない。


  「ここには時間の概念はありませんが、

   それでも長い時間生者がここに留まると

   徐々に生気が吸い取られていき、

   終いには本当の死を迎えることになります。

   なので、急ぎ元の世界に戻られることを

   お勧めします」


と円空に言われるも、どうやって戻るんだ? 戻り方が分からなければ、ここで蘇生させることを優先すべきじゃないか、と逡巡している間にも、かすみの体内から生気が逃げていく気配を感じたことで、円空の言う通り元の世界への帰還を優先することに決めた。そこで円空に、ここに来た時に使った召喚門の場所まで連れて行ってもらえないか聞いたが、彼の返答は否。理由は、その召喚門はそもそもここには存在しないからということ。つまり、あの門は一方通行ということになる。じゃあ、自分はどうやって元の世界に戻ればいいんだ? とにかく一刻も早く元の世界に戻ってかすみを蘇生させなければと焦るが、方法は何も思いつかな…くはなかった! そう、こちらに来るときに使ったあの特殊な召喚門。あれを再現すれば戻れる可能性はあるかもしれないと思い至る。勿論これは一か八かの賭けであり、当たれば無事生還、外れれば二人とも死後の世界を彷徨うと、まさに生死を掛けた究極のギャンブル。ただ、一つ問題がある。それは、召喚門をどこで設置しても問題ないのかどうか? これは流石のカーンでも分からない。そこで、再び円空にこの点を尋ねたが、やはりどこでもいい訳ではないとの返答。理由は、霊界には時間の概念だけでなく、空間が捻じれているとのことで、門を開いた先がどの惑星のいつの時代のどこになるのかは予測できないとのこと。ただ、円空はここに長く留まっていることで、どの場所がどこに繋がっているかを把握できていると教えてくれた。えっ、そうすると、自分の居た元の世界であるサモナルドにも行けるのか?と少しの期待感を持って尋ねたが、それはダメなよう。理由は死を迎えた場所に魂以外で戻ることは出来ないとのこと。今回はそんなことよりも、かすみを元の世界に戻すこと、これが最優先。と言うことで、円空に召喚門を設置する場所を案内してもらい、そこに向かうことになった。どうも来た方向とは違うように感じるが何も見えないので確認できないが、暫くして円空が「ここです」と指をさして教えてくれた。そこで、その場所に先程見た召喚門をそのまま展開すると、問題なく召喚門が展開された。なお、一般の召喚術師の場合、初見の召喚門や術式をそのまま再現することはなかなか出来ないが、カーンの場合、初見であってもそのまま自分の召喚の書に術式を記述してショートカットまで作成するという、変態的な特殊能力があるため、今回はこの能力が遺憾なく発揮されることとなった。それでも、この門の先が元の世界に本当に繋がっているかどうかの不安は払拭できないが、ここは円空を信じるのみ。



  「円空さん、お世話になりました。

   有難うございました。もし無事戻れたら、

   何かお礼をしたいのですが」


  「カーンフェルト様、

   そのようなお気遣いは不要です。

   仮に何か物を頂いてもこの世界では

   使い道がありませんが…

   では、大変申し訳ありませんが、

   一つだけお願いしたいものが」


と言われたもの、それはカーンの寿命。と言っても全部とか半分とかではなく、1年分の寿命を頂戴したいということ。もし自分があと2年の命だとしたらその半分になるが、少なくとも最神玲もカーンも20代前半なので1年分削られても問題ないと軽く考えてしまう。まぁ、自分の寿命がちょこっとだけ短くなるだけでかすみが助かるのであれば、それは安い買い物と同じだろうと判断し、結局円空の申し出に承諾したのである。


  「・・・・・・」


と何やら呟きながら玲の頭上に手を翳す円空。多分寿命が吸い取られているのかな、と想像するも、特に痛くも痒くもなく、何も感じずに無事終了。そして、円空に改めてお礼を言って、かすみを両腕で抱っこして召喚門を潜った。



 先程まで居た世界とは対照的な感覚が最神玲を襲う。視覚と聴覚が一気に活動を再開したことで、脳に入る情報を処理しきれなくなりオーバーフローを起こして一瞬意識を失うも、何とか踏みとどまって抱き抱えたかすみを落とさずに済ませた。そうだ、かすみ、生きているか? 彼女を下草の上に寝かせて呼吸と心音を調べるが......心音が聞こえない!? 嘘だ、くそ、もたもたしていたからか、と悔やむも、そんなことより蘇生措置。確か何かで見たが、心臓マッサージと人工呼吸による蘇生法、あれをする必要があると思い至り、早速かすみの心臓をマッサージする。一瞬女性の胸に触れると思い躊躇(ちゅうちょ)したが、ごめんと心中で詫びて、心臓マッサージを始める。次に鼻をつまんで顎を上に向けて気道を確保してから人工呼吸。これを交互に繰り返して、何分経っただろうか。微かだがかすみの右手が動く気配を感じた。とその時、少し離れたところで玲とかすみを呼ぶ声が聞こえたので、自分も負けじと大声で「ここだ、誰か来てくれ!」と叫んで助けを呼んだ。その声が聞こえたのか、心霊サークルの仲間が駆けつけてくれた。そこで急ぎ救急車の手配を頼んだが、残念ながらこの地域は携帯電話の通話圏外と言うことで、繋がるところへ車で至急移動してもらい、救急車の手配を頼むことに。その間、玲は只管かすみの蘇生措置を続行。流石に慣れない手付きで必死に蘇生措置を行っていたためか、額には汗が滲み出て、腕はもうこれ以上マッサージを続けれないくらいに重く感じられたが、今止めると取り返しのつかないことになるかもという恐怖心と不安感から、ただ只管続ける。「うっ」という呻き声がかすみの口から洩れた時には、漸く安堵の表情を浮かべることが出来た玲であった。あー、これで助かったのかな。


 その後、救急車が到着して、かすみを地元の病院に搬送してもらい、付き添いとして玲が病院に残ることとなった。凄く長い一日が漸く終わりを迎える。なお、玲が後日改めてその場所に向かうと、件の降霊転移門はなぜか消滅していた。



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