面白い人
……面白い人がいる。
おかしな動きをするので、目が離せない。
おかしな言葉を使うので、ついつい耳を傾ける。
おかしな事を言うので、ついつい笑ってしまう。
一緒にいると、愉快ではある。
堅苦しい場の雰囲気が一変して、助かることもある。
けれど、ずっと一緒にいたいとは思えない。
なぜならば、ずっと一緒にはいたくない自分がいるからだ。
おかしな動きは、平凡ではない。
おかしな言葉は、普通ではない。
おかしな事ばかり言われたら、身が持たない。
ずっと一緒にいるであろう、ご家族の表情が芳しくないのは、きっと。
ずっと一緒に仕事をしてきた、役員たちの表情がぎこちないのは、きっと。
……面白い人がいることは、恵まれていることなのだとは、思う。
面白い人がいるから、面白くないことが普通なのだと認識できる。
面白い人がいるから、面白くないことに不満を持つ愚行に気付ける。
平凡で、ありふれていないから…滑稽に思えるのだ。
笑わせているのか、笑われているのか。
笑っているのか、笑うしかないのか。
面白い人が、本当に面白いのかは…甚だ疑問だ。
……面白いと言われている人がいる。
おかしな動きをしているのが、見える。
おかしな言葉を使っているのが、聞こえる。
おかしな事を言っているから、笑われている。
一緒にいる人達は、今、何を思っているのだろう?
笑っている人が多いから、気にしなくてもいいのかもしれない。
だがしかし、苦虫を噛み潰したような表情の人もいるのが、気になる。
おかしな動きを見て、呆れているようだ。
おかしな言葉を聞いて、恥ずかしそうだ。
おかしな事ばかり言っているのを見て、怒っているのかもしれない。
……面白い人は、苦手だ。
面白い人と思われることが無いよう、気を引き締めたいものだ……。
「あ♡織田さーん!!ごめーん、気が付かなかった!!オハヨーサンデーもーにんぎゅ―!!ねえねえ、今日の司会進行なんだけどちょっとプリーズ!!」
「おはようございます。今日の進行、お願いしますね。何か問題でもありましたか?来場者に渡すお茶の準備はできていますよ。」
私は極力、無表情のまま…、自分の仕事をこなすのだった。