地球転生編 2-3 最神玲、霊界に行く
最神玲、霊界に行く
心霊サークルの夏合宿2日目は、最神玲の霊能力が発揮され、結果として少女の失踪事件を解決、と言うサークルとしても名を売る程の大事件があって、夕方に行ったミーティングでなぜか玲を除く全部員のテンションは又もアゲアゲ状態。特に、テンションが高いのが、玲と行動を共にしていたかすみ。彼女曰く、
「ねえねえ、何かさ、玲って、
小説だったかアニメだったかにあった、
赤い目の心霊探偵みたいじゃない。
そう思わない?」
と大興奮。確かに、特に何か探したりでもなく、ピンポイントで遺体の場所を見つけてしまったのでは、確かにそんな風に思われても仕方ないかと、少し照れ気味の玲。尤も、それを言うなら、お手柄なのは相棒である白猫のにくたまではあるが。ちなみに、他のメンバーによる各心霊スポットの探査報告もあったが、特にこれと言った怪異に出会うことはなかった模様。これは良かったと言うべきなんだけど、彼らからすると動画の撮れ高がダメなんだとか。そこで、明日はいよいよ本命の登場です、と部長が宣言するが、玲には何が本命なのか今ひとつピンとこない様子。でも、かすみも明日の心霊スポットには並々ならぬ期待感を抱いているようで、「明日は何か起きて欲しいな」などと物騒なことをいう始末。何が起きても本当に知りませんよ、と叫びたくなる玲であったが、まさかこれが現実になるとは、この時の彼らの誰も予想していなかったのである。
3日目の朝を迎え、各自持ち物をチェックし、それぞれの車に乗車して出発。今回は山奥にある廃村の探索ということで、みな一緒の行動となった。この廃村は、数十年前までは普通に人が住んでいたようであるが、その後過疎化が進んで少しずつ住む人が減っていき、やがて無人となったとのこと。一見、これと言った怪異があるようには思えないが、ネットでこの場所を検索すると、沢山の怪異があるとの報告を散見することに。と言うことで、心霊サークルとしてはこの廃村が今回の目玉として扱われるに至ったのである。現地に到着して見渡すと、廃村と言っても山奥なので精々数件程度かと見積もっていたが、確かにネットにあるように、今も住めそうな家から完全に潰れてしまった家まで、およそ十数件の廃屋が広い範囲に点在している様子が窺える。と言うことで、ここから1グループ3人ずつの4グループに分けて探索することになった。当然、最神玲は物部かすみと一緒となり、あとは1年生の佐伯えりという女性。別行動開始から5分ほどすると、佐伯えりが
「先輩、私怖いんで、
くっついていて良いですか?」
と玲の左腕にしがみついてきた。それを見たかすみは、すかさず
「ちょっと、佐伯、玲から離れなさいよ!
こんなところでしがみ付くと、
お互い危ないでしょう!」
と佐伯えりを牽制して、玲から引き離そうとする。これでは、探索できないんですが、と一応両者に言葉を向けるが、両者とも聞く耳を持たず、何やら言い合いが始まった模様。後で聞いた話では、最神玲が交通事故に遭う前の4月に新歓コンパという新入部員歓迎会があったようで、そこで玲に一目惚れして言い寄って来たのが佐伯えり。玲も満更ではない雰囲気だったため、かすみが間に割って入って一悶着あったとか何とか。そんな因縁の二人に囲まれながら、何とか自由になった玲とその他二名は廃村の奥の方に進むのである。
次の廃屋に向かう途中の森の中。玲の隣には、この場には相応しくない話題を提供し続ける佐伯えりだけ。
「ん、あれ、かすみは?」
「えー、物部先輩なら、その辺に。
あれ? 居ませんね。と言うことは、
今は玲先輩と二人っきり。
これはラッキーですね」
この場に相応しくない発言で一人盛り上がる佐伯えり。まあ、かすみの事だから、何か忘れ物があって車に戻ったとか(それなら、一言声かけるよな、あいつなら)、あるいは急にトイレに行きたくなったとか(それなら、声かけるの恥ずかしがるよな、あいつなら)、などと心に浮かぶもなぜか不安感を払拭できない玲。とりあえず、かすみ不在のまま、スマホで動画を撮りつつ幾つか廃屋を探索し終えて、他の皆と合流すべく車を停めた場所に戻ることに。ところが、いざ合流するも、そこにはかすみの姿が見られず。他の部員にかすみの事を聞いても、誰も知らないようで。流石にこの時には、玲を始め他の部員も何かやばいのではないかと言う焦りが少しずつ出て来て、とりあえず、近くを捜索することになった。時間はまだ午後3時を少し回った程度だが、太陽は山影に隠れてしまい、殆ど日差しが無い状況のため、この薄暗さと場の雰囲気からくる恐怖心が少しずつ各自を蝕み始めるようになってしまい、誰も積極的に動こうとはしない有様に。結局、玲は単身で自分たちが受け持った廃屋付近を捜索することになったのである。そして、かすみの捜索中に、玲は思いもかけない物と遭遇することに。
「これって・・・召喚門だよな?」
誰かに問いかける訳ではなく、自然と口に出てしまった言葉。そう、玲の目の前にはサモナルドで見飽きる程に見て来た馴染みのある光景が出現している。そう、召喚門。ただし、玲ことカーン自身見たこともない形の召喚門が彼の目の前に現れている。
「何だろうこの形。初めて見るタイプだ」
カーンが使う召喚門は、主に同心円状のアニュラス型と地球では五芒星とも呼ばれるペンタグラム型であり、この両タイプで降霊召喚を含む全ての召喚が実現されている。そのため、召喚門自体を研究することはカーンの居た時代は全くされておらず、する必要のないことと認識されていた。むしろ、研究の主体は召喚門に刻む召喚タイプの文言や召喚対象の宣言文などであるため、目の前の状況は、カーンの召喚術に対する考えを根底から覆すほどのインパクトを放ったのである。
「形は樽型か。え、こんなところに
召喚タイプが記述されているのか?
ほー」
などと感心している玲。この召喚門、天辺と底辺は直線、両サイドが膨らんだ樽形状をしており、樽の各頂点から対角方向に直線が伸びて内部でクロスすることで、樽型を4分割して、分割された各ブロックの中に召喚タイプが記述できるようになっている。そして、この召喚門は、
「降霊召喚門か?」
確かに降霊召喚を意味する術式が樽型の天辺を含むブロック内に刻まれている。そしてその文字自体、彼が馴染んだ言葉である。だが..
「でも、純粋な降霊召喚術とは少し違うな。
文字数が多い」
実は後日判明したことであるが、この召喚門に刻まれている召喚の術式は降霊転移と呼ばれる術式であり、転移術式を埋め込むことで生身の人間でも霊界に足を踏み入れることが出来る特殊な召喚門なのである。
さて、この時の最神玲ことカーンには、この事実はまだ分かっていない。ただし、普通の降霊召喚門ではないことだけは確かなので、その門に近づいて触れてみることにした。すると、門に触れた手は門を突き抜けてしまい、しかもその手の先はこの世界からは見えない。
「おー、向こう側に行けそうだ!」
そうなると、結論は一つ。恐らく、かすみはこの門を通り抜けた可能性が高いということ。もしそうであれば、中で迷子にでもなっている可能性が高く、場合によっては彼女を見つけることが出来なくなる危険性が高くなる。いや、それ以上に、彼女の命の危険性が増すことになるかも。
「何といっても、霊界、
イコール死者の国だからな」
死者が生者をそのままにしておくことは全く考えられない。と言うことで、意を決して最神玲は召喚門に手をかけてみることに。
「あっ、やっぱり通り抜けられる。よし、行こう」
自分に気合を入れて、いざ霊界へ。




