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渡嘉敷の朝
渡嘉敷の朝
目覚めて
カーテンを開ける
日が登っていないのか、薄暗い
いつもより時間的には遅めの目覚めだが
渡嘉敷はまだ眠っている
数日後に台風がやってくるそうだ
それを裏付けるように
空を抱く雲
低きまで降りてきたトンボ
海の波
海に入り立っているだけで
体が上下バネのように
波に揺り動かされる
雲は荘厳で美しい模様を紡ぎ出している
山の頂上近くで見る空は
怖いくらいに広く近い
遠くをみると低くまだ雲が立ち込め
海と空の境界線が消えていた
なんとでかい太陽だろうかと
口にしてしまうほど薄ぼんやりとした霧は
太陽を神々しい巨大な宝石へと魅せる
小島が黒っぽく
太陽で照らされた海の白銀色の中で
アクセントを効かせ
ここが現実だと引き戻す役割を果たす




