地球転生編 2-2 最神玲、幽霊に遭遇する
最神玲、幽霊に遭遇する
「ねー、玲、皆の事って覚えてる?」
「ごめん、まだ思い出せないんだ」
「じゃあ、とりあえず紹介しておくね」
と言うことで、車での移動中、かすみから各自を紹介してもらうことに。車内には玲とかすみを含めて5名が乗車。運転手は2年生の竹内斗真、助手席には同じく2年生の伊藤加奈、後列の真ん中に玲、その右隣はかすみで左隣は3年の玉石大吾というメンバー。後、もう一台少し大きめのワンボックスとかいう車で移動している7人組があり、彼らは先に合宿所となるキャンプ施設に移動する模様。ちなみに、このサークルの4年生は玲とかすみの他に部長で別動隊を率いている稲垣悟の3名のみで、全体でも12名のサークルメンバーとなる。そして、今回彼らが向かう目的地は、ある県のとあるキャンプ場のコテージ。そのキャプ上を中心に、トンネルや廃墟や神社といった心霊スポットを巡る企画である。
「ところで、みんなは幽霊とか見て楽しいの?」
「はぁ? 一番ビビりで一番幽霊を信じて
疑わない自分が、それ言うん?」
「自分って、あっ僕のことですか。
えっ何か変なこと言った、かすみ?」
「変も何も、どの口が言うてんねん、
となりますけどね」
至極当然の質問に対し挑戦的な口調で応じるかすみ。どうもかすみは、興奮したりすると素が出るというか、彼女の故郷の言葉がそのまま出てくるようで、時に困惑する玲ではある。尤も、かすみの指摘も当然と言えば当然であり、事故前の玲であれば、こんな疑問は絶対に口にしないことに全財産を掛けてもいいと言えるくらいに確信を持つ。何といっても、このサークルで一番ノリノリなのがかく言う最神玲(事故前)であり、それにうまく乗せられつつ楽しんでいるのが物部かすみなのであった。そんなノリノリ男から否定的な言葉が出たとなると、かすみは後輩の手前、黙っていられなくなったのである。ところで、何故にこのような冷たい空気の車内になったのかと言うと、玲がそもそもどうして心霊スポット巡りなんかをするのか気になったので、車内で質問したのが事の始まり。勿論、玲以外の者は皆一様に、幽霊の出そうなところを見て回って(?)、動画で何か撮れたら、それを動画投稿サイトに公開してチャンネル登録者数と視聴回数を稼ぐ、ということをサークルの目的として行っているからだと答えたであろう。ところが玲ことカーンにとって、幽霊の類は別に何とも思うところがなく、むしろ降霊召喚の対象となるため比較的身近な存在だったりする。つまり、相手のことはよく知らないが、取りあえず会えばあいさつ程度はする近所のおばさんと言う感じか(おばさんが霊ということではない)。従って、カーンからすると、態々心霊スポットで霊体を目撃することのどこが楽しいのだろうという、素朴な疑問から発した言葉ではあったのだが。
「ほんと、玲、あんた変わったよね。
まさか性格までこうも
劇的変化を遂げるとはね」
いやー、僕もそうと言えばそうかも、などと心中で思う玲=カーンではある。
「そう言えば、玲、
あんた意識不明になったでしょ?
その時に霊界に行ったりとかしてない?」
突然何だ、と少し身構える玲。
「霊界? うーん、いやわかんない。覚えてないな」
「えー、そうなん、うーん、残念」
かすみの残念になぜか引っかかる玲。聞くと、どうやら地球に住む人達の中でも稀に霊体を見ることが出来る能力が備わるそうで、その原因の一つが臨死体験と呼ばれるものを体験すること。要するに一度死ぬという体験を経て復活すると、幽霊などを見る能力が備わるようで、そんな能力があると少し羨ましいな、などと不遜なことを口にするかすみである。何だろう、かすみって怖いもの知らずなのか。一方で流石のカーンも、そんなことで霊能力が身につくのか、と思ったりもするのだが、サモナルドとは環境が大きく異なる惑星であり「神」のような超自然的な存在を気にする人々なので、そんなこともあるのかな、などと半信半疑な様子。で、かすみの「残念」は、要するに玲が霊能力に目覚めたのであれば、効率よく幽霊を目撃して動画のストックを増やしたり、万が一自分達が幽霊に取りつかれても玲に除霊してもらえるんとちゃう、と言うかなりの打算が働いたことに対する言葉である。
さて、玲とかすみのやり取りがひと段落し、その後はかすみと加奈の女子トークが炸裂。と言っても、男子への直撃は避けるように、その辺は上手くやりながら。そんな道中も、いよいよ目的地に近づいてきて、全員(玲を除く)のテンションは上昇中。早速、今夜は当然肝試しで、明日はここと、ここと、ここにするとか、先輩やはりそちらが先でしょう、などと今後の予定をいきなりここで決めようとする玲以外のメンバー。そして玲はと言うと、彼らの話を耳にしつつ、一人窓の外を眺めております。少し前に立ち寄ったパーキングエリアで休息した後、次は誰がどこに座るかをジャンケンで決めた結果、玲は後部座席の左側に決まった。ちなみに、隣は伊藤加奈。で、そんな状況で玲は一人窓の外を眺めていた時、キャンプ場まで後2キロの看板を少し過ぎたところのガードレールの傍に一人の少女を発見。うん?と疑問に思う間もなく彼女の横を車は通り過ぎて行く。見間違いか、単にキャンプ場に来ている子供がここで遊んでいるのか、そんな感じで、直ぐに興味をなくして前方を眺める。[目的地に到着です]、というカーナビの案内と共に、みんながやっと着いたーと合唱して、そのままゴールイン(ちなみに、カーンはこのカーナビがひどくお気に入りのご様子)。その後各自荷物を降ろして、先発隊のコテージへ運び込むことに。先発隊をまとめていた部長の稲垣悟が早速コテージから出て来て、玲を見るなり、早速の挨拶と長旅への労い。流石部長はこういう所に気が回るんだね、と後発組の面々がそう思った。さて、とりあえず玲のために先発組の面々を紹介して、その後は今夜のお楽しみのバーベキューに向けた準備をすることに。まずはバーベキューを始めるにあたり、各自の役割分担をするとして、男組は炭の火起こしとその後の焚火用の薪の採集、女性組は食材の準備と別れて作業を進める。気の早い男は、クーラーボックスから冷えたビールを取り出して早速一杯やりだす始末。そんな輩を見て、女子組は一斉にブーイング。何とも学生らしいバーベキュー準備となっておりましたが、玲はと言うと、何をするかよくわかってないものの、見よう見真似でそれらしく振舞っているようで。と、その時、少し離れた樹林に先程見かけた少女の姿を発見。服装は、上はグレーのパーカーで下はパープルのスウェットパンツ。一見するとキャプ上に来ている子供の感じに見えるが、左腕の袖の下半分が破れて無くなっているのが気になる。日差しが届かなくなって少し肌寒くなってきたから、破れていても取りあえず上に羽織るものが欲しくて着ているのかな、などと適当に自分を納得させてそのまま作業を続ける。
そして、すっかり日が暮れたところで全ての準備が整い、ランタンの明かりの下、部長の乾杯の音頭で宴の幕が上がる。各自肉を焼いたりひたすら飲んだりとリラックスした様子。勿論、玲も例外なく、みんなと飲んで騒いで、この世界に転生して初めて心の底から笑って楽しんだひと時を過ごしたのである。
一通り肉と野菜が消費されて、後は締めの焼きそばという時に、玲は何げなく樹林に目を向けた。そして、そこには先程の少女がまだそに立っているのに気付いた。
「あれ、あの子さっきから
あそこにいるけど、大丈夫かな?」
何気なくそんなことを呟いたが、隣にいたかすみが透かさず玲に問いかける。
「ん、誰?誰かそこにいるの?」
「ほら、あそこの木の傍に女の子がいるけど」
「うん? 私には何も見えないけど」
ちょっと見てくる、と言って玲は手にした紙皿をテーブルに置いて、女の子がいる木の傍に向かうのであった。その様子をかすみ以下、他のメンバーも見守っていると、件の木のところに着いた玲が徐にしゃがみ込んで何やら話し込む仕草をし出す。流石にその様子を見守っていた連中は、何だ何だと騒ぎだし、挙句の果てに「おいビデオ回せ」と騒ぎ出す始末。ただ、そんな喧噪を他所に、玲は少女の傍にしゃがみ込んで彼女に事情を聞いている。
「お嬢ちゃん、おうちの人はどこなの?
もし迷ったのなら、
お兄ちゃんが送っていくよ」
そう言って玲は少女に手を差し出す。少女はその手を掴もうとするが、
「!」
その手に温もりを感じることはなかった。つまり、この少女はこの世の者ではない。
「そうか、何か事情があるんだね?
お兄ちゃんに話してくれるかな?」
「私の体を探して。お願い」
そう言って少女は姿を消した。そうか、これはこの世の存在ではないんだな、と納得する玲。そこで、玲は白猫の[にくたま]を召喚することに。
「にくたま、今の子分かった?」
「はい」
「じゃあ、あの子の体がどこにあるか
探してもらえる?」
「分かりました。では早速」
と言って、猫のにくたまもそのまま消えていった。二人とも去っていったのを見届けて、玲はこちらを注視する仲間達の輪に戻ることに。
「ねぇ、玲、見えてたの?」
と早速、かすみからの問いかけが。
「うん、多分見えていたんだろうね。
よく、分からないけど」
と曖昧な返事をするしかない玲。その後、サークルメンバーから、動画どうだとか、何か撮れてますけどはっきりとは、などとのやり取りがあったが、そんな会話は玲本人にはどうでもよいことであった。それよりも、あの少女がどうして霊として現れたのか、そのことだけが気になるのである。
前日の思いがけない幽霊騒動でテンションアゲアゲの心霊サークルではあったが、次の日を迎える時には寝不足でメンバーの半分は死んでいる状態。それでも、今日こそは何か決定的な映像が撮れそうとの変な期待と共に、再びテンションを挙げる面々。これぞ、若さの特権か。ところで、結局前日に玲が遭遇した少女の霊は、残念ながらビデオには明確な姿として納められておらず。ただし、所謂「オーブ」と呼ばれる発光球体が玲の傍に現れていたことは確認できたが、これを動画サイトにアップするには流石にインパクトが薄くて躊躇われる、と言うことで一旦保留となった。
「すいません、部長。
僕は昨日の少女の捜索をしたいので、
今日の心霊スポット巡りは
遠慮しますが宜しいですか?」
と、朝のミーティングで早速別行動を言い出す玲。残念ながら誰もその少女を目撃していないため、てっきりビビりの玲が行きたくないから駄々こねたと思わないでもないが、何分彼の体験を考えると、あながち出鱈目や嘘とは言い切れず。結局彼の別行動を許可するに至るが、そうすると黙っていられないのが相棒のかすみ。
「じゃあ、私も玲のサポートに回ります」
と、サポートと称して一緒に行動することを提案。流石に4年生が2人も抜けることに、部長の稲垣は難色を示すが、玲の母親から息子を宜しくと言われていると主張するかすみの言葉に反論することは出来ず、結局彼らを別行動とすることに同意。結果、玲とかすみを除く5人ずつの2グループに分かれて心霊スポット巡りをすることになったのである。
そんなことがあって、今別行動中の玲とかすみ。そこへ、どこからともなく一匹の白猫が彼らに近づいてきた。
「うわー、かわいい。こっちにおいで」
と嬉しそうに猫と戯れようとするかすみ。一方の玲は、その猫=にくたまであることは分かっているので、早速報告を受けることに。
「ご主人様。遺体の場所が分かりました。
私の後に付いてきてください」
とにゃーにゃーと喋りながら、彼らを誘うように森の中を進んでいく。玲は当然事情を知っているので、彼の後をついて行くが、かすみは一瞬きょとんとした表情に。
「玲、どこに行くの?」
返事をする代わりに、手招きする玲。かすみも何となく察したのか、それから何も言わず玲の後をついて行くことに。そして、歩くこと30分。キャンプ場の近くを流れる渓流の畔をかなり下流まで歩き続け、いよいよ目的の場所に到着。先を進んでいたにくたまは、ここだニャー、みたく一声かけて、そのまま森の中に姿を消す。玲はにくたまが声をかけた辺りを調べると、渓流沿いにある大きな岩と岩の隙間にグレーのパーカーの切れ端が水に揺られて見え隠れしているのを発見。そこで注意深くその隙間を除くと、白骨化した遺体と衣服の一部を見て取ることが出来た。
「えっ、えーー、そ、そ、それって、
ほ、ほ、ほ、骨?」
骨を見て動揺するかすみ。まぁ、見慣れてないとそうなるよねと、玲は同情する。多分大きさからして、件の少女の遺体であろうと思われるので、かすみに警察へ電話するように指示することに。
「あ、あ、あたしが、
で、で、電話するの?」
まだ動揺中のかすみ。ちょっと不安なので、玲から110番通報をすることに。通報してから30分程経って、パトカーのサイレンが近づくのを感じた玲。そのまま近くの道路まで登って、パトカーに手を振って事情を説明し、警察官を岩場まで同行させる。これで、ミッション完了かな。丁度岩場の近くの森で佇む少女を見つけた玲は、何気ない風を装いながら森の方に向かって行き、少女に「これでよかったかな?」と問いかける。少女は黙って、ただ頷くだけ。そして、満足した表情でそのままスーッと消えていった。これで無事に霊界に行けたかな。
警察から型通りの事情聴取を受けて、そのままキャンプ場に帰還。一応気になったので、後日警察に問い合わせたところ、過去に行方不明となって捜索していた少女らしく、死因は事故死であることは教えてくれた。これであの少女も成仏(?)したらいいなと玲は思うのであった(カーン自身、未だ成仏の意味は分からずだが)。




